追撃

読んで字の如し
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名無し整備兵 @seibihei

時代は下るが、「欧州大戦史の研究」第4巻第1編「追撃」では、「追撃を掣肘し渋滞せしむべき諸因」として、以下の要因を列挙している。

2013-04-11 00:17:43
名無し整備兵 @seibihei

1 敵軍退却により生ずる勝利の満足、2 心身の疲労、3 全局の状況不明瞭なること殊に兵団の担任せる戦闘或いは追撃行動が全戦局に対し如何なる地位にあり如何なる価値を有するやの判断を得難きこと、4 敵の抵抗、友軍との連絡断絶或いは友軍との連携に没頭すること 

2013-04-11 00:19:57
名無し整備兵 @seibihei

5 損傷及び隊伍整頓に拘束せらるる事、6 夜暗、7 天候、季節の交感、地形の障碍、編成装備の欠陥、8 敵の反対作用及び敵情の不明、9 補給、後方の状態

2013-04-11 00:21:42
名無し整備兵 @seibihei

最後の「9 補給、後方の状態」については、本文で「本件は追撃控制の主因となるもの」と書かれている。これは昭和4年の陸大での講義であるが、この時期でも補給についてしっかり教えている。

2013-04-11 00:25:26
名無し整備兵 @seibihei

ともあれ、これらの条件を考えると、既に惨烈な戦闘を行った部隊にさらに追撃を命ずるのは躊躇されても仕方ないだろう。モルトケは「追撃命令は戦場を離れて起案せよ」との言葉を残しているとか。しかし、一方で追撃発動の戦機を看破できるのは前線指揮官が最適だろう。

2013-04-11 00:32:11
名無し整備兵 @seibihei

もっとも、「欧州大戦史の研究」では「追撃の発動は第一線団隊より起こるべきことは主義として当然の事なり…然れども実際問題としては比隣友軍の通報により或いは後方にある高級指揮官の命令により追撃の発動を見ること決して少なからざるなり(続く)

2013-04-11 00:36:58
名無し整備兵 @seibihei

否、追撃の為有利なる決心即ち発動は後方より起こると称して過誤無きに似たり」とも書いている。モルトケの言は、それまでのフリードリヒやナポレオンの先例から、この「研究」と似たような結論に至ったのだろうか。

2013-04-11 00:38:49
名無し整備兵 @seibihei

また「追撃を成立せしむべき主要なる前提」として、「欧州大戦史の研究」では以下の3点を挙げる。「追撃移転時における軍(兵団)の態勢の有利優越なること」「上級指揮官が適時追撃に関する方針を部下団隊に示しこれが準備早く行わし而して開始せられたる追撃の初動が全局の状況に最も有利なること」

2013-04-11 00:46:53
名無し整備兵 @seibihei

「敵の退却を務めて速やかに察知し直に之に乗ずること」である。それであっても、特に敵の兆候の察知は非常な難事であることを次節で詳しく述べている。

2013-04-11 00:51:59
名無し整備兵 @seibihei

敵の兆候の把握も難事であるし、一方我が命令一下すぐに追撃に移るのも難事である。「研究」では、ここで「戦後の独逸の某戦術書に現れし追撃移転の一趨勢を紹介」している。

2013-04-11 00:57:46
名無し整備兵 @seibihei

要するに「準備命令をあらかじめ下達しておき、時期が来たら発動する」ことであり、「我が要務令によれば戒められあるところにして一面には大なる弊害あるべきも、追撃の出足を早くせんと努める独軍の欲求に対しては大いに共鳴せざるを得ず」としている。その後の影響については浅学にして未詳

2013-04-11 01:00:48
名無し整備兵 @seibihei

昨夜の「追撃」ネタで、面白い記述があったので書いてみる。出典は同じく「欧州大戦史の研究」

2013-04-12 00:53:09
名無し整備兵 @seibihei

追撃命令における敵情の書き方について「乾燥無味蝋を噛むがごとく敵情を羅列するのみには、疲労せる士卒を前方に駆る所以にあらざるべし。蓋し追撃の見込み十分なることを士卒の頭に印せざれば追撃に気乗りせざればなり。」

