神サバ小話

診断メーカーの「ゾンビサバイバル! あなたは何日生き残れるか!? 」をテーマにした短文集「神サバ」の番外編。ノリで作った更なる番外編・神サバ小話2(http://togetter.com/li/493228)のそのまた番外編・神サバ小話3(http://togetter.com/li/507496)もある。 一体いつまで続くんだろうねぇ…? え、神サバ小話4(http://togetter.com/li/534179)もあるの?マァジでぇ? 「私」が呟く「神サバbot(https://twitter.com/kamisurv_bot)」も稼働中。 続きを読む
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お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 続き)神は自分の主が狂っていく様を見て、「神」の孤独を痛感したのでしょう。二人で一つとして創られたルキフェルとミシェルにとって、二人で手を繋ぎ寄り添っているのが一番自然で、一番幸せなんだと思います。美しいものには、それを愛でてくれる誰かが必要なのです。 #神サバ小話

2013-04-05 21:46:00

混沌のほとりで

お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「やっほ!そんな所で何してるの?サボリ?」「貴公と一緒にしないで欲しいものだ」「違うよぉ。楽園の凍結装置のメンテに来たの。ちゃ~んと動いてるかなってさ。隣いい?」「ご勝手に」「んじゃ、失礼して…よっこらっしょ」混沌のほとりに二人の天使が並んで座った。 #神サバ小話

2013-03-31 23:28:06
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「執務室以外でジブリエルを見かけるなんて、明日は雨でも降るのかな?」「天界に雨は降りません。判り切った事を…」「あはっ、地上的ジョークだよ」ラフィエルはおどけた表情で、両手をひらひらと振った。「で、何してるんだい?」「ご覧のとおり、仕事以外の事です」 #神サバ小話

2013-04-01 00:13:28
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「仕事以外の事?」「そう…仕事がない。やり尽くしてしまった」「頑張ったね!」「仕事がない私は、執務室にいる意味がない」背の高い天使は、切れ長の目を伏せて溜息をついた。そして、自分の顔の前に右手を掲げると、何もなかった掌の上で沢山の白い紙が舞い始めた。 #神サバ小話

2013-04-01 00:13:58
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 紙は無数の黒い点で埋め尽くされていき、天使が右手を握ると一つの束にまとまった。「それ、考え過ぎじゃない?」「…いや、私の居場所はどこにもない」ジブリエルは紙の束をしばらく指で玩んでいたが、ラフィエルに差し出した。「これ、私に?読んでいいの?なにかな?」 #神サバ小話

2013-04-01 00:14:20
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 温和な顔をした天使は、受け取った紙束を顔から少し遠ざけ、軽く目を細めながら眺めた。「うーん、細かいねぇ」「それは混沌を情報化したものです。かなりの量ですが、それでも混沌の一滴にも満たない。全てを把握するには、それと同じものをどれだけ創ればよいのやら…」 #神サバ小話

2013-04-01 00:14:37
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「貴公はウージエルを覚えていますか?」「君んとこの子だよね?そういえば、随分前から…」「684ページ」ジブリエルが呟くと、ラフェイルの手の中で紙がパラパラと踊り出した。ラフィエルは手を放して、紙の動きを興味深げに見守った。そして、ピタリと止まった。 #神サバ小話

2013-04-01 00:14:54
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「20行目から38行目。そこに彼がいます。ご覧なさい。傲慢、葛藤、後悔、絶望、虚無…」「あの子…ここに身を投げたのかい?」「ええ…抜け殻になったウージエルが、今もどこかを漂っているのでしょう。他のもお見せしましょうか?」「いいよぉ、目が疲れちゃうから」 #神サバ小話

2013-04-01 00:15:11
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「それは結構」ジブリエルが指を鳴らすと、紙はバラバラに解けて舞い散り消え去った。「オフの時はいつもこんな事してるの?」「最初は軽い気持だったんですよ。そう…興味本位で、私は自分の力を試してみた。混沌に溶け込んだ記憶、感情、そして魂をこの手に…ふふっ」 #神サバ小話

2013-04-01 01:18:33
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 背の高い天使は、神経質そうに両手を擦り合せた。「興味深かった。肉体を離れ還っていった魂の残滓、混沌に身を投じた天使達の狂気、この世界の誕生以前に存在した者達の幻影…暇を見つけてはここを訪れ、貪るように読み耽った。そして、消息を断っていた部下を発見した」 #神サバ小話

2013-04-01 01:38:09
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「それ以来、彼らの声が聞こえるんです。『君は其処にいるべきではない、一緒に還ろう』と」それまで静かに傾聴していた天使が口を開いた。「ジブリエル!私ね、天界で猫が飼いたいんだ!次の評議会で提案するからさ、受理されるように根回ししておいてよ!」「…はい?」 #神サバ小話

2013-04-01 02:15:43
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「ほら、仕事ができた!ジブリエル、これは君の仕事…君の居場所だ!だからね、ヨロピコ!」「却下!」「ぎゃふん!」「だが、しかし…ははっ、貴公の悪ふざけが面白いと感じたのは初めてだ」「あのね、私は本気なんだけど…。まぁ、いいかぁ。神との約束もある事だし…」 #神サバ小話

