ショートショート「理想の生活」
そういえば、夢の中で「ボタン一つでお片づけ出来る部屋」を発明してました。部屋の外に出て呼び鈴みたいなボタン押すと、デフラグ画面みたいなのが小窓に出るの。毎日お出かけ前にボタン押すだけで食器も洗われて定位置に戻されてるの。正夢にならないかなあ。
2013-03-28 08:15:04という反応をいただいたので、エヌ氏を登場させてみた。
@chilime エヌ氏はものぐさである。訪問販売のセールスマンからのその商品を勧められたとき、迷うことなく購入を決めた。ボタン一つで部屋の中の全てのものが、エヌ氏の理想通りに再配置されるというのである。
2013-03-28 08:32:39@chilime それほど安い買い物ではなかったが、独身生活が長いので、貯金はたっぷりある。ダメでもともとと購入したが、その効果にエヌ氏は大層満足していた。あまりに散らかった部屋なので、以前は女性を招くのも億劫だったが、交際にも積極的になり、最近同棲を始めた。
2013-03-28 08:47:14@chilime この女性、できた人であり、家事はそつなくこなす。部屋を散らかしたとしても翌日にはきれいになっているのである。いつしか、エヌ氏は例のボタンの存在をすっかり忘れてしまった。
2013-03-28 08:48:42@chilime 華子は最近同棲生活を始めた。交際相手の男の部屋に招き入れられた時、その整理整頓ぶりに惚れたと言ってもよい。しかし、同棲生活を始めて見ると、男は部屋を片付けようとしない。必然的に片づけは華子がすることになる。
2013-03-28 08:54:49@chilime 以前は他の交際相手が片付けをしていたのではないかと考えて調べてみたことはあったが、どうやら男がいう一人暮らしが長いというのは事実のようであった。嘘のない誠実な人柄であることは間違いない。しかし、男から結婚の申込みを受けた時に迷わないではなかった。
2013-03-28 08:59:33@chilime 「一晩考えさせてくださる?」華子は男にそう言って答えを保留した。答えを考えつつコーヒーを飲みながら、壁を見るとそこに、見たことがないボタンがある。同棲を始めてから、改築をしたわけでもなく、今までもあったはずなのだが、気がついていなかったようだ。
2013-03-28 09:06:50@chilime 「ボタンを押すだけで部屋が片付いてくれたりしないかしらね」戯れにそんなことも考えてみる。部屋からは男の寝息が聞こえてくる。 明日からの生活のことを思いながら、華子はボタンを押した。
2013-03-28 09:09:51感想戦です。