(あらすじ:オウ、俺だ。ん?いきなりタイトルが変わってビックリしたって?これは伏線でも何でもない。だってよ、あのよ、occurがアカーなんて思わねえじゃねえか。どう見てもオカーだろ。どうなってんだ英語!陰謀だ!ニンジャが俺をハメようとしてるんだ!ニンジャの英会話教室が!コワイ!)
2013-03-16 12:51:40ダークエルフのせんしはJRPGに出てくるような剣を構えた。だが俺は怯まない。何が「わたしのボブ」だ。ボブは誰の心にも居る…とかそんな話じゃねえ。俺の知らない奴のくせに公式キャラクターを私物化しやがるだと?許せねえ。いいか、そういうのをな、ドリーム小説って言うんだぜ!俺は光った!1
2013-03-16 12:58:09「ヌゥーッ!?バカな、ひかりの力がこれほどまでとは!」光圧にダークエルフのせんしが後ずさる!この野郎、「ひかりの力が」じゃねえ、入れ替わりインシデントだけでも俺のずのうはもう満杯なんだ、これ以上ややこしい設定を作るんじゃねえ!「イヤーッ!」俺は更に光る!サイヤ人のように!2
2013-03-16 13:06:05…廃公園に満ちた光は俺を中心に収束した。ダークエルフのせんしは消えていた。忍殺書籍に集中していたボブがやっと俺達に気づき、本を畳んで立ち上がる。「…ようボブ。悪かったな、エルフじゃなくて。でもよ、俺も、ひかるぜ。お前だってきっとひかれる。手を貸してくれねえかな。俺達に」3
2013-03-16 13:13:34いつの間にか俺の横に居た甥がボブに手を差し出した。ちくしょう、美味しいところ持っていきやがる。こういうところ外人は上手いぜ。ボブも書籍を小脇に挟み、甥の手を握り返す。そしてうつむく。「でも、僕なんかに、何が…?」「そう卑下するなよ、マージナル・マン。君にしかできない事がある」4
2013-03-16 13:19:57「僕はケンカが弱いし、スポーツもできない。学校でニンジャを読んでいるとジョーンズのヤツがバカにするんです。根暗め、アトモスフィアが悪くなるぜ、って。一度だって言い返せたことがない。ダメなんです」ボブは卑屈に言う。気持ちは痛い程分かる。仕事中に更新追ってるとこんな感じになる。5
2013-03-16 13:28:20ボブが引っ込めかけた手を、ボンドの甥は強く握った。「その君にしかできない事だ。実際僕の思い込みかもしれない。でも、もう、希望はそれしか無いんだ。頼む。ウンと言うまで離せないぞ」ボブはうつむいたままだ。俺は痺れを切らし、奴らの握手の上に自分の手を重ねた。ボンドの手がやたらでかい。6
2013-03-16 13:31:57「おいボブ、アイサツがまだだったな。ドーモ、俺はニンジャヘッズだ。こいつはボンドの甥だ」「ボンド=サンの…?」「そうだ。いいかボブ、お前が俺たちに協力する理由は三つある。一つめだ。知っての通りニンジャスレイヤーは今ムチャクチャだ。まともな続きが読みてえ。お前がじゃねえ、俺がだ」7
2013-03-16 13:39:09「…つまりな、お前がどんだけダメだか知らねえがな、少なくとも俺はお前に感謝するぜ。やってくれるならな」「僕が…」「二つめだ。お前がほんやくチームに迷惑かけてんのは知ってるぜ。だったらよ、ここらで返しとこうぜ、義理をよ」「でも、僕なんかが…!僕は、ダメなんだ!」「よし。三つめだ」8
2013-03-16 13:46:41「三つめ。やり遂げたら、この甥野郎がボンド=サンのサインをくれる。いいか、直筆だ。あのショボいコピーじゃねえぞ、本物だ!」「ちょっと待ってくれ、勝手に…」「やります」ボブは決断的に言った。「僕はやるぞ、何だってやる。サインだって?◆サインだと?◆そんなの、やるに決まってる!」9
2013-03-16 13:52:43「やるそうだぜ。そんで、どうすんだ?」甥は渋い顔をしていたが、やがて諦めた。「…分かった。約束する。ただし一枚だけだ。そしてビジネスだ、僕も遠慮はしないぞ。いいかいボブ、君はあっち側から来た。そしてこっち側にも居る。分かるかい?」「…わからないです。ゴメンナサイ。やっぱり…」10
