山本七平botまとめ/一揆的集団主義の伝統的文化を持つ日本/~アメリカ式経営が日本で失敗する理由~

山本七平著『1990年代の日本』/(1)礼楽的秩序/伝統的秩序/58頁以降より抜粋引用。
政治 一揆的集団主義 強制収容所 十八不徳 公方と一揆 マッカーサー文化大革命 談合 内的プロレタリアート化現象 文化大革命 伝統的秩序 山本七平
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山本七平bot @yamamoto7hei
①【伝統的秩序】長い歴史を経て、さまざまな試行錯誤を繰り返しつつ徐々に形成されてきた秩序、いわば日本社会の基層的構造は、当然、それを形成してきた日本人の精神構造と対応し、この対応によって日本の社会は機能している。<『1990年代の日本』
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②これはいずれの社会でも同じだが、今もし、強烈なイデオロギーをもつ独裁国家が日本を占領し、この日本の伝統的文化的秩序そのものを根本から変えねばならぬと信じて革命を行ったら、いわば「日本版文化大革命」を実施して、社会の基層的構造をことごとく破壊したら一体どうなるであろう。
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③まず、一揆的集団主義を解体する。 日本の職場はある意味でみな一揆であり、一揆的積み重ねで大組織となっている。 たとえば末端の班でも、班長と班員との関係は「公方と一揆」のようなもので、班長が何かを指示したら必ず「班員に於て談合を加え」なのである。
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④官庁のことを聞くと、大臣が指示すれば必ず局長が集まって「談合」を加える。 そして時には次官を通じてそれとなく一部修正を要請してもらう。 これは、しばしば日本の組織は決断が遅いと外国から抗議される理由だが、ものごとはすべてプラスとマイナスがある。
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⑤いわば全員に意志が徹底するだけでなく、全員が何らかの形で意志決定に参画しているという意識をもつ。 QC(註:品質管理QualityControl)が、それを発明したアメリカより日本の方がうまくいったのはこの伝統のゆえだが、利点はそれだけでない。
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⑦完全に合理的に構成された組織は、意志決定がアメリカのように上層部に集中してしまうから、一般の従業員は「何ら決定権がない」という意識をもたざるを得ない。 この意識をもつとトインビーのいう「内的プロレタリアート化現象」を生む。
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⑧いわば「自分はここにいるが、所属しているのではない」という意識、 日本で俗にいう「お客様」意識になってしまう。 そうなると組織は活性を失って硬直化し、内から崩壊していく。
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⑨…それを全て否定し 「自分は…命令をしているのだ。それに対して異を唱えかつ談合までする者はサボタージュの煽動者である。逮捕して強制収容所に叩き込む」 などといわれ、現にそれが実行され、スパイが一揆的談合をしていないかと常に目を光らせていたら、日本人は途端にやる気をなくす。
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⑩更に昇進・抜擢は能力順位では行われない。管理者は全て党から派遣された党員で、党員でない者はいかに働いても昇進はない。 問題にされるのは専らイデオロギーヘの忠誠度で、どれだけ筋金入りで革命のドグマにどれだけ精通しているかが唯一の評価になるから、人望などは初めから問題にされない。
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⑪従って「十八不徳」の上役の下で働かねばならないこともある。 こうなってもなお勤勉である日本人は、おそらくいないであろう。
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⑫勤労の絶対的規範化の確立は確かに日本民族の履歴書の重要な一項なので後述するが、それは、日本的社会構造に対応して機能している精神構造によって発揮されているのであって、その社会構造を根底から破壊してしまえば、発揮の方法がないので喪失する。
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⑬このような不幸は、有難いことに、少なくとも現在までは起らなかった。 将来のことは不明だが、予測は後に触れるとして、確かにそういうことは起らなかったが、似たことが全然なかったわけではない。
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⑭これは終戦後の一時期、過去はすべて″封建的″と否定され、アメリカを絶対化してすべてその通りに行うべきだと信じられた時代には部分的に起っている。 見方によっては、それは「マッカーサー文化大革命的な一時期」といえよう。
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⑮企業の中にも、組織を完全にアメリカ型にし、アメリカ式マニュアルを用い、アメリカ式経営学の模範答案のような経営をしたところがあった。 幸い、冗談でなく「幸い」なのだが、企業には倒産という淘汰があるから、ある者は洵汰され、ある者は淘汰される前に方向転換をした。
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⑯そのとき倒産して、別の企業に移ったある友人は、当時を回顧して 「いや全く、どう対応してよいのか、みな、わからなくなってね……」 と、細々とした実例をあげていたが、そうなって当然なのである。
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⑰長い歴史が形成してきた伝統的秩序は、外面的秩序であるとともに、各人の内面的な秩序でもあるから、その外面的秩序を全く別のものにされれば、各人はどう対応していいかわからなくなる。 そうなると組織は内から、実質的に崩壊してしまう。

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