ぼくがかんがえた至近未来的公安9課・2

「ぼくがかんがえた至近未来的公安9課」(http://togetter.com/li/496405)の続編。統一朝鮮過激派核廃棄物爆弾テロに立ち向かうCTUのみなさん。俺得。
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現場猫教授 @Dr_crowfake

「コリアン・リパブリカン・フォースか。どう思うね桐島くん」上津の問に桐島はよどみなく応えた。「朝鮮半島の統一後、経済格差とイデオロギーの順応不能によってあぶれた国民は多くいます。彼らが「真の共和国」を求めて韓国や日本でテロを起こす可能性は高いでしょう」上津は眉をひそめる。

2013-05-02 03:39:44
現場猫教授 @Dr_crowfake

「問題なのは、彼らが南北朝鮮の経済格差に対する憤懣を韓国政府ではなく日本にぶつけることです。朝鮮半島分断の責任は日本にあり、故に日本は相応の倍賞を支払うべきと、彼らは真剣に考えています」「なるほど」上津はガラムを吹かした。「その手段が、テロリズムか」「はい。最も顕示的な行動です」

2013-05-02 03:44:00
現場猫教授 @Dr_crowfake

「実際のところ、私は南北分断のコストを支払うべきだという派閥に属していてね。米国の引いたラインの上で彼らが殺し合いをしたのはさておき、治安維持の観点からはそのように思える。だが、あいにく私は警察官僚に過ぎなくてね」「それを主張されるならば、議員選挙に立候補されるべきでしょう」

2013-05-02 03:47:05
現場猫教授 @Dr_crowfake

「君の云うとおりだ桐島くん。だが、私はやらねばならんことが多すぎてね」「例の、KLFの日本潜入の件ですか。有坂にも表せていますが、今回は荒事になりそうです」「秋山くんは大喜びだろうな」「彼は血の気が多過ぎます」「しかし決意性の高いセル相手に血の雨は避けられんだろう」「そうですね」

2013-05-02 03:51:34
現場猫教授 @Dr_crowfake

そしてそのころKLF(コリアン・リパブリカン・フォース)の日本潜入セルは、大胆不敵にも「東京でムクゲの花を咲かせる」と犯行予告声明をしてきたのだ。それをきき、桐島理事官は青ざめた表情で上津に云う「彼らは核廃棄物爆弾を入手している可能性が高いと、我々捜査班は認識してます」

2013-05-02 03:54:57
現場猫教授 @Dr_crowfake

「フクシマどころの話ではないな。だが、それで奴らの狙いどころは絞り込めるはずだ」「はい。東京の首都機能を司る霞ヶ関をフォールアウトで汚染できる地域、そこに彼らはいます」「では捜査を遂行しろ。関係各所との連絡を密にしてだ」立ち去る桐島を尻目に、上津はガラムを吹かす。

2013-05-02 03:57:49
現場猫教授 @Dr_crowfake

「彼らの目的は日本の首都機能壊滅だけなのか? それとも他に、明確な目的があってのことなのか?」上津はガラムをくゆらせながら考える。「日本の政治よりダメージが大きいのは日本経済……麹町の取引市場攻撃がダイレクトだ」そう判断した上津は、携帯で桐島・秋山に連絡を取る。

2013-05-02 04:03:06
現場猫教授 @Dr_crowfake

「敵は東京証券取引所の攻撃を狙っている。範囲をその周辺に絞り込め。麹町から移転したとはいえ、皇居に近い。二重の衝撃を日本に与えうる」そのように云う上津に対し、桐島は「私も直感的には同意できますが、根拠は?」と問う。それに対して上津は「俺が奴らならそうする」とだけ答える。

2013-05-02 04:09:45
現場猫教授 @Dr_crowfake

「課長らしいお言葉ですね……」桐島はその地域での目立った朝鮮人の活動がなかったか、核廃棄物爆弾の制作に必要な場所がないかを全力で捜査することとする。有坂からは「目標を絞りこみ過ぎではないですか?」と苦言を呈されるが「いやここで間違いない。部長でなくても、私ならそうする」と云う。

2013-05-02 04:14:32
現場猫教授 @Dr_crowfake

桐島の指導のもと有坂班は目標の絞り込みに成功するが、いまだいくつかの要点に分かれていて突入できない。そこで有坂は気づく。「地下搬入路があれば、耳目を立てずに資材を搬入できるのでは?」と。それによりジオフロントの構造と検証した結果、ひとつの建物が目標として浮かび上がる。

2013-05-02 04:18:22
現場猫教授 @Dr_crowfake

ここに至り神津課長は裁判所から令状を取り、秋山理事官とその配下の強化武装による突入班をホンボシのいると思われる廃工場へと突入させる。先頭を切るのはもちろん鹿島突入小隊長だ。彼らは装甲強化装備で目標へと突入し、そこで核廃棄物爆弾の最終調整を行なっていたテロリストを一網打尽にする。

2013-05-02 04:23:58
現場猫教授 @Dr_crowfake

鹿島とその部下たちの保有する装備は拳銃弾など簡単に弾く重装甲を人間がまとうために生み出された人工倍力装置である。肉体の動きに俊敏に反応するフレームの上に重装甲をまとい、そのような敵に対しても十分な火力を所持する部隊。その前ではテロリストは徒手空拳に等しかった。

