神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl そして、自分の赤い唇の前でそっと人差し指を立てた。（終） #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 今更ながら、あとがきをつけます。この｢混沌のほとりで｣さえ作らなければ、きっとここまで話は広がらなかったはずです。つまり、諸悪の根源。｢これで終わらせます｣詐欺の原点。最初は｢本編に出さなかったキャラクターも動かしてみたい！｣という軽い気持ちでした。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 思い浮かべていたのは、仕事一筋の若手エリートが会社近くの河原で佇んでいる所に窓際族のおじさんが寄ってきて、隣に座って話を聞いてあげている風景です。そこに社長が通り掛かって…ですね。天使だの神だの混沌だのと言いながらも、どことなく人間くさい連中です。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl このエピソードには、｢誰もがみんな救われ幸せになれる様に｣という、お菊の願いがこめられています。もっとも、救いも幸せも人それぞれで、その形はどれも違うんでしょうけれどね。…え？おじさんがひと暴れすると、どうなるかって？それはご想像におまかせします（笑） #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「混沌のほとりで」を考えながら「Mice on Venus」という曲をイメージしていました。特にピアノの部分。ええ、ゾンビかんさつ日記に引き続き、またマインクラフトです！マインクラフトの音楽が好きなのですよ。http://t.co/4ujruo4oPa #神サバ小話

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お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢なぁ、親父｣ジョナは私をそう呼ぶ。｢なんで俺なんか創ったんだ？俺が親父ならさ、寂しくなったら、絶対ぇ女創るのに｣｢それは最初にやったよ｣私は寸分違わず記憶している彼女の体型を手で示した。｢ヤベぇ…！｣ジョナは身を乗り出して、私の手の動きに魅入った。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢これが俺の姉ちゃんか？堪んねぇ！｣｢私の最愛の妻だ｣｢じゃあ、母ちゃんか？ますますヤバいな！｣｢おい、あの娘に言い付けるぞ！｣ジョナは一瞬表情を凍らせ、それから縋る様な目で私を見た。｢…無理だろ？あいつの魂は浄化されて、随分前に混沌に還ったんだぜ｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 私は息子の赤毛をくしゃくしゃと撫でた。肉体がない彼に触れるには、ちょっとしたコツがいる。｢なにすんだよ！気色悪ぃな！｣すると、赤面した息子に怒られた。私は知っている。ジョナはヴィーを猥談のネタにしたいのではない。ただ、誰かと繋がっていたいだけなのだ。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ジョナには両親がいない。私が一人で創ったから。彼は地上で人間として生を受け、神の計らいで魂が天に召された。そして、新しい神…つまり私の計らいで新しい肉体を与えられ、地上で天寿を全うして再び私の許に戻ってきた。確か、地上では息子二人、孫が五人いたはずだ。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl だが、彼の魂は二十代前半の青年の姿をしている。私は気づいたんだ。最初に天界に来た時から、ジョナの成長がピタリと止まってしまっていた事に。彼の魂は永遠に未完成な青年のまま…不老の肉体を持つ私を追い越す事は、恐らくない。私の息子でいたいと彼が願う限りは…。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢なぁ、親父｣ジョナは私をまたそう呼んだ。｢俺、本当に親父の子でいいのかな？俺さ、親父の…神の息子なのに、何の力もないだろ？｣話題が変わって、私は少しホッとした。｢まだ目覚めていないだけだろう。きっと君は凄い力を秘めているに違いない。私が請け合うよ｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢マジか？俺、実はすごいの？時を駆ける能力とか、女にモテまくる能力とか…｣そう、君は未知数だ。私の力の暴発によって創られた存在だから。私にだって解らない。君に特殊な力があるのか、ないのか。それはどんなものなのか。それを使いこなせるだけの才能はあるのか。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢ジョナ、焦らなくていいよ。息子だからって、君が私の跡を継いで神になる必要なんてない。ちゃんとアテはあるんだ。あの二人なら、同じ失敗は二度と繰り返さないはずだ。あるいは…もしかしたら、彼がここに…｣不意に違和感を感じた。何かが私の意識に接触してきた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢なぁ、親父｣ジョナは声にせずに、私の意識に直接呼びかけてきた。｢急にどうした？｣私も声に出すのをやめた。私とジョナのホットラインだ。｢母さんは俺を『エステル』と呼んだ。だけど、親父は『ヨシュア』とは呼ばない｣ジョナは黒い革表紙の手帳を私に差し出した。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl それは、ある神が捨てた記憶…それを形にしたものだった。｢勝手に読んで悪かった。親父のだろ？｣ジョナは私に向かって、手帳を放り投げた。私は動揺していたが、すぐに平静を取り戻して受け止めた。だが、ジョナは見逃さなかった。｢親父が欲しかったのは俺じゃない…｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 私は観念して答えた。｢君を創った時は、そうだったと思うよ。まだよく知らなかったから。君の事を。でも、今は違う。君には二人の息子がいたね？君にとって、兄と弟のどちらが大切だ？｣｢そんなの…選べねぇよ｣｢私は愛している。ヨシュアも、ヴィーも、ジョナ…君も｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 意識が僅かに乱れた。ジョナが私の意識の表層を探っていた。君にはそんな事ができるのか…！私は驚いたが、好きな様にさせてやった。しばらくすると、ジョナは声を出した。｢要するに、ヨシュアって奴は俺の兄貴なのか？｣｢好きな様に考えたらいい｣｢じゃあ、兄貴だ！｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢なぁ、親父｣ジョナは声に出して私を呼んだ。｢新しい身体がほしい。地上に行きたいんだけど｣｢構わないが、何か希望はあるか？｣｢歳をとるし、怪我もする普通の人間の身体がいい。あと、イケメン｣｢おいおい、前に用意したのだって、十分にイケメンだっただろう？｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢地上で大きな戦争が起こりそうなんだ…｣私も知っている。ラフィエルはのんびりとした口調で言っていた。｢地上は人間はおろか、猫が住めない場所になっちゃうなぁ｣と。ジブリエルは畳み掛ける様に言っていた。｢お分かり頂けましたか？人類は愚かで無駄なのです｣と。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢何もできないかもしれない。けど、ここから見てるだけは嫌なんだ｣ジョナの眼差しは真剣だった。｢ブランクが大きいぞ？君が地上を離れてから、もう何世紀か経つ。慣らす為に、子供の身体にしようか？｣｢いや、いつも地上を見てたし、それにあんまり時間がなさそうだ｣ #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl そう、時間がない！年齢は二十代前半でいいな。容姿は今の姿と同じで…。｢そうだ、ユリエルも連れて行くといい｣｢一人で平気だって！｣｢連れて行ってやってくれ。たぶん、行きたがる｣ ｢しょうがねぇなぁ…｣ジョナは口を尖らせたが、幾らか表情が和らいで見えた。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ｢なぁ、親父｣ジョナは少し躊躇いがちに私を呼んだ。｢…その…ありがとな｣｢気をつけるんだぞ｣私達は固く握手をして、それから別れた。…なぁ、ジョナ、私は楽しみにしているよ。次にここで会う時の君は、どんな姿をしているのだろうか？今と同じままか、それとも…。 #神サバ小話

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl さて、私もやろう。神として、できるだけの事を…。ヨシュアが創った世界。そこで暮らす、私とヴィーの子供達。彼らの許に降り立ったジョナの願い。 私は子供達を信じている。 （終） #神サバ小話