空想話 for "さくら荘のペットな彼女"

鴨志田一先生著『さくら荘のペットな彼女』(電撃文庫/アスキー・メディワークス)をモチーフにした空想話。
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旅人水郷🦋misato_junktion @ast_wind

【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 ――な、なんだ? ――僕の嘘にここまで引っ掛かってくれる、神田は最高の同志だ(笑) ――笑えるか! (笑) じゃねえよ! つーか、今までのは全部嘘? 忘れてたけど、エイプリルフールか! ――神田、うるさいぞ? ――誰のせいだ! (続く)

2013-04-01 20:05:20
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 ――神田はカルシウム不足か? 栄養バランスに気をつけろ。 ――トマトばっか食っている奴に言われたくねえ! ――神田、 ――まだ何か? ――カップラーメンに最適な3分はとっくに過ぎているぞ。 ――え? マジ。あ、ホント……って! (続く)

2013-04-01 20:10:31
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 「仕事が片付いた。僕は寝る」と残し、会話は途絶えた。 最初は暇な時間を有効活用しようと思っていたのに、話題がどんどん逸れて、企画の話は後日に持ち越しとなった。それより気になるのは、龍之介の実験だ。龍之介の話は、本当に嘘だったのか。 (続く)

2013-04-01 20:15:43
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 「本当に冗談であってほしい」 龍之介のレベルでこれなら、美咲に早期退散して頂いて良かったと思う。気持ちを切り替え、やや伸びたカップラーメンでサティスファクトの海を埋め立てることに集中する。時計は、4月1日11時57分を刻んでいた。 (続く)

2013-04-01 20:20:34
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 4月1日12時29分 コンロに乗せた二つの小さな土鍋がぐつぐつと音を立てている。噴き上がる白い湯気を眺めながら、片づけを済ませた。 足元には白猫のひかりがすり寄ってきて、「にゃ~」と鳴いている。それに応えるように、 (続く)

2013-04-01 20:25:12
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 黒猫ののぞみが「にゃあ」と鳴いて現れた。それに続くように、ダイニングで昼寝をしていたこだまやつばさが目を覚まし、じゃれあっていたこまち、あおば、つばさと、空太のほうをみて、にゃーにゃー、と鳴く。カエルならぬ、猫の大合唱だ。 (続く)

2013-04-01 20:30:59
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 コンロから離れ、ダイニングテーブルの下にキャットフードを出してあげると、七匹の猫が我先にと群がってきた。空太がさくら荘送りとなった原因である猫たちは、がつがつとキャットフードを頬張る。 「さて、大きな猫にもご飯を持っていくか」 (続)

2013-04-01 20:35:13
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 コンロの火を止め、2つの土鍋をお盆に移した。薬味を入れた小鉢を添えて、ダイニングを出る。 それから、本来は男子禁制のはずだった二階へと上がってゆく。 この春から空室となった201号室の前を通り、お隣の202号室の扉をノックしようと (続く)

2013-04-01 20:40:20
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 したとき、 「ねぇ、虎次郎……ウチ、どないしよー」 声が聞こえた。この声は七海の声だ。 202号室のもうひとつのお隣、203号室には、青山七海が住んでいる。七海は声優になるという夢を実現するため、親の反対を押し切って単身上京したが、 (続)

2013-04-01 20:45:27
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【空想話『さくら荘のペットな彼女』】 先日、千尋先生の助言を受けて大阪に帰省したところ、なんとかご両親の理解を得られたようだ。それからの七海は、以前にも増してキラキラと輝いていて見えていたが、どうやら空太からましろへと移った風邪が、七海にも移ってしまったらしい。 (続く)

2013-04-01 20:50:16
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【空想話】 ただ、七海はさくら荘に戻ってから毎日、アルバイトや友達との気分転換で出かけていたので、本当に移ったかどうかは不明だが、空太として少し責任を感じていた。 「『そんなん、俺が知ったことかぁ。口はにゃんとかの元って言うやろ』」 「た、たしかに、口には出したけど」 (続き)

2013-04-01 20:55:16
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【空想話】 「『どうせ出すなら、もっと別のことを出すんとちゃうか?』」 「せやけど、まだまだ心の準備が……いつかは告白しよう思うてんけど、あかんかったら、どないしようって……」 「『安心し、そん時は俺がもろうてやるよ』」 「虎次郎ー! 約束やで」 「『ぐ、ぐるじいー』」 (続?)

