NPO法人 POSSE代表 今野晴貴さんによる「賃上げ問題」についての考察

@konno_harukiさんのtweetをまとめました。
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今野晴貴 @konno_haruki

デフレ脱却の議論が、賃上げというところまで及んできたことは、よいことである。それも、非正規雇用の待遇改善という文脈と結びついて。だが、「雇用の質」の問題を、「賃金」に収斂するべきではない。賃金以上に、労働時間やハラスメントの問題が「質」を決めるということを強調したい。

2013-03-15 09:44:34
今野晴貴 @konno_haruki

理論的・歴史的に言っても、「賃上げ」は「雇用の質」を引き下げる時のバーターとして用いられる。高賃金の代わりに過酷な単純労働を強いる「フォーディズム」の確立がまさにそうであった。日本の場合には、年功賃金と引き換えに、過労死労働が課せられてきたのだ。同じことを繰り返してはならない。

2013-03-15 09:51:19
今野晴貴 @konno_haruki

もし、大企業の「賃上げ」と引き換えに解雇規制の緩和や、労働時間規制の緩和(無限サービス残業の合法化)が行われるとしたら、どうなるだろう。大企業の、超上層の労働者は、それで待遇がよくなるかもしれない。しかし一方で、ブラック企業が増え、サービス残業の強要と、うつ病の増加が起こるだろう

2013-03-15 09:54:10
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題1:デフレ脱却の論議が賃上げに及んでいることは、高く評価できる。その上で、指摘すべき問題も多数。第一に、今回の大企業の「満額回答」は主にボーナス(一時金)であり、長期的な賃上げではない。これでは、安心して消費が上向く方向にはいきにくく、効果は限定的になるだろう。

2013-03-16 11:32:02
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題2:第二に、今回の賃上げが、大企業中心に行われている点。大企業の場合、下請や非正規に価格転嫁の可能性が残る。また、企業間で賃金格差が増大し、企業内部業績に応じた分配もなされるだろう。これらの結果、労働者間の競争圧力が強まる。分配=競争の日本特有の構図にも留意が必要

2013-03-16 11:32:22
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題3:第三に、大企業の正社員に分配が集中すれば、奢侈品へと消費が偏るだろう。そもそも、大企業の正社員の賃金を上げても、国内の日用品やサービスに向かう割合は低い。貯蓄や投資(結果として国債へ還流)回る可能性も高い。普通に考えれば、中・下層の底上げこそ、消費を向上させる

2013-03-16 11:32:38
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題4:第四に、非正規雇用対策も視野にいれた議論が出ており、ここは評価できるが、これも一時的・恩恵的なものになるならば、安定した収入増とはならず、消費が増大することはない。最低賃金の引き上げなど、制度的な持続性があり、長期的な変動が少ない方法で賃金底上げを図ることが必要

2013-03-16 11:32:55
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題5:第五に、「賃上げ」が規制緩和のバーターにされる可能性がある。この間出ている雇用改革案は、「不合理な解雇」(たとえば、顔が気に入らないから解雇、というような場合)も認め、労働時間規制も緩和(無限サービス残業の合法化)するというもの。結果、労働意欲や消費行動が減退する

2013-03-16 11:33:11
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題6:一部の大企業のパフォーマンスは、経済拡大の期待を増大させるためにやっているのだろうけど、実体経済の改善がなされなければ、結局長期的な好循環へは結びつかない。賃金の上げ方も、長期的・実質的な「安定」と結びつかなければ、効果を発揮しないだろう。「期待」にも根拠が必要だ

2013-03-16 11:33:28
今野晴貴 @konno_haruki

賃上げ問題7:「賃上げ」を論じる際の問題は、それが、中立・ニュートラルなものではないということ。賃金の分配とは、すぐれて「制度」に依存した問題であり、ただ「額面」を論じればよいわけではない。市場は、制度の媒介なしには成り立たないからだ。賃上げも、どのような「仕方」かが重要なのだ

2013-03-16 11:33:46