2010/09/05 ツイッター小説 お気に入りセレクト　

雪村燈子／yuk1／ @tamako_12

｢怒られない？｣｢卒業生だし、見逃してくれるって｣暗い中で軽々と校門を乗り越えて､校庭を突っ切る背中。 ｢おいで｣暗い水が揺れるプール。裸になって潜る彼女が水中で壁を指す。｢あ…｣一面にたくさんの魚の絵。水族館ﾃﾞｰﾄに寝坊した彼女が｢今日はごめんね｣と笑った。 #twnovel

しーな@GO2完走 @xsheeenax

真夜中の路地裏で野良猫がみゃおうと鳴いた。人間がさめざめ泣いていた。夜明け前、雀がちゅんと啼き出した。家の裏で犬がわおんと鳴いている。この界隈に鶏はいないので、くっくどぅるくーは聞こえない。朝が来るとまた人間がわぁわぁ泣き出して、世界がばたばた騒がしく目覚める。 #twnovel

ひなたま @hinata_ma01

#twnovel 結婚して一周年の記念に、二人でホワイトボードを買った。意見が食い違ったときの家族会議用。最初の議題は、結婚記念日に何を食べるかだ。僕の希望は和食、妻の希望は中華で、ペンを片手に仲良く議論する。お互いを言葉もいらないほど理解するために、何十年だって言葉を重ねよう。

佐木ささめ @sakiandu

#twnovel 二泊三日の出張から帰って愕然とした。2DKの狭いアパートはガランとした空間に変わり服や物が散在している。ベッドや箪笥、冷蔵庫等大型家具の全てが消えていた。妻の姿も無い。空き巣？しかも妻を拉致？混乱する俺の足元には『家財道具は慰謝料に頂きました』のメモと離婚届。

らし @rashi_catwillow

#twnovel 帰宅したら彼が居間で喫煙していた。ミラはバケツの水を彼にぶちまけ寝室に籠もった。一緒にやめるって誓ったのに！やけになって煙草に火を灯す。何かが飛び出す、「ジャーンあたし煙草の精、貴女はラッキー望みはなあに？」ミラはそいつを窓から投げすて、ベッドの脇で膝を抱えた。

しぃとろん @seatoron

早いもので、貴方が旅立ってから、もう一月です。４９日間はこの辺をさまよっているとのことですが、こんなにも早く旅立つ、せっかちな貴方のことです。時間までゆっくり待ってはいないでしょう？正確な時間が分かるように、時計を贈ります。追伸：１０分程遅らせていますからね。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 早朝に散歩して物を拾う。夜の間に落とされ暗闇の中で見失われた物も、朝の光の前で露わになる。折れた携帯電話や耳付きピアス、恨み事しか記されていない日記帳。それらを拾い集めながら、同じように落とし物を収拾する少女を今日は見ないなと思っていたら、彼女自身が落ちていた。

layback @laybacks

エアコンの温度を下限いっぱいの16度に設定して、あたしは毛布にくるまり膝を抱えている。これならすぐに腐ることはないだろう。業務用の冷蔵庫も注文した。ばらせば入るはずだ。ホームセンターにも行かなきゃ。うちのなまくら包丁では刃が立ちそうにない。眠い。でも行かなきゃ。 #twnovel

Hato Ouma @Hato_ouma

#twnovel 「起こり得る全ての可能性に対して、それが起こっている世界があるとする。確かにそういう解釈もあるだろう」　だが君。「君と言う人間が存在し、2次元の世界に入る方法が確立され、君がキュアサンシャインと毎晩快楽を貪り合う日常。そんな『可能性』が、あると思うのかね？」

@tsujiyosuke

荷造りを終えて、私は何もなくなったリヴィングに座った。十五年間暮らしてきたこの家から去るというのに何の感慨もなく、ただ疲れたから寝たい、という気持ちしかない。暗い窓の外を車が通りすぎていく。そういえば、結局最後まで、隣に誰が住んでいるのかすら知らないままだった。 #twnovel

鈴々@物語る鳥 @re_rhythm

療養中の病院の裏手に白詰草の花畑がある。そこで毎朝花冠を編むのが楽しみだった。完成する頃にふらりと少年がやってくる。その頭に花冠を被せて息抜きは終了だ。名前も入院の理由も知らないまま彼はある日ぱたりと来なくなった。もう会えないかも知れない。そう思うと胸が冷えた。 #twnovel

若杉朋哉（わかすぎともや） @WakasugiTomoya

大人の遊びはゴルフに限るぜ。妻の愚痴も聞かず、子供とも遊んでやらず、ご機嫌伺いに舅・姑を訪れず、町内会の清掃にも参加せず、会社の溜った仕事の処理も先送りし、重たいゴルフバッグを抱えて高速の渋滞にはまりながら到着したゴルフ場で、大自然に囲まれ「ファ～」と叫びたい！ #twnovel

