【まとめ】第3回twitter小説大賞　応募作品

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 二年の月日が過ぎました。急な別れのその日から。地方路線の停車場で、上り下りの車窓越し。気づいて声を上げたあと、すぐに返して二時間後。日暮れて月に照らされた、人影のない向かい側。あきらめ休む長椅子の、横から肩を叩かれる。

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 地方路線の終着駅。線路の先に何がある。停止票の×を越え、そのまた先に何がある。伸び放題の草の中、廃止路線の鉄軌道。隧道煉瓦をくぐり抜け、朽ち果てかけた橋渡る。森に喰われた茅葺き屋根と、花に埋れた農耕地。幼い記憶の底にある、誰も住まない村一つ。 #twnvday

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 長年探していた本をついにみつけた。幼い頃の愛読書で、いつのまにかなくして以来、長年古書店を巡り探していた本だ。巻末の余白には何人もの署名と感想に書かれており、先頭には私自身のものが書いてあった。久しぶりにじっくりと読んだ後、孫への贈り物にした。 #twnvday

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 「一生に一度お目にかかれば幸運」と噂の花を探してとある山里を訪れた。「この辺りでは普通の花なんですよ」と道案内の娘。「でも外の人は一度しか見られないかも」と言った娘の身体が花弁のように裂け、私を包み咀嚼した。その美しさを私は一生忘れないだろう。 #twnvday

おりひか いくお @Orihika

#twnovel ちょっとした、奇跡に出会った午後三時。街を歩いてすれ違う、30年ぶりの同窓生。呼び名は昔のあだ名のままに、思い出話に花が咲く。次に会うのはいつの日か、再開願い別れゆく。そして巡った30年、君は小さな壺のなか。 #twnovelOFF

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 子供の頃失くしたミニカーを取り戻すため、当時存在した全てのミニカーを、蓄えた資産で買い集めた。ある日『失せ物屋』で試し見た箱の中に、あのミニカーの姿がぼんやりと見えた。「コレクションと引き換えでいかが？」既に手中にある筈なのだ。しかしどれだかは分からない。私は…

おりひか いくお @Orihika

#twnovel ある所に勤勉温厚な翁と怠惰性悪な媼の夫婦がおりました。ある日媼が湖で溺れ、翁が慌てて駆け寄ると、女神が現れ言いました。「沈んだのはこの勤勉な媼ですか、それともこの心優しい媼ですか」「神様、余計な配慮はいいんで、うちの婆を返してください」「愛は深遠なのね」

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 貧乏だけど笑いの絶えない家庭でしたが、母が病に倒れました。僕は楽しいことがあると笑う代わりに「笑みログ」に貯め、「スマイルバンク」で換金して入院費にあてました。「ごめんね」「何とかするから、大丈夫」そうして母に笑いかける代わりに、また「笑みログ」に記録しました。

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 「きゃっ！」悲鳴が聞こえ女性が尻餅をついていた。妖怪・坂道転がしだ。こいつに出くわすと、坂道にいる限り転ばせられ続けるのだ。やばい目があった。僕は彼女の手をとって全力で逃げた。それが縁で結婚することになったので、坂道転がしを式に招待した。 #twnovelOFF

おりひか いくお @Orihika

#twnovel 旅館の子と友人になり、ネットで10年来の付き合いだ。「君んちは座敷童に会えるって？」「らしいね」「遊びに行ったら会える？」「運が良ければ」久しぶりに訪れた旅館に懐かしさを覚え、友人との再開を喜んだ。「よく来たね」「10年ぶりかな。会えて嬉しいよ」「君は運が良い」