友野詳氏の「シャハルサーガ 第3部」 ストーリー版

友野詳(@gmtomono、連載は@syahalsaga)氏によるルナル世界を舞台にした新作Twitterノベル「シャハルサーガ 第3部」のまとめです。 こちらは「採用された物語」だけを纏めて、ストーリーを追いやすくする事を目的としたリストです。 「採用されなかった選択肢」なども含めて全てを読まれたい方は、 http://togetter.com/li/488909 をご覧下さい。 第2部 全部入り:http://togetter.com/li/460078 続きを読む
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シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「なんなの、これ? すごいの! きもちいいの!」 #シャハル3 155

2013-07-11 23:28:43
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

シーニアが歓喜の声をあげる。その瞳から黄金の光があふれていた。彼女の髪は、独自の命を持つかのように踊り、舞い、同じ顔を持つもうひとりの少女に巻きつき、服の下までもぐりこんで、その体をまさぐっているのだった。 #シャハル3 156

2013-07-11 23:29:11
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

一方のユーディアの瞳からも、黄金の光は、ほとばしっている。実体を持つかのように部屋を満たしてゆくのだ。けれど、ユーディアの表情は、歓喜よりも、戸惑いと恐怖の色が上回っている。彼女は、自分の髪が勝手に動き出すという、はじめての経験に怯えていた。 #シャハル3 157

2013-07-11 23:29:51
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「……なに……これ? むずむず……する。おさえ……られない」 #シャハル3 158

2013-07-11 23:30:01
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

ユーディアの髪も伸びて、シーニアと彼女をつなげている。先端が繊細な動きを見せて、互いの肌に触れる。そこから伝わってくる感覚は、暑い湯がしみとおってくるようであり、夏の陽光に肉体が溶けてゆくようでもあった。 #シャハル3 159

2013-07-11 23:30:41
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

恍惚とも快感とも違うが、満たされるような感覚は確かにある。それをシーニアは喜ばしく感じ、ユーディアは恐れた。満たされ、そしてあふれた何者ともしれぬ力は、行き場を求めて荒れ狂い、壁にひび割れを生じさせ、家具を砕いた。だが、二人の少女は、それにすら気づけない。 #シャハル3 160

2013-07-11 23:31:10
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「こやつらは……! 打ち殺せ! 砕け!」と、親衛隊の指揮官が命令をくだした。それに答えて、ドワーフの女戦士たちが、巨岩も砕くハンマーをふりかざす。彼らが崇めるジェスタは、境界線を守護する神だ。だが、だからこそ間違った壁を破壊する力も授けるのだ。 #シャハル3 161

2013-07-11 23:31:53
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「待て、待て。おもしろいではないか。乙女の未熟な体をまさぐる無数の髪。めったにない見ものだ」  ……いまだ少年と呼ばれる年齢でありながらこの言葉。あまりといえばあまりなと、自分たちの王子に、女戦士たちが呆れた目を向ける。 #シャハル3 162

2013-07-11 23:32:35
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「この黄金の光は、遠い昔の記録にあるものと似ておる。清き乙女、その髪にて我が身に隠されし力を探る……。我が家にのみ伝わる『マゴラ南山探』の欠けなき写本の記述。おそらくは……暁の大陸に由来する力じゃな。二百年前にあらわれたという〈黄金の姫〉の……」 #シャハル3 163

2013-07-11 23:33:25
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

幼き王子が滔々と述べる学識あふれる言葉に、一転、女戦士たちが驚愕の表情を浮かべる。隊長のみは、あるじのその才能を心得ていたのか、深くうなずいていた。が、尊敬の表情を、すぐに警戒のそれに変わる。黄金の光が、実体あるもののように、ベッドを押し潰したのだ。 #シャハル3 164

2013-07-11 23:33:49
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「王子、おさがりください。危なうございます」 「それはよいが……。こやつらの力、鉱物が枯渇しかかっている我がバニヤンには必要なものだ」 「……まさか王子、これを知って、あの娘を? ……ともかく退治ではなく、確保を……」 #シャハル3 165

2013-07-11 23:34:47
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「まだだ。写本の記述に従ってものごとが起こるか、それを見極めるまで……」 王子が、欲望ではなく野望でぎらつく目で、服がはだけかけた、同じ顔をした娘たちを見つめた。その時だ。部屋の床が、粉々に砕けた。 #シャハル3 166

