【twitter小説】 呪術 【短編】
ダンジョンに挑む騎士と画家。異常な敵、呪われた女性。ここは狂った装置の中心。小説アカウント@decay_worldで連載した短編のファンタジー小説です
減衰世界
@decay_world
「温かいスープだよ」 エンジェはスープを氷漬けの女性に差し出す。女性は、その熱を確かめるように両手でコップを包むと、少しずつ啜り始めた。……すると、不思議なことに、彼女の氷の呪いが解け始めたのだ!
2013-02-17 18:25:56
減衰世界
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「す、すごいスープね」 「いや、おかしいぞ。こんな物理的な熱で解ける呪いじゃない……本当にウサギの肉か?」 ミェルヒも鍋からスープをすくって飲む。ミェルヒはその味を見て、渋い顔をした。 「エンジェ……これは魔法使いの肉だよ」
2013-02-17 18:27:42
減衰世界
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「ええっ!?」 「どうやらあのウサギは呪われてウサギになった魔法使いだ。あの効き目からすると彼女を呪った本人だな……」 女性が呻いた。どうやら呪いが完全に解けたようだ。疲れきってぐったりしている。
2013-02-17 18:31:02
減衰世界
@decay_world
「情けない……が、助かった。わたしは運がいい。ざまぁ見ろ、ひとを呪わば穴二つだ。スープにいいダシ出してろ」 女性はゆっくりと立ち上がると、ミェルヒにしなだれかかった。
2013-02-17 18:33:44
減衰世界
@decay_world
「里まで送ってくれ……頼む。わたしは酷く疲れた……報酬も出そう。赤字だ、くそ」 ミェルヒはその赤錆の鎧を軋ませて、少し恥ずかしそうにしたのだった。
2013-02-17 18:35:43
減衰世界
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エンジェはというと、それを見て少し不機嫌そうになったのをミェルヒに悟られないようにしていた。遺跡の外はもう春の風が吹いていた。
2013-02-17 18:37:24