友野詳氏の「シャハルサーガ 第3部」 ストーリー版

友野詳(@gmtomono、連載は@syahalsaga)氏によるルナル世界を舞台にした新作Twitterノベル「シャハルサーガ 第3部」のまとめです。 こちらは「採用された物語」だけを纏めて、ストーリーを追いやすくする事を目的としたリストです。 「採用されなかった選択肢」なども含めて全てを読まれたい方は、 http://togetter.com/li/488909 をご覧下さい。 第2部 全部入り:http://togetter.com/li/460078 続きを読む
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シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

少女は、後宮をさらに奥へと進んだ。後宮に牢獄はない。だが、牢獄同然に、人を閉じこめることができる部屋ならある。その頑丈な扉も、警護官の腰から奪った鍵があれば、あっさりと開いた。 「こんにちは、ユーディア。あたしが来たよ。待ってた?」 #シャハル3 132

2013-05-29 23:17:09
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

その少女が入ってきた時、ユーディアは、気絶しそうなくらい驚いた。なぜなら、ひとふさの髪をのぞいて、少女の姿は、彼女とそっくりだったからだ。少女が口を開く。 「あなたに会うまで、わたしもユーディアだと思ってたんだけど、やっぱり会うと違うわね。名前、欲しいな」 #シャハル3 133

2013-05-29 23:18:10
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

#SSG選択 「でも、それは後ね。ここを逃げて、アリクに会ってから、彼にもらいましょう」 「……なぜ、あなたが……アリクを知っているの」 「うふ、どうしてかな。それも、後でね」 ユーディアの質問に少女は答えない。廊下に出るよう促してきた。 #シャハル3 134‐B

2013-05-29 23:20:09

第3部 第8夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「今なら誰もいないの。さあ」  少女が、ユーディアの手をつかんで、ぐいっとひっぱった。 「……だめ」  ユーディアが、少女の手首をつかんで、ぐぐいっとひっぱり返した。 「アリクのこと……なんで……知ってるの……?」    ジェラシー色の上目遣い。 #シャハル3 135

2013-06-28 23:10:59
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「ジェスタのハンマーで殴っても動かない感じなの、ね」  少女は、困ったように笑った。  もちろん、ユーディアは、そんな笑いでごまかされたりしない。 「アリクの名前……言った時……あなた……うれしそうだった」  睨む。 #シャハル3 136

2013-06-28 23:11:35
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「あのね、ユーディアちゃん。その決着は、わたしもつけたいの、なの。でも、いまはね」  少女が、ユーディアの手の甲をなでたその時、廊下から大勢の走り寄る音が聞こえた。 「あーあ。ユーディアちゃんのせいなのよ?」  少女の髪が、蛇のように鎌首をもたげた。 #シャハル3 137

2013-06-28 23:13:37
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「……それ……?」  独立した生き物のように動く少女の髪を見て、ユーディアは、はっと表情を変えた。  その動きに、何か不吉なものを感じたのだ。  ユーディアは、少女の手首をつかんでいた指を広げ、あらためて、うごめく髪を握りしめた。 #シャハル3 138

2013-06-28 23:14:43
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「おい、キラキラ目、なぜ扉が開いておる!」  島の王子の声が聞こえたのはその時だ。  同時に、部屋の扉が押し開かれ、屈強なドワーフの女性兵士がなだれこんできた。王子の姿は、兵士たちの向こうにあって見えない。 「王子! あの娘が二人に増えております!」 #シャハル3 139

2013-06-28 23:15:30
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「されど一人は髪がさらに長く」 「我らの与えたものとは異なる衣装をまとい」 「黒い短剣をたずさえております」  女性兵士たちが、きびきびと報告する。 「では、そちらが入りこんできた娘だ」  バニヤンの王子の声は、相変わらず、兵士の壁の向こうからだ。 #シャハル3 140

2013-06-28 23:16:25
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「おまえは私を殺したつもりだったろうが、多少の毒など、鍛え上げたこの肉体には効かぬ」  一人の女性兵士が、ずいっと進み出た。  殺したつもり、という言葉を聞いて、ユーディアは、自分そっくりの顔をした少女に顔を向け、黄金色の目を大きく見開いた。 #シャハル3 141

2013-06-28 23:17:25
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「あのひと、間違ってるの」  少女は、ユーディアの視線を受け止めて、にっこりと笑った。 「ほらこれ。グーラーの爪なの。死なないよ。しびれるだけ」  兵士たちが黒い短剣と形容した、毒を帯びた鉤爪を、少女は、ひらひらとふり動かした。 #シャハル3 142