2013-05-02 04:27:26
現場猫教授 @Dr_crowfake

ヒトラーズバズソーと仇名された7.92mm弾がテロリストたちを八つ裂きにする。テロリスト側も相応の準備はしており、アンチマテリアルライフルなどで反撃してくるが、掃射力の前に無様に倒れるほかない。そして鹿島はターゲットに行き着いた。核廃棄物爆弾。だがそのスイッチはすでに入っている。

2013-05-02 04:30:16
現場猫教授 @Dr_crowfake

「おい秋山、これどうやって解除するんだ」「捕虜を尋問しろ」「抵抗が激しすぎたんで全員殺っちまったよ!」「班員に爆弾解除のプロがいるだろ、そいつ次第だ」「おい!」鹿島の叱咤で、突入班後方にいた小柄な少女が前に出てくる。「お前さんは万が一の保険だったが、ここで効くとはな」「アッハイ」

2013-05-02 04:33:01
現場猫教授 @Dr_crowfake

少女は見かけによらない過激派上がりで、爆弾制作のプロフェッショナルだ。司法取引と引き換えに、上津が鹿島に貸し与えた「資産」だ。その彼女は震える手で核廃棄物爆弾の解体作業に従事する。「ええっと、これを切れば……いやそうすると安全装置が作動して爆発」「早くしろ!」鹿島も焦っている。

2013-05-02 04:36:12
現場猫教授 @Dr_crowfake

「わ、わかってます」震える手で回線の巡りを探る少女。ふと、その肩に鹿島の掌がかぶさった。「済まなかったな、さっきは怒鳴って」「いえ、そんなこと」頭を振る少女に、鹿島は言う。「こいつが爆発したら俺らは一蓮托生だ。日本とか世界とかどうでもいい、俺らの命、あんたに預けた」少女は頷いた。

2013-05-02 04:39:18
現場猫教授 @Dr_crowfake

鹿島の言葉が少女に届いたかどうか判らない。だが、少女は切るべき回線を探り当て、それをニッパで勢い良く切る。秒針は「007」で止まっていた。「殺しの番号かよ、洒落にならんな」鹿島は笑い、少女に云った。「あんたに命を預けてよかったぜ。よろしくな」「えうっ」少女は恥ずかしげに頷いた。

2013-05-02 04:43:44
現場猫教授 @Dr_crowfake

「んで? 被疑者は全員射殺、聴取できなかったと」上津は課長室でガラムを吹かしながら呟いた。「はい、もうしわけありません」秋山理事官は深々と頭を下げる。だが一転して上津は笑顔を浮かべ「ともあれ事件は解決、俺の推理も君の仕事も最低限果たせたことだし、飲みに行かない?」と気さくにいう。

2013-05-02 04:46:47
現場猫教授 @Dr_crowfake

本来ならばこのような場合付き合うのが筋だったが、秋山は上津の吹かすガラムの香りが大嫌いだった。そして上津から預かった「資産」についてもいささか調査しておきたかった。だから誘いを断った。「あら残念。親睦を深めるチャンスだと思ったのに」そういう上津は、けして残念そうには見えなかった。

2013-05-02 04:50:42
現場猫教授 @Dr_crowfake

「秋山くん、どうもぼくと距離をとりがちで」都心部のバーで、上津は同席の桐島理事官にぼやいた。「彼は熱血漢ですから、先生みたいな寝技は好まないんでしょう」「別にぼくも彼とくんずほぐれつしたいわけじゃないんだけど」と上津はいう。「いずれ関係改善の機会も来ますよ」桐島は無感情に云った。

2013-05-02 04:54:50
現場猫教授 @Dr_crowfake

一方その頃、秋山は鹿島たち突入隊員と酒盛りをしていた。「上津部長のヤマカンがあたったからって、そこに突入させられる俺らはどうなんですか?」鹿島の絡み酒に秋山は頭を下げる。「すまん。実際、一番面倒なことは君たちに押し付けてしまっている」上長に頭を下げられると、さすがに勢いも弱まる。

2013-05-02 04:57:07
現場猫教授 @Dr_crowfake

「まあそんなに恐縮せんでください。秋山さんが俺らのことを大事に思ってるのはみんな知ってますから」と鹿島はフォローしつつ「しかし神津課長、よくまああんな「資産」を拾ってこれましたね」と、居酒屋のすみで完全に出来上がってる少女を指す。

2013-05-02 05:00:31
現場猫教授 @Dr_crowfake

「あれは――課長の個人的資産でね。俺にもよくわからない。だけど、君たちが知りたいなら、探りを入れてみるが」負い目からそう云う秋山に対し「お願い出来ますかね?」と座った目つきで云う鹿島。「課長の「資産」扱いじゃ、何時まで経っても隊になじまない。俺は、あいつを一人前にしたいんですよ」

2013-05-02 05:04:39
現場猫教授 @Dr_crowfake

「ほう?」秋山は目を疑った。仲間意識の塊で、排外的な性格の鹿島が、そこまでいうのだから、何がしかの見所があったのだろうと思えたからだ。「あいつにはすんでの所で命を助けられましてね。だからまあ、身内として一人前の教育を仕込んでやらにゃと思うわけです」「なるほど」秋山は酒を煽った。

2013-05-02 05:08:03
現場猫教授 @Dr_crowfake

そのころ、有坂は核廃棄物爆弾テロに関与したと思われる組織や人物の関連性を「6次の繋がり」を用いたネットワークとして構築し、その緊密性や重要度を洗い出す作業に没頭していた。これをなし得れば、日本における統一朝鮮系テロ組織のネットワークを根こそぎにできる。彼女にはその自信があった。

2013-05-02 05:11:38