2013-04-01 21:02:42
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【空想話】 七海と虎次郎の会話(?)は一区切りしたようだ。間を割って入るのは気まずいので、んこタイミングで会話203号室の扉をノックした。 「青山~、起きてるか」 「か、神田君!? う、うん、今、起きたところ」 「お腹空いてないか? おかゆ作ってきたんだけど」 (続) (続)

2013-04-01 21:05:25
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【空想話】 「あ、うん。ありがとっ」 「あの、開けてもいいかな?」 「ちょ、ちょっと待てて」 部屋の中から何やらガサゴソと聴こえて後、内側から扉が開けられた。 まだ熱があるのか、頬が少し紅い七海が扉のわずかな隙間から、こちらの顔をみつめてくる。空太はその姿にドキッとした。 (続)

2013-04-01 21:10:29
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【空想話】 視線をそらしつつ、お盆を見せると、青山は「部屋ん中、あんまり見ないでね」と言って、部屋の中に入れてくれた。あまり見るなと言われたが、七海の部屋は、整理整頓がされている。真面目な七海の几帳面さが伺える。誰かに七海の爪の垢を煎じて飲ませたい。少しは見習ってほしい。 (続)

2013-04-01 21:15:34
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【空想話】 お盆を空が差し出すと、七海は土鍋をひとつ手に取った、 「ありがと。これ、神田君が作ってくれたの?」 「そうだけど」 「もうひとつは、ましろの?」 「あ、まあな」 「ふ~ん……」 「なぜ不機嫌に?」 「秘密です」 「そうですか……あ、あのさ、青山」 「なぁに?」 (続)

2013-04-01 21:20:28
旅人水郷🦋misato_junktion @ast_wind

【空想話】 「俺、今からこれを椎名のところに持って行くけど」 「けど?」 「その、何か用があったら、ケータイ鳴らしてくれ。青山のためなら、できることはなんでもするから」 「な、なんでもって……ホンマに?」 「ホントだ。遠慮はいらないぞ。あ、俺がしてあげられることで頼む」 (続)

2013-04-01 21:24:54
旅人水郷🦋misato_junktion @ast_wind

【空想話】 「う、うん」 「じゃあ、俺、行くから」 「あ、神田くん!」 「なんだ?」 「あんな、ホンマにありがとな] 関西弁になった七海に見送られ、空太は203号室を後にした。 「ウチな、神田君の優しいところ、めっちゃ好きやで」 背中越しに七海が何か言ったような気がした。 (続)

2013-04-01 21:31:07
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【空想話】 「椎名、起きてるか」 分かっていたことだが、202号室の中から返事はない。 鍵のかかっていない扉を開くと、そこには春なのに雪景色のように真っ白な人肌があった。 すぐに扉を閉めた空太は、なぜか全裸でいるましろに抗議した。 「お前、なんで生まれた時の姿でいるの!」 (続)

2013-04-01 21:35:17
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【空想話】 「綾乃が言っていたわ」 「何を?」 「私の漫画は日常的だから面白い」 「ほう、それで?」 「だから、身近にある出来事を題材にするなら、」 「はい」 「忘れないうちに形にしておくこと。だから、」 どうやら漫画を描こうとしていたらしいが…… 「一昨日の再現」 (続)

2013-04-01 21:38:05
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【空想話】 「それは描かなくていい! てか、自分の裸を漫画に描く気か! 恥ずかしくないのか! そもそも、風邪をひいて38度2分の熱を出しているお前は大人しく寝てろよ!」 「空太、カルシウム不足?」 「お前は常識不足だ!」 「それほどでも」 「照れるな! 褒めてないぞ!」 (続)

2013-04-01 21:38:34
旅人水郷🦋misato_junktion @ast_wind

【空想話】 「そのツッコミは、やっぱり空太ね」 「今まで誰だと思ってた!?」 「私を置いて、どこへ行ってたの」 「意味深な言い方はやめてくれるか。俺はさくら荘にいたけどな!」 「私の看病してくれるって約束なのに」 「だから、今、ここに来てるだけどね!」 「空太」 (続)

2013-04-01 21:39:03
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【空想話】 「今度はなんだ?」 「どうして、扉のむこうにいるの?」 「お前が生まれたままの姿でいるからだけどね!」 「空太なら……いいわ」 「だから、その意味深な言い方で誘うのはやめようか! 頼むから服を着てくれ!」 (続)

2013-04-01 21:40:39
旅人水郷🦋misato_junktion @ast_wind

【空想話】 「空太が用意してくれないからよ」 「なんで、そんなに偉そうなの!?」 「私の飼い主は空太よ」 「この状況は介護だけどね!」 「私の飼い主は空太だけよ!」 「なぜ言いなおした!? もういい、入るぞ」 再び、扉を開くと、そこには未だ生まれたままの姿のましろがいた。 (続)

2013-04-01 21:42:08
旅人水郷🦋misato_junktion @ast_wind

【空想話】 再度、扉を閉めようとすると、 「空田のエッチ」 「お前、この数分間、何してたの!?」 「絵を描いていたわ」 「いいから早く服を着ろ! お願いですから、健全な男子に裸を見せないで……」 何とか理性を保とうとする空太の心の叫びが届いたのか、「分かったわ」とましろ。 (続)

2013-04-01 21:42:35