『日本人を考える 司馬遼太郎対談集』 二

再読しながら、印象に残った部分を引用中。 十二名との対談→四名を区切りとします。(三で完結予定) 高坂正堯(こうさか まさたか) 辻悟(つじ さとる) 陳舜臣(ちん しゅんしん) 続きを読む
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白汀 @hakutei0528

高坂 一般に日本では、国際的な情勢に対する無知があるだけじゃなくて、国際情勢の認識をむしろ拒否するような傾向がある。 司馬 無知こそ行動のエネルギーであるという精神は、わりあい幕末からありますね。 高坂 とくに国際情勢の無知ね。 司馬 ええ。たとえば幕末の攘夷論 #日本人を考える

2013-01-26 11:01:37
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 高坂 自分にはできないことを誰かが劇的なやり方でやってくれると喝采を送るわけで、心理的代償効果ですね。たしかに日本人というのは、この国がイヤになったから外国へいってやるというふうにはいかん民族ですね。→

2013-01-27 09:48:03
白汀 @hakutei0528

→たとえば戦後ずいぶん向うへ留学生がいったけれども、ほとんどが帰ってきてますよ、まるで伝書鳩みたいにね。(笑)それが頭脳流出を起こさなかった原因だし、結局は日本をここまで発展させた。どうあっても日本にいなきゃいかんという気が日本の発展につながっているわけですね。 #日本人を考える

2013-01-27 09:49:00
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 長州の馬関戦争なんかも薩英戦争の真似、薩摩に先を越されたということでやったということが大きな動機ですからね。ところが終わった瞬間からたくましくも開国論にいっちゃってる。同時代の中国や朝鮮はああはゆかなかった。→

2013-01-28 10:01:54
白汀 @hakutei0528

→高坂 日本の政治家は、日本人の伝書鳩的、島国的性格が生み出す妙な雰囲気につきあいながら外交をやらなきゃいかんわけで、それが日本の外交のハンディキャップになっていますね。 #日本人を考える

2013-01-28 10:02:15
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 あのころの日本にはいわゆる洋夷にとって阿片戦争をしかけるほどの魅力がなかったから、あの程度ですんだわけで。 高坂 ええ、日本が戦略的要点になかったから、あの程度の殴られ方ですんだわけですね。しかし世界の状況が変り、→

2013-01-29 09:05:33
白汀 @hakutei0528

→しかもいまのように日本が戦略的要点になった以上、同じような国際オンチではもう通用しないし、また大衆民主主義の時代にはその国際オンチを党利党略に利用したところで、そのあと急カーブを切れるかというと、もう切れませんね。 #日本人を考える

2013-01-29 09:05:51
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 以前から私はノモンハン事件のことに興味があるんですけれども、あれは日本軍の死傷率七五パーセント、ものすごい敗北です。ソ連軍の装備や作戦的な習性をほとんど調べないで、勢いだけでやった結果がこれですわ。陸軍部内にはモスクワ駐在武官とか、多少ソ連のことを→

2013-01-30 09:14:56
白汀 @hakutei0528

→知っていた者もいたけれども、そういうのがソ連軍は日露戦争のロシア軍ではないということを説くと、元気のいい連中からみんな恐ソ病とののしられて葬り去られちゃうんですね。相手を恐ソ病とののしることは魔術的なほどに口封じのキキメがあった。 #日本人を考える

2013-01-30 09:15:23
白汀 @hakutei0528

高坂 国際感覚というのは彼我を比較検討することでしょう。人間関係でも、相手の身になって考えてみて初めてうまくいくものですね。ところが日本人は国内的にはそれをやっていますが、国外的のことになると、とたんに融通がきかなくなる。不思議なところですね。 #日本人を考える

2013-01-31 09:38:04
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 高坂 近代化を怠ったのが悪いといえば、そのとおりなんです。しかし世の中必ずしも理屈どおりにはいかない。友人から金を貸してくれといわれたときに、お前いつもムダ使いをしているじゃないかと一、二のムダ使いを理由に、だから貸せない、と四角ばった正論をいえば、→

2013-02-01 09:16:21
白汀 @hakutei0528

→その友人とはそれっきりでしょう。 司馬 わかる、わかる。その種の正論はみんな吐きたがるけれども。 高坂 そういう正論は官僚の議論であって政治家の議論じゃない。正論というのは直線の上をずっと走るようなもので、しかし人間というのは千鳥足にいくんですよ。 #日本人を考える