2013-04-12 00:55:43
名無し整備兵 @seibihei

「然れども事実以上に敵軍敗退の状を誇張して示す謂に非ず。是往々にして部下軍隊をして反撃の厄に遇わすことあればなり」

2013-04-12 00:56:37
名無し整備兵 @seibihei

「その命令の語気筆勢なるものは決して等閑に附すべからず。元来一般の場合には『絶対に』『猛烈に』等の字句を使用するは避くべきことに属す。蓋しこれを頻発するに従い受令者は慣れて感覚鈍くなるを以てなり。(続く)

2013-04-12 01:00:20
名無し整備兵 @seibihei

然れども追撃において最後の一息というが如き場合には激励叱咤の字句を使用するに躊躇すべからず。」

2013-04-12 01:00:31
名無し整備兵 @seibihei

「慣れて感覚鈍くなる」は、太平洋戦争中期以降の命令を見ると、また思うところがあるかもしれない。

2013-04-12 01:03:50
名無し整備兵 @seibihei

「追撃においては軍隊は半途の成功に甘んじ任務の第一段は既に果たせりと為しかつ非常に疲労するものなり。故にこれを駆って上記過激の追撃行動に従わしむるには機会を求めてその気勢を高め指揮を作興するに配慮するところなかるべからず。

2013-04-12 01:07:00
名無し整備兵 @seibihei

追撃成功の見込み大なること、殊に捕虜、鹵獲戦利品の収穫、敵国都市への入城占領等は疲労せる追撃者に対する大なる魅力なり。故に非文明違法にならざる限り機会を求めてこれらの魅力を巧みに利用すること将帥の忘るべからざるところなり」

2013-04-12 01:08:41
名無し整備兵 @seibihei

「追撃者と雖も退却者にして反転攻勢を取り来る時は恐怖の念に打たれ追撃の鋭鋒鈍り易し。然れども敵がこの挙に出るは明らかにその後方の混乱、退却の渋滞を表明するにあれば、追撃者はこの種状況を消極的に考えず、寧ろ却って敵を捕捉するの見込み大なるを思い決して追撃行動を鈍らすべきに非ず。」

2013-04-12 01:12:15
名無し整備兵 @seibihei

「優勢の敵に対する攻撃…等に於いてその困難にして緊張せる戦闘経過中敵が退却を開始せるが如き場合には『敵兵退却』につき欣喜雀躍し追撃を一息つきたる後に想起するが如き心理に陥り易し。…吾人は此の如き安心喜悦に陥り追撃に死節時を生ぜしむるが如きこと万々之無きよう修養を要す。」

2013-04-12 01:16:01
名無し整備兵 @seibihei

「正面の追撃団隊は敵の抵抗に会するや比隣友軍の攻撃進捗を期待し自己の攻撃往々熱心ならざること既述の如し。諸官は此の正面追撃団隊が敵さえ見れば時と所とを問わず所謂齧著攻撃を企つるに於いては敵の退却に脅威を感ぜしめ持って全局の追撃を効果あらしむることに着眼せざるべからず。」

2013-04-12 01:19:25
名無し整備兵 @seibihei

「所命の目標に達せば任務を果たせりと為し軍隊を直に休宿せしめんとするは指揮官の陥り易き通弊なるが如し。此の故に追撃団隊にして日没前所命の目標に到達することを予想し得るに至らば前もって高級指揮官にこの予想を報告し目標到着後における高級指揮官の新企図に応ずるの着意を必要とす(続く)

2013-04-12 01:22:06
名無し整備兵 @seibihei

要すれば積極的に独断すべし。」

2013-04-12 01:22:46
名無し整備兵 @seibihei

「戦場においては情報は適時司令部に到着せず。追撃命令が幾度か変更せらるるは其の常態なり。故に…高級指揮官のこの決心変更につき不平を漏らすべからず、却って命令の変更頻繁なるに従い軍隊は益々機敏に行動せざるべからざる戦況なるを思い、依然として之に従い奮励する所なかるべからず。」

2013-04-12 01:25:04