軍と体罰と虚構の伝統の可能性

日本の軍隊の伝統とされる体罰、しかし本来軍は取り締まっていた・・・・?
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きりさん @kirishimaz

支那事変発生以前の陸軍の体罰というのは、これは研究のしがいがありそうな分野だな。「軍隊に体罰はつきもの」というイメージは確かにあり、少なくとも海軍はその通りであったと思われる。英国海軍に学び多くの伝統を受け継いでいる為である。但し体罰に関しては一部誤って受け継いでいる節がある。

2013-02-16 08:28:34
きりさん @kirishimaz

海軍で体罰が日常茶飯事なのは、遡れば、元々フネでは漕ぎ手とかは奴隷であり、後で言う士官将校にあたる連中は悪くて平民良ければ貴族だったからである。時代が降っても、士官以上と下士官以下には全く完全な身分格差が誕生する背景がここにある。しかもフネは閉鎖社会だから余計ヤバい。

2013-02-16 08:32:07
きりさん @kirishimaz

ただ英国海軍は、下士官から士官にのぼる者も多かった筈なので、日本海軍はどうも英国海軍からその辺誤って伝統を受け継いだ可能性がある、という話である。これは海軍伝習所とかそういう時代から連合艦隊誕生あたりまでを探ってみないと判らん。

2013-02-16 08:33:11
きりさん @kirishimaz

って海軍は今はどうでもいいんだ。取り敢えず陸軍刑法や陸軍懲罰令(陸軍刑法で不起訴になった人間や陸軍刑法に当てはまらないが非行など罰した方がよさそうな者にはどういう罰を下すかという法)には「罰」として体罰は設定されていない。

2013-02-16 08:35:17
きりさん @kirishimaz

刑法はまぁ罰が懲役or禁固or銃殺だから当たり前だが、懲罰には営倉系や譴責ばかりで、体罰が存在しない。又、懲罰も陸軍刑法による罰の執行と同様、憲兵(陸軍警察)等の捜査の上、本人に「●●の罪で●●処分とする」と通告した上で行い、処分した事は直属の上司に言う様義務づけられている。

2013-02-16 08:37:20
きりさん @kirishimaz

となると、体罰は「私的制裁」という事になる。これは立派な「傷害」になってしまう。陸軍刑法の傷害罪は大別して3つあり 1:上官もしくは哨戒にあたる兵に行うもの 2:多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫 3:職権ヲ濫用シテ陵虐ノ行為 の3つである。体罰は2か3にあたるのだろうか。

2013-02-16 08:41:14
きりさん @kirishimaz

軍法会議議事録をあさってみるしかなさそうだな。又、軍隊内務書(簡単に言えば、陸軍の一般生活を規定するルール)も今国立図書館で見つけたのでみているところである。どちらにせよ、「私的制裁の禁止」に対する通知が陸軍上層部から出ているところから見て、上層部は体罰撲滅を考えていたのは確実。

2013-02-16 08:44:47
きりさん @kirishimaz

つまり「俺が偉いんだ、エェ、文句あっかこの野郎」では駄目だと、明確に書いてある訳だ。少なくとも上層部の人間はそうしなければならないと考えており、上級将校であればあるほどそれを実践する為の努力をしたと推定しなければならないだろう。

2013-02-16 08:56:28
きりさん @kirishimaz

ほうほう、軍隊内務書、これはなかなか面白いぞ。意訳すると「上の者の命令に下の者が服従するのはこれは絶対であるが、これはただ階級が上だからってんではならない。服従は下級者の忠誠心と徳義心、上官の正当な命令に周到な監督、及び人徳によってこそ達成されなければならない」とある。

2013-02-16 08:54:32
きりさん @kirishimaz

実践する為の努力、と言うよりは、実践させる為の努力、か。下級将校や下士官は小学校出ただけの連中も多いからな。「正当な命令に周到な監督、及び人徳」を、そいつらにやらせなければならん。

2013-02-16 08:57:54
きりさん @kirishimaz

となると、この記事の http://t.co/M7FOAjWL 体罰は満州事変や支那事変の後に急激に増加したのであって、それ以前は案外少なかった、という理論は俄然真実味を帯びてくる。

2013-02-16 08:59:02
きりさん @kirishimaz

あー、「下士官は兵と起居を共にし、一番兵と接する期間が長いのだから、忍耐は強くし素行を慎み、部下に接する時は懇切丁寧かつ公平をむねとし、もって信頼を勝ち取らなければならない」とか書いてあるわ。