2013-07-11 23:35:17
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「なにごとっ!?」「怪物!」「巨大な虫が!」「バカなっ、虫ごときの爪で、厚み数メートルの岩がえぐられるものかっ!」「あれは……鎌だ! 〈異貌の神〉か、あるいは〈龍〉か!」 #シャハル3 167

2013-07-11 23:35:26
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

もちろん、そのどちらでもない。アリクの相棒マガナックだ。巨大なカマキリに似て、動物としては非常に高い知性を持つこの種族は、砂漠では魔獣と呼ばれ、敵対者に恐れられている。だが、いまや、真に魔獣と呼ぶにふさわしい姿になっていた。 #シャハル3 168

2013-07-11 23:35:42
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

そのサイズは、これまでのおよそ倍以上。深い緑に輝いている。両腕の鎌は、黄金の輝きを帯びて。すさまじい切れ味だ。マガナックは、ユーディアの首根っこをくわえた。彼女は、あふれる力に翻弄されて、我を忘れている。忘我の境地で動けない。 #シャハル3 169

2013-07-11 23:36:30
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

ユーディアとシーニアは、互いの髪で結ばれあっている。多少ふりまわしたくらいで、離れそうにはない。しかも、どちらも言葉が耳に届かない状態だ。届くとしても、マガナックは話せないけれど。 #シャハル3 170

2013-07-11 23:36:56
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「ひるむな! この怪物に、バニヤンの希望を奪われてはならぬ!」という隊長の命令一下、女戦士たちがハンマーで打ちかかった。あるいは、法の神ガヤンに授かった、刃砕きの秘剣をかまえて。これならば、マガナックの強化された鎌も恐れるものではない……はずだった。 #シャハル3 171

2013-07-11 23:37:14
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

ぶおおおおおおんという音と共に、暴風が室内をあれくるった。マガナックが、その羽をすさまじい勢いで震わせたのだ。女戦士たちは、一瞬で吹き飛ばされた。間髪を入れず、マガナックは鎌をふるった。壁が砕ける。台地が蹂躙され、陵辱され、青空に通じる穴が貫通した。 #シャハル3 172

2013-07-11 23:37:56
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

マガナックが、ぶるんと首をふるって、二人の娘を背に乗せた。 「待て! 我がもとから去るな! おまえたちのその力の秘密を……!」 王子が叫んだ時、さらにあふれた黄金の光が、ついに球体となって魔獣と娘たちを包み、そしてまたたく暇すら与えず飛び去った。 #シャハル3 173

2013-07-11 23:38:48
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

モッガン船長とアリクは、巨大な像の前に立っている。像というのだろうか。それは、刻々と姿を変えている。液体金属とでも呼ぶべき、奇怪な物体だった。それが突如として、宙に浮かび円環となった。黄金の光があふれる! #シャハル3 174

2013-07-11 23:39:11
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

#SSG選択 「なんだ……!」アリクは、あまりのまぶしさに目を覆った。その輝きがおさまった時、液体金属はどろりと広がる水たまりになり、その真ん中に、一人の少女が浮かんでいた。マガナックの羽をそなえ、鉄色と白銀と青銅の髪を持った、一人の少女だ。 #シャハル3 175‐A

2013-07-11 23:39:27

第3部 第10夜

シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

「……ユーディア?! なのか、本当に?」 「あの娘っこに見えるがな。あんな羽、はえてなかったんじゃねえのか? てことは、おめえ、だまされんな。ありゃあ、なんかの化け物に違いねえ」 「え? 船長?」 #シャハル3 176

2013-08-21 20:16:50
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

アリクが混乱して動けないでいるうちに、船長が、ずかずかと近づいていった。大きな足をふりあげて、倒れている少女の頭を踏みつけようとする。 「船長ーーーーーッッッ!」 #シャハル3 177

2013-08-21 20:17:07
シャハルサーガ/アローディア @syahalsaga

アリクは飛び出したが、持ち上げた足を思いきり振り下ろすより早く、十数歩の距離を縮められるわけがない。アリクは、モッガン船長が、頑丈な木箱を踏み潰すのを見たことがある。腹のいちばん底から這い上がってきた絶望が、アリクの心臓を握りつぶす。 #シャハル3 178

2013-08-21 20:17:39
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