《『福島民報』連載 「安全の指標 揺らいだ基準」第5回》
- karitoshi2011
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25 ICRPの「緊急時被曝状況」とは、事故が起きて避難する際に、避難の過程で避けることができずにやむを得ず被曝する際の基準のことで、事故発生後1ヶ月以上してから避難指定し、さらに3ヶ月かけて避難完了させるのに使うような基準ではない。可能な限り早く避難させるための数字だ。
2013-03-22 14:49:4826 同じくICRPがいう「現存被曝状況」という基準は、事故が収束してからでないと適用できない数字だ。仮に政府が言う「冷温停止状況」を「事故の収束」だと考えても(私はかんがえないが)、2011年12月16日までは使えない基準だ。その基準を日本と福島県は、事故継続中に使用している。
2013-03-22 14:52:3627 すこし話を広げる。ICRP基準で言うなら、年1ミリを超える被曝線量の空間には、事故が継続している以上、本来人を住まわせてはいけない。フレッシュな放射性物質の拡散が続いていて、今後も大規模な再拡散の恐れがあるからだ。そうなると対象地域は福島県では収まらない。
2013-03-22 14:54:5628 年1ミリシーベルトを、単純に空間線量で考えるなら、0.114μSv/hだ。事故前に比べて、これ以上の線量が追加されている場所は、基本的に避難が望ましい土地になる。事故前が0.06μなら、0.18μだ。
2013-03-22 14:58:1429 ただし、いったん事故が起きてしまった後では、ICRPは参加各国政府が出した基準に異を唱えたりしない。それぞれの国の事情のほうを優先する。なぜなら、ICRPは各国が参加する任意団体で、算出する基準に強制力があるわけではないからだ。
2013-03-22 15:00:1730 従って、ICRPの基準に従って避難基準を決めるかどうか、避難基準の使い方が正しいか、ICRPは口を出さない。国民や県民を守るのは、それぞれの国や地方の政府の義務だ。ICRPの義務ではない。
2013-03-22 15:02:3731 記事本文に戻る。年20ミリ基準は、公表の数日前、「影の助言チーム」だった民主党の空本議員に、細野補佐官から電話で伝えられた、ということだ。空本氏は納得できず、小佐古氏に電話で連絡した。
2013-03-22 15:06:1432 緊急時の年20から100ミリの下限の20ミロを使うと聞いた空本氏と小佐古氏は、1から20ミリの下半分の10ミリを大人の数字と考え、さらに子どもの感受性を考えて、学校の暫定基準を年5ミリにし、できるだけ早く1ミリに下げるように提言した。
2013-03-22 15:09:1933 しかし、国は公表する際に、「緊急時被ばく状況で一番厳しい年20ミリ」としてではなく、復旧期の「現存被ばく状況」の中の一番ゆるい基準の20ミリとしてしまった。年20ミリは、意味合いを変えられてしまったのだ。
2013-03-22 15:14:2634 空本氏は「まず20ミリシーベルトありきで官邸と文部省が数字遊びをした」と感じた。その年20ミリを使って、子どもの現実生活に基づかない、特に根拠が無い仮説で毎時3.8μを導き出した。文部科学省はもっと低い数値を設定可能だった、と認めている。(これは、私は未確認の情報だ)
2013-03-22 15:18:4135 内閣府原子力安全委員会が政府から助言を求められてわずか2時間後に「妥当」と回答していたことについては、少し解説が必要だ。政府から質問を受けた安全委員会事務局は、本来なら委員会を招集して回答をしなければならず、最低でも原案を委員に提示して了承を得なければならない。
2013-03-22 15:23:0536 おそらくこれは、原子力安全委員会事務局の越権行為または暴走行為だったのだろう。そのため後の記者会見で安全委員本人から「この案を了承した委員は一人もいない」と明言される事態に陥っている。
2013-03-22 15:25:3737 小佐古氏と空本氏が、政府への提言をあきらめたところで、今日の記事は終わる。そもそも「影の助言チーム」の存在そのものが「影」なのだから、このようなチームの提言で政策が動かされることのほうが私にとっては怖いのだけれど、現実の政策決定はもっと「影」だったのではないか。
2013-03-22 15:29:5438 改めて、年20ミリ、毎時3.8μという数字について、この際考えてみる。記事が言及していない事があるのではないか? 2011年4月17日、細野氏が空本氏に20ミリを提示した段階で、どんなことがわかっていたのだろうか?
2013-03-22 15:32:3039 福島県の学校の校庭に関する空間線量率の測定は終り、すでに一覧表ができていたはずだ。殆どの学校の校庭は、毎時4μを下回る数字が出揃っていたはずだ。始業式を終え、既に新学期が始まっていた学校で、「授業ができません」などということは文部科学省も福島県も言えない。
2013-03-22 15:35:2940 だったら、殆どの学校がその数字を下回るような基準を作れば良い。そうやってひねり出されてきた数字が毎時3.8μだったのではないか?目的は、学校を今ある場所で継続させること。疎開も一時移動もさせないこと。そこに目的があったのではないか?
2013-03-22 15:37:5041 4月中旬に、もう一つはっきりしてきたことがある。これまで避難指定していなかった、20キロ以遠の中で、年20ミリどころか100ミリを超えかねない場所があることがわかったのだ。浪江町津島地区や、飯舘村長泥地区だ。これらの場所を避難指定しなければならない。
2013-03-22 15:42:0742 原発から20キロ以遠の土地の避難指定と、浜通り中通りの学校の校庭使用許可を整合させる数字がほしい。ただし、この段階では、後の「特定非難勧奨地点」の設定は想定されていないだろうと私は思う。年20ミリで避難という基準を作ったために、後に福島市で苦しい対応を迫られるようになる。
2013-03-22 15:45:2143 年20ミリを「緊急時の一番厳しい数字」としてではなく、「復旧時の一番ゆるい数字」として提示した裏に、私は福島県の強い意向が働いたのではないかと、私は考えている。福島県は避難地域以外は「緊急時」ではなく「復旧時」だ、という宣言と宣伝をしたかったのではないか?
2013-03-22 15:49:3844 実際、文部科学省の年20ミリ基準が出てまもなく、福島県中通りの学校生活は屋外での授業をのぞいて、急速に「普通」になって行く。屋外部活動の大会を開催する会議も行われた。そして、5月には大会が実施された。
2013-03-22 15:51:4845 まとめる。涙の辞任会見をした小佐古氏は、公表されていない「影の助言チーム」の一員でもあった。小佐古氏と空本氏は、原発作業員の被曝上限に関しては、年500ミリを提唱したが、容れられなかった。学校の校庭の使用基準については、短期的には年5ミリが適切だと考えたが、拒否された。
2013-03-22 15:54:2746 小佐古氏の判断基準は、ICRPの基準に基づくものだった。学校年20ミリ、毎時3.8μは、政府や文部科学省が適当に数字遊びで決めた解釈によるもので、ICRPの基準には基づいていない。これが記事の主張。まとめ主は、その判断に福島県の意向が反映されたと考える。 以上。
2013-03-22 15:57:15