2013-04-01 09:07:43
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ラフィエルは横目で隣に座る天使を見た。ジブリエルの長い指は静かに膝の上に置かれていた。「またここに来そうになったら、私を呼んでごらん。そしたら、仕事を作ってあげるよ。おじさん、君のためにひと暴れしちゃうから」「御免蒙る。貴公のひと暴れは洒落にならない」 #神サバ小話

2013-04-01 10:20:39
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ジブリエルが立ち上がり混沌に身を乗り出したので、ラフィエルは慌ててその腕を掴んだ。「貴公に見せたいものがある。恐らく…私の力でギリギリ捉えられる範囲に…」ジブリエルが自分の胸の前に手をかざすと、何百もの白い紙が現れ、ハラハラと掌の上に積み重なった。 #神サバ小話

2013-04-01 15:10:14
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl そして、降り積もった紙片の上に左手を置き、両手でそっと包み込んだ。ジブリエルは誇らしげな顔で、ラフィエルに重ねた両手を突き出した。「おや、お次は何かな?」手を開くと、そこには黒い革の表紙が付いた手帳があった。「これは神の記憶の断片です」「神…だって?」 #神サバ小話

2013-04-02 22:13:27
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl さすがのラフィエルも上擦った声で呟いた。それが恥ずかしかったのか、天使は不機嫌な顔を作った。「おじさんをからかっちゃいけないよ」それから、話の続きを促した。「これは私の推測ですが…たぶん、私達が知る神ではありません。私達の創造主よりももっと偉大な…」 #神サバ小話

2013-04-02 23:19:41
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「なんか怖いなぁ…」「ふふっ、貴公にも怖いものが?実は私も恐ろしくて、まだ数ページ分しか把握していません」「この混沌のどこかに、その偉大な神様が漂ってたり沈んでたりするって事でしょ?」「そういう事になる」「自分から飛び込んだのかな?」「どうでしょう?」 #神サバ小話

2013-04-02 23:31:28
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 不意に二人の後ろで天国の扉が開き、一人の男が現れた。この男には翼がなかった。印象的な赤茶けた癖のある髪。だが、目が利く者なら、彼が身に纏う人間の肉体と内に潜む魂のアンバランスさに違和感を覚えるだろう。ラフィエルは口笛を吹いた。「おっと、神のお出ましだ」 #神サバ小話

2013-04-02 23:43:38
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「ジブリエル、こんな所にいたのか?」神と呼ばれた男は、天使達に親しげに声を掛けた。「ミシェルが探していたよ」呼ばれた天使の表情は恍惚としていた。「…ミシェルが、私を?」「何か頼みたい仕事があるらしいな。行ってやってくれないか?」「は、はいっ!喜んで!」 #神サバ小話

2013-04-02 23:53:05
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 満面の笑みを浮かべた天使が中に駆け込み、天国の扉は大きな音を立てて閉じた。ラフィエルはニヤニヤとしながら、男に向かって話しかけた。「…ほぉ、ミシェルが?」「そう、ミシェルがね」男は何気ない仕草で足元に落ちていた黒革の手帳を拾い、そっと懐にしまった。 #神サバ小話

2013-04-03 00:05:11
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「こんな所までお散歩で?」「そうなんだ。ジョナとユリエルのノリについて行けなくってね…」男は赤毛に指を突っ込んで、くしゃくしゃと頭を掻いた。「おじさんでよかったら、お相手しますけど」「いや、いいよ。君だって仕事があるだろう?」「…おおっと、忘れてた!」 #神サバ小話

2013-04-03 00:14:31
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl ラフィエルは男に軽く会釈をして、そそくさと楽園の扉の中へ入って行った。男は初老の天使を見送り、楽園の扉が閉じたのを確認してから、自分の懐に手を入れて探った。だが、思い直した様に手の動きを止めた。そして、混沌に向かってポツリと呟いた。「…聞こえるかい?」 #神サバ小話

2013-04-03 00:33:03
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 男は混沌を漂い眠る天使の姿を認めて話しかけた。「君達を創った神は、自分の主を求めて旅に出た。大丈夫、もし彼が絶望して狂いそうになったら、彼の叫びを聞いた主がすぐに駆けつけると思うよ。彼の主は優しいからね」ルキフェルの口元が僅かに震え、ぷっと吹き出した。 #神サバ小話

2013-04-03 11:32:29
お菊 @sara_yashiki

@ZS_tl 「…やっぱりな!これで私も君の秘密を知った訳だ。ミシェルは暇さえあればここに来て、眠る君に語りかける。時には優しく、時には寂しげに。ははっ…この甘えん坊め!長居し過ぎると、大切な記憶まで流れるぞ」眠れる天使の白い瞼の隙間から、澄み切った蒼い瞳が覗いた。 #神サバ小話

2013-04-05 11:11:40