一行怪談 @kowaihanashi

【0421話】高橋君はクラスの人気者。通っている塾でも、商店街でも、とにかくみんなの人気者だ。「どうして高橋君はそんなに友達が多いの？ 友達の作り方教えてよ」すると高橋君、「予備は多いにこしたことはないだろう？ 何が起こるか分からないんだからね」と笑顔。 #twnovel

ふぅん @huxun_m

#twnovel 彼は声が喉に張りつく。その声を押し出すにはもう一度声を出さなくてはならない。つまり、おはようを言おうとしておやすみ、こんにちはを言おうとしておはよう、こんばんはを言おうとしてこんにちは、おやすみを言おうとしてこんばんは。

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」より発売中 @Takuya11

#twnovel 「今日のショーの司会しますお姉さんでーす！ みんな元気ー?」「はーい」「ショーが始まる前に３つお願いがあります。１つは騒がない。２つ目は立ち上がらない。守れますか？」「はーい」「３つ目はお姉さんの個人情報に踏み入らない、特に恋愛関係は厳禁ですー」「はーい」

ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 会社の今後を決める目的の会議が終わると、｢シュレッダーにかけといて｣と秘書課の私は部長から極秘資料を渡された。歩きながら私は何気にチラリと資料を見る。今後の方針のページに、あみだくじなるものを発見した。我が社は創立５０周年目を「あみだくじ」で迎えようとしている。

hina @ec_hina

早朝の映画館は彼と私の二人きりの世界である。シフトの重なった朝を存分に楽しむのだ。ひと気の無い映画館は静かで、聞こえるのは私たちの吐息ばかり。その時、ふとドアの向こうで足音がした。思わず息を詰める。やがて離れていった音に二人して脱力し、しのぶように笑いあった。 #twnovel

roardel @roardel

私は航宙管制官。静止軌道上の人工衛星から、地球と外宇宙を行き来する宇宙船に指示を出す。高度の知識と技術を要する重要な任務だ。が、今では地球を訪れる船も無くなってしまった。他の惑星からの誘いもあったが、私はここにとどまる。核戦争で滅亡した地球を眼下に見守りながら。 #twnovel

@mia_lemoria

1-5,8-1,3-3,7-2。一定の間隔で、光を送信する。最後の七つの光が、きっかり二秒。静寂。意味のない記号に、ヒトは「アイ」を感じるらしい。分からないけれど。彼方で眠るただひとりのため、わたしは今日も「オヤスミ」を告げる。【スリープモードへ移行します】　 #twnovel

江田・Ｋ【小説書き】 @koudakei

待ち合せに君はいつも遅刻。早くて５分、遅ければ３０分。両手を合わせてすまなそうな顔をされるとつい許してしまう。最近、遅刻の理由が判明した。「どっちがいいかな」「右」「それだと靴が合わないよー」「知らんがな」待つ場所が外から家になった御蔭で退屈はしなくなった。 #twnovel

ふぅん @huxun_m

#twnovel ベキベバゴガギググ、と僕はベースギターを刻む。この骨が軋むような音が好きだ。内臓が捲れる。肉が剥がれる。アンプの前にいると肺臓が痺れて僕の体をバギバギと破りそうだ。だけどバンドの歌は愛を歌い、友情を慈しみ、平和を掲げる。僕がこんな音を出しても気付く者はいない。

ひのもと　和義 @khinoxyz

親子の客が入って来た。「ラーメン１つ」娘が気付いて言う。「ママの分は？」母親の顔に羞恥の色が浮かぶ。と店長「今、麺の大盛サービスをしておりますが・・・？」麺だけでなく、具も大盛のラーメンを出した後、店長に聞く「いつから、大盛サービスを？」店長「さっきからだ！」 #twnovel

҉A҉ a.k.a ҉A҉ @4x1h170fh41vlvl

朝起きるとキューピッドがいた。モテない私へのお慈悲らしい。とりあえず学校に連れて行き一番かわいい子に愛の矢を撃ってもらった。みごとなヘッドショットと感心する間もなく次々と貫通していく矢。３０人以上の男女に囲まれ求愛される私。ホローポイントにしとけば……。 #twnovel

@toki62

一体どこから飛来したのだろうか。巨大で歪な隕石がやってきて、音もなく私の中に着水した。途端に津波が起こり、あらゆる私を連れ去り後悔の渦の中へ飲み込んでいった。息も絶え絶えに光を探したがそのようなものは欠片も見つからず、次第に流れに身を任せるようになった #twnovel

鐘辺 完 @kanebekan

#twnovel 「傑作ができた」　作家は、ワープロ打ちしたテキストデータを、記憶媒体に記録し、金庫に収めた。「客観的に見直せるように、何年、いや、十何年寝かせておこう」というのだ。そして、十数年後。金庫から出した、記憶媒体を再生させる装置はもうすたれてなくなっていた。