三色劇場~夜桜

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三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 『夜桜を見に行こう。今夜迎えに行くよ』簡単な一文だった。「今夜って…いきなりだな、まったく」送りつけられた紙人形に文句を言ってみるが、相変わらずのことなので別に腹は立っていない。それどころか、嬉しくて少しにやけてしまう。夜桜か…今ならきっと綺麗だろうな。

2013-04-10 00:51:05
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「で、この格好は何なんですか」「よく似合っているよ、夏目」答えになっていませんと返す俺に名取さんは爽やかな笑顔を見せた。うざったいほどのその煌めきに、少し頬を染めてしまう自分にイラッとくる。しばらくぶりの名取さんに、俺の免疫力が追いついていないのだろう。

2013-04-10 00:51:48
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 夕刻にやってきた彼は、いつものカジュアルな服装ではなく、今までに見たことのない着物姿だった。爽やかで、澄んだ空のような綺麗な青色。モデルのようなその容姿にはあまりにも似合いすぎて、男の俺でもうっとりとしてしまうほどだった。「せっかくの花見デートだからね」

2013-04-10 00:52:14
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 夏目にはこれを着てもらいたくて──差し出された布の束は桜色の、これもまた綺麗な色の着物だった。「着なきゃいけないんですか」と渋る俺に「命に関わるから」と真面目な顔で返された。「どういう意味…」その答えを知る前に、俺は着物姿に変えられてしまったのだった。

2013-04-10 00:52:49
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「着いたよ」車から降ろされたのは、人気の全くない山奥だった。「これ以上は車で行けない場所だから」陽も落ちて辺りは月明かり以外何も灯りがない。「寒くないかい?」「はい…」そうは答えたものの、この暗さと静けさに薄ら寒さを覚えた。身震いする俺の肩を彼が抱いた。

2013-04-10 00:53:22
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「やっぱり夏目は感じ取ってしまうんだね」「え…」「この先は、妖の空間なんだよ」「妖…っ」驚く俺に、彼は安心させるように大丈夫だよと手を握り、暗い森の中へと導いていった。「小さい頃、たまたまこの近くに来た時に、迷い込んでしまったんだ」彼は静かに話し出した。

2013-04-10 00:54:23
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 最初はただの森だと思っていたんだ。けれど歩いているうちに妖が人の臭いを嗅ぎつけてやって来てね。それでどんどん奥へと逃げ込んでしまったんだ。その時はまだ分からなかったんだけれど、妖のことを調べるようになってから気付いたんだ。ここは──妖の世だったんだって。

2013-04-10 00:54:41
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 俺達は手を繋いでゆっくりと前に進んでいった。月明かりだけが頼りの暗い空間でも、握った手から彼の体温が伝わってくると、とても安心する。名取さんの声に耳を傾けた。「この着物はね、人の気配を消す術が施されているんだ。妖の世界に人が生身で入ったら、危険だからね」

2013-04-10 00:55:12
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「いつものお面ではダメなんですか」「面より、効力が強いんだ」それにせっかくのデートに、お面をしていたら興醒めだろう? 「夏目は桜の色がとても似合うね」そう微笑まれ、気恥ずかしくて目を逸らした。繋いだ手にきゅっと力が入る。「この先に大きな桜の木があるんだ」

2013-04-10 00:55:44
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「とても綺麗でね、毎年時間を見つけては来ているんだ。今年はどうしても君を連れていきたくて」だから一緒に見に行けるのがとても嬉しいよ──そう話す名取さんの声がなんだか無邪気に聞こえて。だから俺も、なんだか嬉しくなった。「もう少しだよ」歩みが少し速くなる。

2013-04-10 00:56:09
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「うわ、綺麗…」思わず感嘆の声が漏れた。視界が開けたその先に、大きな湖が現れた。水面に月の光がきらきらと反射しているその向こう側は、ピンク色に染まった桜の森が視界いっぱいに広がっていた。「こっちだよ」名取さんに手を引かれ、その幻想的な世界へ足を進めた。

2013-04-10 00:56:52
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 向こう岸に辿り着くと、そこは一面桜色の世界だった。満開の桜の木々から、風に揺られ花びらが舞い落ちる様は本当に雪景色のようで。上も下も桜色の空間に、不可思議な酔いを覚えてくらくらした。「夏目、こっちにおいで」名取さんに呼ばれ、俺は声のするほうに駆け寄った。

2013-04-10 00:57:20
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 大きな桜の木の前に名取さんは立っていた。「すごい大きいですね」「妖力を吸って、ここまで成長したんだろうね」「見上げると吸い込まれてしまいそうです…」月明かりは差し込むけれど、天上がまるで見えない。ぽかんと空を仰いでいる俺を、名取さんが後ろから抱きしめた。

