【SecretGuardianMAHI】第2話第2節

Twitter小説【SecretGuardianMAHI】第2話の続きです。
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高橋ショウ @zrx78

【SecretGuardianMAHI】第2話第2節 とある病院の集中治療室。ベッドには全身包帯だらけの麻衣が横になっている。目を閉じていて、意識は無い。信号無視したトラックから子供を守り、かわりにひかれた……。幸いと言っていいのだろうか、脳にダメージは無いとのことだ。

2013-02-16 21:11:04
高橋ショウ @zrx78

 脳死にはなっていない。

2013-02-16 21:11:16
高橋ショウ @zrx78

 だが意識が戻るかどうかは、麻衣次第とのことだ。最悪の場合は、意識が戻らないまま命を失う可能性もあるという。それを聞いた麻衣の母親は、そのまま倒れてしまい、今は病室のベッドの上だ。

2013-02-16 21:11:53
高橋ショウ @zrx78

 意識の無い麻衣が横になっているベッドのそばには、1人の男が立っている。黒いスーツを着た、ハードブラックのサングラスを掛けた男だ。180センチを少し越えている身長、スーツの上からでも体格が良いのが分かる。

2013-02-16 21:12:08
高橋ショウ @zrx78

「正義感の強さは、父親ゆずりのようだな」

2013-02-16 21:12:31
高橋ショウ @zrx78

「おい、いいのか伊佐木(いさき)?」

2013-02-16 21:12:56
高橋ショウ @zrx78

 その男……伊佐木陣に呼びかける声があった。初老の男の声、それは伊佐木の右手から聞こえた。右手にある、仮面からだ。伊佐木は仮面から聞こえてきた声に「ああ」と返す。

2013-02-16 21:13:31
高橋ショウ @zrx78

「この子を……久保寺の娘を助ける方法は1つだけだ。お前の力を使う、ソル」

2013-02-16 21:13:58
高橋ショウ @zrx78

「確かに、俺たちには人間が持つ肉体の再生力を高める力がある。こいつは、あいつの娘だ。90%以上の確率で俺と適合できる保証もある。しかし、だ。分かっているのか? 俺の力を使うってことは、こいつを……京介の娘を巻き込むことになるんだぞ?」

2013-02-16 21:14:35
高橋ショウ @zrx78

 仮面……ソルの言葉に、陣は「分かっている」と返す。そして、サングラスを外した。陣の左目は瞼(まぶた)が硬く閉ざされている。上下に走っている大きな傷痕が、瞼を閉ざしているのだ。右目だけで、陣は意識の無い麻衣を見つめる。

2013-02-16 21:15:05
高橋ショウ @zrx78

「この子が死んだら、彼女は1人きりになってしまう。久保寺が死んで、彼女には麻衣だけしかいないんだ。俺は麻衣を助けたい」

2013-02-16 21:15:34
高橋ショウ @zrx78

「まあ、俺としても、その気持ちは分かる。昔の相棒の忘れ形見だ。助けたい。そして、俺には助ける力がある」

2013-02-16 21:16:03
高橋ショウ @zrx78

 伊佐木はソルを持つ右手をあげる。そして、「なら、助けるまでだ」とソルを麻衣の胸へと持っていく。

2013-02-16 21:16:32
高橋ショウ @zrx78

「ソル、麻衣をお前のマスターにしろ。シークレットガーディアンにしろ」

2013-02-16 21:16:57
高橋ショウ @zrx78

「分かったよ、伊佐木。この娘……久保寺麻衣を、俺の主と認めよう」

2013-02-16 21:17:18
高橋ショウ @zrx78

 伊佐木はソルを麻衣の胸の上に置いた。その瞬間、ソルがまばゆい光を発した。伊佐木はサングラスを掛けると麻衣に背を向け、集中治療室を後にする。「久保寺、娘を……麻衣を守れよ」そう言い残し、集中治療室のドアを閉じた。

2013-02-16 21:17:54
高橋ショウ @zrx78

 生死の境という名の闇の中……麻衣はそこをアテも無く歩いていた。

2013-02-16 21:18:20
高橋ショウ @zrx78

「あの人、私を助けるようなこと言っていたけど……」

2013-02-16 21:18:41
高橋ショウ @zrx78

 父親の葬儀で間違い無く顔を見たことがある男。自分の両親というどういう関係なのか、麻衣には分からない。おそらくだが、父親の友人か何かなのでは? とは思っているが。母親とも親しいのかもしれない。父母の共通の友人……麻衣はそう思った。

2013-02-16 21:19:23
高橋ショウ @zrx78

 しかし、今はそんなことはどうでもいいことであった。何となく歩いている麻衣だが、自分がどこに向かって歩いているのか分からない。と、麻衣の足が止まる。前に、誰かがいた。背中を向けている誰か。闇の中だというのに、その誰かの背中ははっきりと麻衣の目に見えた。

2013-02-16 21:20:19
高橋ショウ @zrx78

 麻衣は足を止める。スーツを着た後ろ姿。さっき会ったサングラスの男ではない。スーツの色が違う。ただ背の高さと体格の良さはサングラスの男と似ていた。着ているスーツの色はスカイブルー。 http://t.co/zNoNBP6S

2013-02-16 21:21:55
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高橋ショウ @zrx78

 それは、麻衣の父親が好きな色であった。空と海が大好きだった父親。休みの日は、よく海に連れて行ってくれた。空と海が好きだからと、父親は水色を好んでいた。「まさか……」と麻衣は、その水色のスーツの誰かに向かって走った。

2013-02-16 21:22:48
高橋ショウ @zrx78

 走りながら、「お父さん!」と叫ぶ。その誰かは、肩越しに麻衣に顔を向けた。麻衣の顔に笑みが浮かぶ。それは他界した父親であった。「お父さん!」また叫んで腕を伸ばした時、世界が明るくなった。

2013-02-16 21:23:54
高橋ショウ @zrx78

 その瞬間、「お父さんはいつも、お前のそばにいるぞ」という父親の声が聞こえた気がした。 第2話第3節に続く。

2013-02-16 21:24:20