ささきりょう弁護士(@ssk_ryo)が語る、解雇の金銭解決の危うさ

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ささきりょう @ssk_ryo

今朝の某番組で解雇規制緩和について取り上げられていた(私もVTRでコメントした。一言だけ使われていた。)。番組全体の方向性は解雇規制緩和をよしとはしていないが、スタジオに来ていた某経済学者は全くもって「怪しからん発言」(当職基準)を繰り返していた。

2013-03-23 11:04:31
ささきりょう @ssk_ryo

某経済学者は、要するに、裁判で争える余裕のある労働者が救われて、争う余裕のない労働者は救われないので、不平等だから、企業が一定の金銭を支払えば解雇規制を受けないルールを作るべきと述べていた。

2013-03-23 11:05:13
ささきりょう @ssk_ryo

そして、争う余裕のある労働者は、大企業の労働者で、中小企業の労働者は救われない、という趣旨も述べていた。労働者のためにも、解雇の金銭解決制度を設けるべきだ、とも言っていた。

2013-03-23 11:08:12
ささきりょう @ssk_ryo

私は解雇の金銭解決制度には大反対である。え?だって、解雇事件だってほとんどは和解で金銭解決じゃん、という人もいるでしょうが、「改革」と称される解雇の金銭解決制度と、交渉や裁判で金銭の支払いをもって和解する場合とは、根本的に違う。要は、労働者の同意に基づくか基づかないかである。

2013-03-23 11:09:16
ささきりょう @ssk_ryo

解雇事件における訴訟や交渉での和解、労働審判での調停、いずれも退職+金銭の支払いが多い。しかし、和解や調停は労働者の同意がある。したがって、労働者が争い、解雇が無効となれば、職場復帰への道は開ける。ところが、解雇の金銭解決制度は、この道を閉ざすものである。

2013-03-23 11:10:53
ささきりょう @ssk_ryo

もちろん、いったん解雇された職場になんか戻れない、戻っても気まずい、そもそも戻りたくない、という人もいるだろう。そういう人は今までどおりの制度で十分に対応できるので、何も使用者が一方的に金銭を支払って解雇を有効化する制度を導入しなくても無影響である。

2013-03-23 11:11:30
ささきりょう @ssk_ryo

むしろ実質的には悪影響と言えるだろう。実務では解雇無効の心証を裁判所が持つ場合、和解等で解決金額が上昇する要因は、労働者が職場に戻る可能性があるからである。要するに、企業は争っても負けてしまえばバックペイ+職場復帰を受け入れるリスクがあり、この回避のために解決金を積むのである。

2013-03-23 11:13:55
ささきりょう @ssk_ryo

もし、解雇の金銭解決制度があれば当然解決金額の上限はこの制度での上限金額で縛られる。企業もいざとなればその額さえ覚悟すればいいのだから、労働者の足下を見た交渉態度に出ることが予想され、結果、労働者は大した金額でもないのに和解を飲まざるをえない状況に追い込まれる可能性が高い。

2013-03-23 11:14:31
ささきりょう @ssk_ryo

他方、職場に戻りたいという人もいるが、解雇の金銭解決制度はその障壁に他ならない。

2013-03-23 11:18:05
ささきりょう @ssk_ryo

結局、労働者サイドにとって、現状において解雇の金銭解決制度を導入されても「百害あって一利なし」という他はない。もっとも、某経済学者は、争う人と争わない人の不平等を強調し、中小企業の労働者は争う余裕がないので、解雇の際に一定の金銭を支払うルールを設けた方が労働者のためだという。

2013-03-23 11:18:45
ささきりょう @ssk_ryo

しかし、もしそれを言うのであれば、現状の解雇予告手当を30日分の金銭支払ではなく、180日とか200日にすればいいだけである。解雇規制はそのままでもこのような制度の導入は十分に可能で、争わず解雇を受け入れる人でもそれなりの金額を得られ、「不平等」などはなくなるだろう。

2013-03-23 11:19:10
ささきりょう @ssk_ryo

なお、某経済学者は、あたかも裁判で争っているのは大企業の労働者だという認識だが、「寝言は寝て言えレベルの妄言であって、もう少し勉強した方がいいだろう」と誰かに言われかねない(私は言わないけど)。裁判例を一覧しても、中小企業のいかに多いことか。分かる人には当たり前すぎる事実である。

2013-03-23 11:20:22
ささきりょう @ssk_ryo

私がVTR出演で一瞬だけ出て発言したのは、解雇の金銭解決制度は経営者の解雇に対する抑制心のたがを外すことになる危険性を持つものだ、ということである。なお、撮影自体は3時間くらいやったのに、使われたのはここだけなのである。

2013-03-23 11:22:43
ささきりょう @ssk_ryo

大した理由でなく解雇しても後で金を払えば解雇は有効になるという認識が、どういう労務管理を生むだろうか。雇用維持を人質に取られた労働者がどういう働き方を「率先して」するだろうか。考えてみれば容易に想像はつき、背筋の寒くなる思いである。

2013-03-23 11:23:36
ささきりょう @ssk_ryo

解雇事件に多少なりとも携わった人なら分かるが、ひどい解雇をした使用者も、いざ解雇が争われるともっともらしい理屈をつけてくる。たとえば、妊娠したからクビにしたとしても、裁判では妊娠したからクビにしましたとは言わない。もっともらしい理由をでっち上げたり、ほじくり出したりする。

2013-03-23 11:24:15
ささきりょう @ssk_ryo

「そこまでひどいことを経営者はしない。経営者もそこまで馬鹿ではない。」などと言っている経営者もおられるが、皆その方のように賢い経営者だけではない。それは、とんでもない解雇が横行していることを見れば明らかのはずである。

2013-03-23 11:25:52
ささきりょう @ssk_ryo

いずれにしても、今回は本腰を入れて解雇規制緩和を目論んでいるようだ。厚労省のお役人も解雇ルールの「規制緩和」を命じられて人員を割いているとか、いないとか。解雇自由化で景気向上、賃金上昇とか、そういう言説に騙されることなく、労働者サイドは解雇規制緩和に団結して対峙する必要がある。

2013-03-23 11:28:02