牧眞司の文学あれこれ その4

「牧眞司の文学あれこれ その3」の続きです。 http://togetter.com/li/364987
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

じつは『富士日記』だけは、まだ読んでいない。だって、これ読んじゃうと、もう未読の武田百合子はなくなっちゃんだもの。いや、何度でも読み返せばいいのだけど。ちょっと感傷的に、『富士日記』はこっそり楽しみに取ってある。

2013-05-02 18:34:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

梅崎春生『桜島 日の果て 幻化』(講談社文芸文庫)を読んだ。4篇収録のうち、なぜか本の表題に入っていない「風宴」が傑作。これが梅崎のデビュー作なのだという。

2013-05-06 20:19:19
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

大学を卒業しても職に就かず貧乏のまま徒然に暮らしている男が語り手で、おなじような境遇の友人(ちょっとした怪人物)を訪ねたところ、ちょうどその下宿屋の娘が亡くなったところで、なりゆきでその通夜に参加することになる。 ――というのが、「風宴」のあらすじ。

2013-05-06 20:19:45
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

できごとはすべて日常なのだが、主人公を流していく動きがそのはかとなく不条理。流していくといっても強い力ではなく、ふつうに考えれば押し返させるのだけど、なんかそうしにくいというか、押し返すほどではないから従ってしまって、なんでオレはこんなところにいるんだろうと途方に暮れる。

2013-05-06 20:20:23
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「風宴」は文章も独特だ。 〔電線をふるわせて風が吹いて、赤門前に散らばった数知れない銀杏の落葉が一せいにがさがさと奔った。恐ろしい速力で左へ右へと動き廻る。数千匹の黄蟹が何者かに追われて必死に逃げまわるように、私の酔眼にうつって来た。今宵は蟹のお祭りだ。今夜は風の宴だ。〕

2013-05-06 20:21:23
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

抜き書きするとちょっとやりすぎな表現にみえるが、情景の遷移のなか、描写の抑揚のなかに、こうした激しい言葉のつらなりがあらわれると、目をひっぱたかれた気持ちになる。

2013-05-06 20:22:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『桜島 日の果て 幻化』のうち、「幻化」は精神病院からこっそり抜け出した患者が主人公。これも面白い作品。

2013-05-06 20:28:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

しかし、このところ色川武大といい武田泰淳といい島尾敏雄といい、こんかいの梅崎春生といい、神経を失調した者の話ばかり読んでいるなあ。偶然なんだけど。それとも日本文学の注目作にはそういう系譜があるのか。

2013-05-06 20:34:47
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼくの『アサイラム・ピース』書評http://t.co/otUwvBnXRj、小谷真理さん(@KotaniMari )に叱責をいただき、真摯に考えたのだけれど、もしかすると誤解を招く表現があったかもしれません。 (続く

2013-05-08 12:54:35
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼくが〔これらの作品をフェミニズムの文脈で読むのはたやすい〕と書いたのは、フェミニズム批評が安易という意味ではなく、フェミニズム的な要素をあの作品に見いだすのが安直という意味でもありません。 (続く

2013-05-08 12:55:09
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

むしろまったく逆で、あの作品をカテゴライズするなら第一にフェミニズム文学ということになるだろう、それは多くのひとがわかることだ――という意味です。この文章のなかでは、ぼくはまったくフェミニズム文学に対してもフェミニズム批評に対しても価値判断をしていません。 (続く

2013-05-08 12:55:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

というか、フェミニズム文学というのはたんなる分類にすぎず、フェミニズム批評理論そのものはたんなるツールなので。 (続く

2013-05-08 12:56:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その次の文章、〔登場人物を抑圧しているのは家父長的な因習であり、それをカヴァン自身の生涯と重ねてみせるのは、手軽な文芸批評の練習問題のようなものだ〕も、フェミニズム批評全般のことを言っているのではありません。 (続く

2013-05-08 12:56:50
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

簡単にいえば、どこかの軽薄な者(たとえば、ぼく)が、『アサイラム・ピース』のフェミニズム要素に注目してカヴァンのバイオグラフィーに重ね合わせた読解をしたら、それは安易な文芸批評にしかならないってだけのことです。 (続く

2013-05-08 12:57:46
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「フェミニズムの考えかた」はたんなるツールなので誰にでも使えるわけです。上手く使えるかヘタクソかはそのひと次第ですが。 (続く

2013-05-08 12:58:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

あの書評のなかで、ぼくは、フェミニズムを、自民党やAKB48のようなメンバーの限られた党派や集団として扱っていません。フェミニズム批評学派みたいなものがあるかどうかは知りませんが、あったとしてもそういう方々を軽んじているわけではないのです。 (続く

2013-05-08 12:58:24
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

もちろん、小谷さんが言うようなハラスメントの意図はまったくありません。ツールを下手に使う人間を軽んじているだけで、ツールそのものを馬鹿にしているわけでも、特定の党派・集団を侮っているわけでもありません。 (続く

2013-05-08 13:03:27
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ただし、ハラスメントというのは、こちらがまったく予期しなかった相手であっても、そのひとが不快に感じることが問題になる場合もあるわけで、その点は今後大いに弁えていきたいと思っております。 (続く

2013-05-08 13:04:38
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

みなさまから御助言をいただけば謙虚に受けとめ、今後の参考にさせていただきたく存じます。

2013-05-08 13:04:53
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

意を尽くしてご説明さしあげたつもりでしたが納得していただけず誠に残念です。お寄せいただいた疑義について、ひとつひとつ応答しようと思ったのですが、小谷さんの身構えから察するに平行線になるばかりだと断念しました。 @KotaniMari @orionaveugle

2013-05-08 22:07:31
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

どうご説明しても、テクハラ、男根主義、脊髄反応的スルーだ――と撥ねつけられてしまうのでは、コミュニケーションが成りたちません。攻撃的にならず、相手を「オマエはこういうヤツだ」と決めつけず、話しあうことはできないのでしょうか。 @KotaniMari @orionaveugle

2013-05-08 22:08:11
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

藤井太洋『Gene Mapper -full build-』(ハヤカワ文庫JA)読了。ツカミはバチガルピ、展開はテクノスリラー、後半にちょっとイーガン「しあわせの理由」を思わせるガジェットがあり、要所にエンタメのけれんがピリっときいている。これがデビュー作とは。構成力があるね。

2013-05-08 23:47:11
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ケネス・オッペル『フランケンシュタイン家の双子』(創元推理文庫)読了。メアリ・シェリーの古典の前日譚という趣向で、青年期のヴィクター・フランケンシュタインが主人公。彼には双子の兄コンラッドがいて、ヴィクターは屈折した愛着と羨望を抱いていた。

2013-05-09 18:05:57
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

この双子のあいだに美しい少女エリザベスが割りこみ、物語は開幕から緊張を含んでいる。やがてコンラッドが深刻な病を得たことで、事態は急展開を迎える。その治療のためヴィクターは禁断の錬金術(フランケンシュタイン家に伝わる文書から掘り起こされる)に手を染める。

2013-05-09 18:06:58
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

錬金術がひきがねになったのか、あるいはもとからの宿命なのか、ヴィクターの兄に対する感情はそれまでとまったく違うものへと変質する。ここで一気に、シェリー作品とも共通するサイエンス・フィクションの主題が浮上するのだ。

2013-05-09 18:09:00
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