【SecretGuardianMAHI】第2話第2節 とある病院の集中治療室。ベッドには全身包帯だらけの麻衣が横になっている。目を閉じていて、意識は無い。信号無視したトラックから子供を守り、かわりにひかれた……。幸いと言っていいのだろうか、脳にダメージは無いとのことだ。
2013-02-16 21:11:04だが意識が戻るかどうかは、麻衣次第とのことだ。最悪の場合は、意識が戻らないまま命を失う可能性もあるという。それを聞いた麻衣の母親は、そのまま倒れてしまい、今は病室のベッドの上だ。
2013-02-16 21:11:53意識の無い麻衣が横になっているベッドのそばには、1人の男が立っている。黒いスーツを着た、ハードブラックのサングラスを掛けた男だ。180センチを少し越えている身長、スーツの上からでも体格が良いのが分かる。
2013-02-16 21:12:08その男……伊佐木陣に呼びかける声があった。初老の男の声、それは伊佐木の右手から聞こえた。右手にある、仮面からだ。伊佐木は仮面から聞こえてきた声に「ああ」と返す。
2013-02-16 21:13:31「確かに、俺たちには人間が持つ肉体の再生力を高める力がある。こいつは、あいつの娘だ。90%以上の確率で俺と適合できる保証もある。しかし、だ。分かっているのか? 俺の力を使うってことは、こいつを……京介の娘を巻き込むことになるんだぞ?」
2013-02-16 21:14:35仮面……ソルの言葉に、陣は「分かっている」と返す。そして、サングラスを外した。陣の左目は瞼(まぶた)が硬く閉ざされている。上下に走っている大きな傷痕が、瞼を閉ざしているのだ。右目だけで、陣は意識の無い麻衣を見つめる。
2013-02-16 21:15:05伊佐木はソルを麻衣の胸の上に置いた。その瞬間、ソルがまばゆい光を発した。伊佐木はサングラスを掛けると麻衣に背を向け、集中治療室を後にする。「久保寺、娘を……麻衣を守れよ」そう言い残し、集中治療室のドアを閉じた。
2013-02-16 21:17:54父親の葬儀で間違い無く顔を見たことがある男。自分の両親というどういう関係なのか、麻衣には分からない。おそらくだが、父親の友人か何かなのでは? とは思っているが。母親とも親しいのかもしれない。父母の共通の友人……麻衣はそう思った。
2013-02-16 21:19:23しかし、今はそんなことはどうでもいいことであった。何となく歩いている麻衣だが、自分がどこに向かって歩いているのか分からない。と、麻衣の足が止まる。前に、誰かがいた。背中を向けている誰か。闇の中だというのに、その誰かの背中ははっきりと麻衣の目に見えた。
2013-02-16 21:20:19麻衣は足を止める。スーツを着た後ろ姿。さっき会ったサングラスの男ではない。スーツの色が違う。ただ背の高さと体格の良さはサングラスの男と似ていた。着ているスーツの色はスカイブルー。 http://t.co/zNoNBP6S
2013-02-16 21:21:55それは、麻衣の父親が好きな色であった。空と海が大好きだった父親。休みの日は、よく海に連れて行ってくれた。空と海が好きだからと、父親は水色を好んでいた。「まさか……」と麻衣は、その水色のスーツの誰かに向かって走った。
2013-02-16 21:22:48走りながら、「お父さん!」と叫ぶ。その誰かは、肩越しに麻衣に顔を向けた。麻衣の顔に笑みが浮かぶ。それは他界した父親であった。「お父さん!」また叫んで腕を伸ばした時、世界が明るくなった。
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