2013-02-01 09:16:44
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 高坂 よくいわれることですけれども、イギリス十九世紀の議会主義に学べ、あの話し合いで平和裡に解決を見いだすやり方に学べ、というようなことがいわれますね。しかしそれは片輪の認識で、本当に十九世紀のあの議会主義を理解するためには、→

2013-02-02 10:23:38
白汀 @hakutei0528

→それに先立つ時代の血で血を洗う政治的暗闘を知らなきゃいけない。シェークスピアの「リチャード三世」に代表されるような、もの凄い暗闘ですね。あの暗闘と混乱があったからこそ、妥協の必要を認める知恵が出てきたわけです。#日本人を考える

2013-02-02 10:23:49
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 高坂 つまりわれわれがものを書くとき、最後に出てくる結論を書くわけで、それまでにああでもないこうでもないと考えたことを書かないでしょう。教科書でも、最後の結論は書いてあっても、途中のあれこれは書いてない。→

2013-02-03 09:28:20
白汀 @hakutei0528

→だから教科書では途中の試行錯誤がわからず、そのため結論が本当にわからないまま、形だけを取り入れて内実を忘れることになるんですね。 司馬 そこが教科書の恐ろしいところですな。 #日本人を考える

2013-02-03 09:28:38
白汀 @hakutei0528

司馬 横井小楠なんていう人も、ずいぶん学問はあったけれども頭の柔らかい人で、あの人のいうことはクルクルよく変りますね。先生はずいぶん変説なさいますなと人からいわれた時に、いや変説することが大事なんだ、変説するところにこそオレがあるんだ、という様なことをいっている #日本人を考える

2013-02-04 10:43:05
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 福沢諭吉なんか、オレは猿にもわかるような文章を書くんだといったそうだけれども、そういうことがいえる人間というのは偉いですね。これは文章家の大理想ですよ。福沢のような文章を書いた政治家は、明治以後、一人もおらんでしょう。→

2013-02-05 09:22:51
白汀 @hakutei0528

→高坂 学者にもおらんでしょうね。日本人というのは、文章にギラギラした理論や知識がでていないとありがたがらない。つまり教科書をもとめているようなところがある。ここらへんが政治的な感覚の欠如につながっているわけです。官僚と書生っぽの政治にね。#日本人を考える

2013-02-05 09:24:29

高坂正堯(こうさか まさたか)
昭和九年生まれ。京大法学部卒業後ハーバード大学に留学。
現在京都大学法学部教授、専攻国際政治。
著書に『宰相吉田茂』などがある。

白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 辻悟 不満というか、でき上がったものに対する批判というか、これは若者に与えられた特権だともいえると思いますね。若者の立場からみれば、社会は若者たちが参加しないうちから存在しているものです。自分がつくったものでないにもかかわらず、→

2013-02-06 09:13:55
白汀 @hakutei0528

→でき上がった規則に従うことを要求するというこの一方性ゆえに、反発を感じることは当然でしょう。若者たちが批判をするからというだけで、彼らを受け入れることをしない社会は、動脈硬化した社会であることも間違いありません。 #日本人を考える

2013-02-06 09:14:11
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 司馬 逆説的にいえば社会というこの人間の秩序は、動脈硬化しなければ成立しえないというようなところがありましょう。例えばスターリン体制ができると、スターリンは自分の体制を守るために、懸命に秩序の動脈硬化をはかる。社会というのは本来そうしたもので、→

2013-02-07 08:20:44
白汀 @hakutei0528

→後続者を拒否するところがありますね。若い人を拒否して、お前たちは体制に従うほかないんだというところがある。だから単相論理でいくと、いつの時代であれ、社会は鋭く攻撃すべき存在であるということになりますね。 #日本人を考える

2013-02-07 08:21:03
白汀 @hakutei0528

#日本人を考える 辻 既存のものは、すでに経験ずみのもので、たとえ不都合なものがあっても、それ以上に悪くならないことがわかってます。それに対して未知のものは、現在より良いことがどれだけ予測されても、実現してしまうまでは実現するかどうかわからない。すでに手に入れたものまで失うかも→

2013-02-08 08:22:15
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