魔鏡は禁域に眠る
酔宵堂
@Swishwood
その橋を渡った途端、空気がまるで違うと感じる。流石に「禁城」とはよく云ったものだ。彼女の差配でここまで来たが、一体何があると云うのか。「車はここまでです。普段は入れるとこじゃないんですけどね」男はそう云い、ドアを開けた。「こっちの突き当たりです」建物の奥に、ソレはあるのだと云う。
2013-04-22 03:21:46
酔宵堂
@Swishwood
行き当たった扉を開くと掃き清められた玉砂利がさざ波のように広がる一画に出る。林を背にして、小さな祠のような建物があった。ここに来るまでほぼ扉ごとに何らかのセキュリティがあったことからすれば、よほどの何かが収められているのだろうか。「こちらです」
2013-04-22 03:27:37
酔宵堂
@Swishwood
「"八咫鏡"の原型みたいなモノなんですよ」「原型? オリジナルではなくて」そんな話は、聞いたことがない。「勿論、秘中の秘ですから。これからお見せするのは"たまきのおほかかみ"と呼ばれているものです。字は」と云って、書いたメモを渡された。そこに記された字はこうだ——「円環大鏡」。
2013-04-22 03:35:38
酔宵堂
@Swishwood
ならば、その意匠に想像はつく——いや、見るまでもなく確信出来る。かつてのいつか、わたしの左手にあったと云う、あの円盾に違いない。それが何故、ここに。「それは——こんな」と、メモに描き添えて返す。「……まるで見たことがあるみたいだ。どうして、これを」「わたしの……半身でしたから」
2013-04-22 03:44:44
酔宵堂
@Swishwood
それほど長く歩いた訳ではないだろう。だが、ひとつ角を曲がるたびに左手が疼く。ふっと意識が途切れそうな眩暈さえ、する。「これは、間違いなく……この通路の」「……顔色が優れない。どうしました」「ええ、いえ……だいじょうぶ」な、ものか。それはつまり、並大抵の呪的防御ではない証だった。
2013-04-22 04:39:55