2013-02-16 09:05:55
きりさん @kirishimaz

兵についても、「新参者を慈しみ、古参者を敬え」とある。これは確かに、戦争のせいで急激に軍隊の人数が膨れ上がるまでは、意外とまともな組織だったという可能性は出てくるな。問題は、兵営生活の思い出みたいな文書が出てくる奴出てくる奴皆戦争中のものばかりという事だ。それ以前のデータがない。

2013-02-16 09:10:14
きりさん @kirishimaz

偕行社が昭和13年10月に出した、自殺者の報告についても興味深いものがある。軍で出た自殺者の数とか原因を色々な方向からまとめてるのだが、階級が高い連中の自殺率が妙に高い、と言うか兵隊と大して変わらんのである。

2013-02-16 09:22:09
きりさん @kirishimaz

…と言うか、もうむしろ、下手すると士官、下士官の方が自殺率が高い。流石に士官は絶対数が少ない為自殺件数も少なく、自殺率に直すと変動がヤバいのだが…兵隊準拠にすると、士官は大体年に55人前後、下士官は60〜90人で推移している。一方兵は、大体60人前後で推移している。

2013-02-16 09:29:41
きりさん @kirishimaz

尚、海軍の士官の自殺者数は例年ほぼ0の模様

2013-02-16 09:30:12
きりさん @kirishimaz

どうやら、「演歌は日本人の心」と同様、体罰も「作られた伝統」である可能性が出てきたようだ。

2013-02-16 09:32:28
きりさん @kirishimaz

以前中途半端にツイートした(そしてトゥギャられてYABEEEEEEってなった)戦前の軍隊における私的制裁(上官によるゲンコツ、ビンタ、精神注入棒等)のお話。長くなるので注意。

2013-03-13 09:55:10
きりさん @kirishimaz

まず、帝国海軍は私的制裁がヤバかったのは有名である。どれぐらいヤバかったかと言うと、第二次大戦ぐらいの頃のおフネの爆沈率が異様に高い。『沈没』でなく『爆沈』。例えば長門型戦艦陸奥は戦闘中でもない停泊中(繋留替えの為泊地を移動中)にいきなり爆発して沈んでいる。

2013-03-13 09:55:19
きりさん @kirishimaz

陸奥は主力艦だから、当然海軍当局も調査委員会を設置して徹底的に原因究明した。機雷に接触して爆発した、とかだったら大問題だ。何せ場所は広島沖の柱島だからな。そんな場所に機雷敷設されてたら、本土にまで敵潜水艦が潜り込んで機雷を置いてった事になる。

2013-03-13 09:55:31
きりさん @kirishimaz

が、どうも機雷じゃないっぽい。火薬の自然発火でもないっぽい。じゃあ何でかって、どうも乗組員が放火したくさい、というところに落ち着いた。で、上官の虐待に耐えかねた水兵が「道連れにしてやる」と火薬庫に火をつけ、ドッカーンといったのではないかという噂が出た。

2013-03-13 09:55:38
きりさん @kirishimaz

そういう噂が出る事自体おかしいのだが、事実として、帝国海軍は何度も、上官への報復もしくは道連れ目的の火災・爆沈事件を起こしている。そして、そういう噂が説得力を持ってしまう風潮が、当時はあったのだな。

2013-03-13 09:55:46
きりさん @kirishimaz

どれぐらい酷いかというのはまぁ調べれば判るが、精神注入棒(要するに木の棒)で毎日尻を叩かれるのは当たり前(それで尻が壊死した人もいる)。トイレ掃除当番が掃除を終え、『巡検終わるまで立入禁止』にしたのに副長が無視して小便し、結果罰として小便器を舐めさせられたなんて悲劇もある。

2013-03-13 09:55:56
きりさん @kirishimaz

ぶっちゃけ、殴られるだけで済むんだったらその日は楽です、なんて声すら出てくる始末。自殺すればしたで、戦死扱いされず売国奴として処理されるから自殺もなかなかできない。陸軍と違って銃を持つ訳じゃないから、最後の手段『後ろ弾』もない。そら爆沈事件起こるわって状態だ。

2013-03-13 09:56:08
きりさん @kirishimaz

しかしだな。佐久間艇長と言うと普通の人は知らん(下手すると海自の人でも知らん、各国海軍の軍人は知ってるけど)だろうが、まぁ有名人である。何で有名かというと、明治43年に潜水艇の試験航行中、事故により沈没してそのまま酸素がなくなり、艇長以下全員死んだという事件があったからである。

2013-03-13 09:56:19