2013-06-28 23:18:20
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「とどめ、刺さなかったでしょ?」  少女が、にこりと笑いかける。 「たしかに、それはその通りだが……」  刺された女性兵士が、呻くように応えた。 「であるがゆえに、命は助けよう」  他の兵士たちが、次々に戦闘網をかまえた。法の神ガヤンの信徒が使う武具だ。 #シャハル3 143

2013-06-28 23:19:23
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「ほらあ、戦いになっちゃうぅ。ユーディアが素直に逃げてればよかったの」  少女が、イヤイヤする赤ん坊のように首をふる。 「……どうせ……すぐに囲まれてた。……それより……なんでアリクを知ってるの」  ユーディアは、身構えた兵士よりそちらが優先だ。 #シャハル3 144

2013-06-28 23:20:26
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「ユーディアちゃん、やきもち、すっごいのね。アリクが見たら、どう思うかなの」  からかうように少女が言うと、ユーディアは、顔を真っ赤に染めた。 「見てないから……怖くない……もの」 「こりゃ、貴様ら! 余を放置するでない! 余はバニヤンの王なるぞ」 #シャハル3 145

2013-06-28 23:21:35
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

 ドワーフの王子が激昂しているちょうどその頃、広い海をへだてた島で……。 「おい、若僧。これ、なんだと思う?」  たまたま出くわした遺跡の奥で、モッガン船長とアリクは、思わぬものに出くわしていた。 「オレ、若僧ですか、船長。坊主や小僧から昇格ですね」 #シャハル3 146

2013-06-28 23:22:06
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「こいつの正体を教えてくれたら、名前で呼んだらあ」  モッガン船長は唸った。  人間が掘ったものではない地下道の奥、広大な空間にそれはうずくまっていた。  すえつけられる、ではなく、うずくまる、という印象だ。でかい。 「……生き物……って気がします」 #シャハル3 147

2013-06-28 23:23:02
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「いまごろ、アリクが何をしてるかはわかんないけど、あなたのこと忘れてるかもしれないよ」  くすくすと少女が笑うと、ユーディアは、ますます顔を赤くした。 「アリクはいつもいつも、私のことを考えてくれてるもの!」  言葉がスムーズに出てきた。 #シャハル3 148

2013-06-28 23:24:04
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「だーかーらー、余を無視するなと言うておるのだ!」  王子がいらだった声をあげると、女性兵士たちが動いた。投げかけられたガヤンの網が、少女を捕らえ、引きずり倒した。 「素直にひざまずけばよいものを」  王子が、兵士の間から、ようやく姿を見せた。 #シャハル3 149

2013-06-28 23:25:08
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「ほほう。本当にそっくりじゃな。よし、おまえのことはシーニアと呼ぼう。大昔の言葉で、鏡を意味する言葉じゃ」 「……意味は気に入らないの。でも、わたしだけの名前は、悪くないの」  少女は、複雑な表情でうなずいた。 #シャハル3 150

2013-06-28 23:25:40
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「……その子をどうするの……?」  ユーディアは、王子に尋ねた。彼女には網はかけられていない。 「よきオモチャであるな」  王子はけろりとした声で言った。  ユーディアは、表情をこわばらせたまま、シーニアと名づけられた、自分と同じ顔の少女を見た。 #シャハル3 151

2013-06-28 23:26:33
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

『平気よ』  シーニアの瞳はそう言っている。網からはみ出したシーニアの髪を、ユーディアはまだ握っている。それが、ぴくりと動いた。  すると、ユーディアの髪もまた、動いたのだ。  彼女たちの黄金の瞳が、ぎらりと光った。 #シャハル3 152

2013-06-28 23:27:11
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

#SSG選択  バニヤンの地の底深く。  檻に閉じこめられていたマガナックが、身を起こした。  その時、魔獣は、確かにユーディアの声を聞いたのだ。そして同時に、みずからのうちに力があふれるのを感じていた。  友を救うに足る力が。 #シャハル3 153‐A

2013-06-28 23:28:13

第3部 第9夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

黄金の力。そんなものが自分たちの内側に秘められているなどとは、ユーディアはその時まで、まったく知らなかった。ユーディアだけではなく、シーニアにとっても、それは予想外のできごとであったらしい。 #シャハル3 154

2013-07-11 23:28:35
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