2013-04-10 00:57:50
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「この着物だと、景色に溶け込んで君が消えてしまいそうで怖い…」切なげに囁く。「…これを着させたのは、名取さんですよ」そう指摘すると、そうだねと笑った。「妖なんかに君を取られたくないからね」そう言うと彼は俺の体を反転させて、唇を寄せた。「な、名取さん…っ」

2013-04-10 00:58:27
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「桜の木の下で、愛を誓うと永遠に結ばれる……よくある話だよね」吐息混じりに彼は囁く。「夏目…」「んっ…」彼の唇が重ねられた。軽く触れ、離れてはまた重ねられる。唇の表面を啄むように、舐めとるように。その動きに俺は我慢できなくなって、口を開き彼の舌を誘った。

2013-04-10 00:59:01
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 誘われて、彼の舌が入ってくる。「んん…」口腔を侵される感覚に眩暈がした。逃げようとしても、絡め取るように彼の舌は容赦なく俺の舌を捕まえる。「ん、んふ…っも…んん…」永遠に離れていかなそうな長い長いキスに息が苦しくなり、もうだめ…と彼の胸を弱々しく押した。

2013-04-10 00:59:46
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i それでも意地悪く彼は唇を貪るのをしばらく止めてくれなかった。「…ハァ…も、長いですよ」「だって夏目が誘うから」「さ、誘ってなんか」いないわけではなかったので、口を噤んでしまった。赤くなった俺の耳に口を近づけて、彼は囁く。「ここで、夏目とエッチしたい…」

2013-04-10 01:00:50
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「え、あの、名取さ…ひゃ」ふっと耳に息を吹きかけられて、全身に痺れが走った。「しよ…夏目」湿った感触が耳の中に押し入ってくる。「だ、だめですよ…ぁ」「どうして」「ん、だ、だって」くちゅくちゅと彼の舌が出し入れされる。膝ががくがく震えて、立っていられない。

2013-04-10 01:02:41
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「いくらなんでも、こ…ここは外ですよっ」「でも、ここは人も妖も──誰もいないよ」「そうは言っても…っ」誰もいないからと言ったって、こんなところでそんなこと出来るわけがない! そう訴えるも、彼の舌は躊躇いもなく進入してきて。「夏目だって、したいだろう?」

2013-04-10 01:03:36
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 耳朶を甘噛みされ、悲鳴が漏れた。「ひゃぅっ…ああ…や、やだ」「嫌ではないだろう? …感じる、だろ」「ぅぅ…だ、めです…」名取さんの手が俺の着物の襟に差し込まれた。「や…あ…っ」外気が入り込み胸がヒヤッとする。彼の指先が起用に肌を這い、胸の突起を捉えた。

2013-04-10 01:04:12
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「は…あっ」「触るとすぐに硬くなっちゃうんだね」コリコリしてるよと指先で摘まれ、くいと押された。「んんっ…」彼の指が動く度に、襟が少しずつはだけていく。晒された胸元に彼の唇が這う。「な、なと…りさ…」「困ったな…これ以上脱がしたら、妖が寄ってきてしまう」

2013-04-10 01:05:09
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「だ、だから…もう、これ以上は」膝が震えもう立っているのもつらくて。涙が滲んだ瞳を彼に向け、もうやめましょうと訴えた。これ以上されたら、もう我慢できなくなる…。名取さんは襟から手を引き抜き、俺の肩を抱いた。すると裾から膝を割り込ませ、腿を押し付けてきた。

2013-04-10 01:06:10
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 「あ、あう…っ」「ここ、もうこんなにカチカチにさせて…こんな状態で止められるのかい」「や…やめ……だ、だって名取、さんが」ぐいぐいと刺激するから、そこはますます硬くなっていく──に決まってる! 足を閉じようとする抵抗も、割り込んだ脚によって阻止された。

2013-04-10 01:06:43
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i 名取さんの腿が俺の股間を擦る。「…ハァハァ、…や、あ」「腿に夏目の熱いのが当ってるよ…」わざと押し付けているくせに、彼は意地悪く言う。「うう…」我慢できなくて、彼に身を寄せた。すると腿がすっと離れた。「…ハァ、…あっああ」今度は彼の掌が俺を包み込む。

2013-04-10 01:07:23
三色 @mokamisama

@ss_shi_su_i ギュッと握り締められると、もう膝が耐えられなくて。両手で名取さんの腕を指が食い込むくらい強く掴み、縋るように胸元に顔を埋めた。「名取…さ、ん…も、もう…おねが…」「夏目、あのさ…」掠れた彼の声が色気を含んで下りてくる。「着物着たままで…エッチしようよ」

2013-04-10 01:07:59