2013-03-16 14:00:54「そう、君は分かっちゃいけない。分からないからこそあそこに行けるんだ。ボブ、君には翻訳アジトを探してもらう」甥がニンマリと笑う。「公称一七〇億ものヘッズがいても、翻訳チームと同じレイヤに存在するのは君だけだ。ならやれる。引きずり下ろすんだ、居るのか居ないのか分からない彼らを」11
2013-03-17 13:00:28「…引きずり下ろす?ナンデ?どうやって?」「簡単さ。君は確かにここに居る。ならば君が翻訳チームを見つければ、彼らもここに居ることにならないか?」ボブが首を傾げる度、甥野郎は満足そうに相槌を打つ。俺も首を傾げたが残念ながら憐れむような目でチラ見されただけだ。また光ってやろうか。12
2013-03-17 13:07:46とにかくいつも通り理屈はこいつの頭の中にしか無え。当のボブにも分からねえんだ、俺に分かってたまるか。「君は見つけるだけでいい。頼む。もう一度言う、君にしかできない」「僕にしか…!」ダメ押しの一言にボブはキラッキラした目で答えた。俺、思うんだが、こいつ本当は悪人じゃねえのか?13
2013-03-17 13:14:46確かに翻訳チームを押さえちまえば、少なくともイニシアチブはこっちのもんだ。だが命がけだ。いくらボブがボブで、なんかこう…残機っていうか…あろうが、一人で行かせるってのは…。「よく決断したね、ボブ。ならばわれわれが付き従おう」背後からの声!何だよもう!これ以上なんかあるのかよ!14
2013-03-17 13:21:00俺は振り返った。ズラリ並んだのは…エルフのせんしに魔法使いのおじいさんにヒゲモジャのちっこいオッサンに野伏の男に騎士にチビとチビとチビデブ!「感謝する。我々も今や困難に直面しているのです。どうも今の翻訳チームに我々は不要のようだ」野伏が大塚芳忠の声で言った。吹き替え版だ。15
2013-03-17 13:27:56ボブがエルフのせんしに駆け寄る。これで九人か。壮観なもんだ。「…翻訳アジトを見つけたら、すぐに連絡してくれ。DMを飛ばすんだ」ボブの眼差しはもう冒険者のそれだ。おじいさんが杖で南を指した。その先は黒の国じゃあないけどな、でも同じくらいヤバイぜ。なんたって東京湾、ネオサイタマ!16
2013-03-17 13:35:09かくして彼らは旅に出た。一行を見送ると、俺は頭の矢を抜いた。痛えからだ。時刻はだいたい昼くらいだ。聞いてくれよ、まだ土曜の昼だぜ!なんて濃さだ!「…腹減った。なんか食いに行こうぜ」「いいね。でも、こんな機会だ。食べてみたくないかい?」「何をだよ」「スシだよ。あっちのスシ!」17
2013-03-17 13:42:16一度本場のスシを食べてみたかったんだ!との提案により、俺達は落書きだらけのサッキョー・ラインでネオサイタマ入りした。ツッコミどころは二つだな。たかがスシのために魔都ネオサイタマまでノコノコ出向く、それと本場っつうのはどういう事だよ、本場ならよ、せめて築地とかよ…あ、ダメだ。18
2013-03-17 13:50:47一応文句は言ってやったものの、俺はわりかし素直に付き合った。だって食ってみたかったからな。果たして粉末形成スシとはいかなる代物か?あっちのショーユは本当に醤油なのか?他にも色々食いたい物はあったが、胃袋のキャパは有限だし偵察だってしなきゃならねえ。ならスシだな。スシしかねえ。19
2013-03-17 13:57:43観光気分なんて言ってくれるなよ。だってよ、見てくれよ、「や」「す」「い」「!」このアホみたいなノーレン。俺は重金属酸性雨の中しばらく立ちつくしていた。これだよ、俺が食いたかったのはこれなんだ。オーガニック・トロスシならあっちでも金を出せば食えるがな、こいつはそうはいかないぜ。20
2013-03-17 14:05:14ランチタイムを少し回った店内に客はまばらだった。だがそれでもクソ狭い。ワビサビと地価との合理性だな。カニ歩きでカウンター席につく。左右は薄汚れたヒノキの薄板、いよいよ気分が高まってきた俺は、ポケットの百円玉を震える手でスリットに投入した。そしてハードボイルドに呟く。「タマ…」21
2013-03-17 14:12:31