第3回Twitter小説大賞応募作品まとめ

第3回Twitter小説大賞の応募作品をまとめたものです。
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17+1 @17plus1

その日、学校から神社公園までのかけっこで彼は一番だった。見つけた氷柱の大きさも彼が一番だったし、鳥居に決めたシュート数も一番だった。しかし同時に、かけっこは彼がビリだった。氷柱の大きさもシュート数もビリだった。彼はすこし考えて、ごめんの電話をしに一旦家に戻った。 #twnovel

2011-03-21 18:07:32
17+1 @17plus1

ある夜、デジタル腕時計が吸血鬼に咬みつかれた。時と分の間に鮮やかな跡。首は首でも手首をがぶりとやられたわけだ。それ以来彼も血が欲しくてたまらない。とうとう我慢できず、友人のアナログ目覚まし時計に襲いかかった。時刻は午前三時三十秒。アラームは九時に設定されていた。 #twnovel

2011-04-15 00:31:13
17+1 @17plus1

センサーというセンサーが誰かを待っている。地下鉄駅の音声案内。コンビニの自動ドア。大小さまざまなタッチパネル。愛玩動物を模したロボット。手と手を繋いだ二人の相性を測るおもちゃ。今しがた一陣の風が通り過ぎていったが、その程度では何一つ反応しない。ただ埃が動くだけ。 #twnovel

2011-08-13 02:16:21
17+1 @17plus1

あの日以来、大丈夫と打つたびに予測変換でV(^-^)Vが出てくる。なんとなく毎回そのままV(^-^)Vを添えるようになった。ケータイに誘導されている気がした。英語で話すとき自然と英語で話しやすい内容を話している、みたいな感じ。あの日は全然大丈夫じゃなかったのに。 #twnovel

2011-09-10 02:12:32
17+1 @17plus1

通販で買った睡眠学習教材のおかげで僕の成績はぐんぐん上昇した。今日のリスニングテストも楽勝だ。抜き打ちだからみんなは文句言ってたけどね。それにしても、ただ寝ながらテープを聴くだけなのにこんなに答えがすらすら浮かぶなんて信じられないよ。十五分も時間あまっちゃった。 #twnovel

2011-09-21 23:15:56
17+1 @17plus1

藍色のランドセルの坊やは今日も私に花束をくれる。年下過ぎるけど、まあ悪い気はしない。でも三度目にもなるとすこし心配になる。親に買ってもらったわけじゃないだろうし。盗品だったらどうしよう。「ねえぼく、この花束どうしたの?」「ひろった! いつも同じ道に落ちてるよ!」 #twnovel

2011-09-28 19:05:58
17+1 @17plus1

『おそれいりますが50円切手をお貼りください』は、おそらく世界でもっとも孤独な文章のひとつだろう。読まれたあとはそれきり切手で封されてしまうから。ひょっとしたら一度も読まれないかもしれない。だから僕たちは切手の裏にも文章をプリントすることにしたのさ。お友達だよ。 #twnovel

2011-10-18 01:31:24
17+1 @17plus1

百均のすみっこにある四角い回転棚。判子がびっしりつまってるやつ。あれの扉を全部開けて135゚くらいでガムテで固定する。それからしゃがんで、思いっきりぶん回す! 遠心力で飛び出す苗字の群れ。見とれてる時間はなく、私は右手を伸ばす。占いは迷わないことが大切だと聞く。 #twnovel

2011-11-10 00:29:07
17+1 @17plus1

僕の緑の声は真っ赤に見えると初対面で言われた。銀鼠と主張する彼女の声こそ僕には赤く見えた。やっぱり彼女は僕とは見える色が違っていた。共感覚者同士で一致しないって本にも書いてあったのに期待するのが悪い。二年間そう思っていた。披露宴のDVDで僕たちの声を聞くまでは。 #twnovel

2011-12-04 00:05:59
17+1 @17plus1

A子は自分がもうすぐ消えると分かっていた。主人公の名前が思いつかず、とりあえず物語を書き進めるために作者が用意した仮の名前、それがA子だったからだ。物語はとうに完成していた。A子は(その行でそう描写されていたので)目を閉じた。検索され、一瞬ですべてが置換される。 #twnovel

2011-12-05 21:36:08