すらすらわかる公共経済学入門。(その1)

すら先生のすらすらわかる公共経済学。 完全競争市場の条件と市場の失敗について。
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すらたろう @sura_taro

公共経済学入門~。まずは市場の失敗について。よく「市場は完全じゃない」「市場原理主義の暴走」などとも言われますが、では完全な市場って?

2013-05-04 08:37:35
すらたろう @sura_taro

ここで想定されている「完全な市場」というのは標準的な経済学入門テキストでは「完全競争市場」として定義されております。その条件は4つ。

2013-05-04 08:38:53
すらたろう @sura_taro

①経済主体の多様性。市場に多数の売り手と買い手が存在する。②参入退出の自由。企業の市場への参入の退出が自由に可能。③財の同質性。市場で取引される材の質が同じ。④完全情報。財の質と価格に対する情報が完全に知れ渡っている。この4つが全て揃っているのが条件

2013-05-04 08:41:59
すらたろう @sura_taro

この4つの条件を備えた完全競争市場では、価格メカニズムが機能して総余剰=消費者余剰+生産者余剰が最大となり「効率性の観点から」望ましい資源配分がは達成される、とされます

2013-05-04 08:44:08
すらたろう @sura_taro

しかし、現実の市場はこの4条件を完備していることはまず、ありません。市場の失敗です。市場の失敗というのは、本当は市場は完全なのだがたまたま失敗した・・というのではなく、もともと市場には備わっていない機能もあるという意味も含まれています

2013-05-04 08:49:36
すらたろう @sura_taro

市場の失敗は、主に次の4つが挙げられます。①市場が競争的ではない。独占・寡占です。あくどい手段で独占を・・というのではなく、初期に巨額の投資を必要とするため新規参入が困難で自然に独占になってしまう産業(例えば電力供給や水道事業など)もあります

2013-05-04 08:52:18
すらたろう @sura_taro

②公共財(が供給されない)というケース。公共財とは、国防や一般道路、警察・消防などで、これは市場では自然に供給されることはありません

2013-05-04 08:54:44
すらたろう @sura_taro

③外部性の存在。外部性とは市場取引を通さずに他の経済主体へ影響を与えてしまうことをいいます。正の外部性と負の外部性がありますが、典型的に例示されるのは工場の汚染排水や自動車の排気ガスなど

2013-05-04 08:57:45
すらたろう @sura_taro

④情報の不完全性。売り手と買い手の間に情報の格差があり、財の価値を見極められないことをいいます。典型的には医療における医師と患者、複雑な金融商品について金融機関と投資家の間にも

2013-05-04 08:59:50
すらたろう @sura_taro

このように市場は完全ではないので、資源の効率的な配分を達成するために、政府が市場に介入するということが正当化されます。おっと、ここまではひたすら「効率性」の話だけで、公平性については何も言っておりません(続く

2013-05-04 09:03:11
すらたろう @sura_taro

続き)公平(衡平)についてです。市場経済においては人々の所得は、市場へ投入される生産要素(土地・労働・資本)が持つ価値によって決まるとされます。ほとんどの人が投入できるのは労働だけです。俗に付加価値が高い仕事などとも称されるあれですね

2013-05-04 09:10:14
すらたろう @sura_taro

人々の能力は同じではありませんし、機会も均等でなく、遺産相続によって巨額の資本(財)や土地を保有していることも。これを機会均等にし、また運不運による結果の不均等を正すためにも政府の介入が正当化されます

2013-05-04 09:12:47
すらたろう @sura_taro

公共経済学とは、市場の失敗に対する効率性の阻害や公平性の確保のために政府がいかに介入していくのか・・というのを考えていくものですが、公共経済学=政府の経済学ではありません。何よりも市場が失敗するように政府もまた失敗します

2013-05-04 09:17:03
すらたろう @sura_taro

では、政府の役割とは何か。3つ挙げられます。①法による支配。市場経済が価格メカニズムによる効率的な資源配分を達成するためには財の交換が必須です。俺のものは俺のものという「所有権の確立」と「市場における交換ルール」を政府が定め、守らないものを処罰、ルールを強制することが期待されます

2013-05-04 09:22:10
すらたろう @sura_taro

政府の役割②資源配分の改善と公共財の供給。電力・鉄道・水道などの費用逓減産業を自ら供給するか、民間の地域独占企業に供給させ規制をかけます。また国防・警察・消防などの公共財を供給します(その費用は税金で賄われる)

2013-05-04 09:26:46
すらたろう @sura_taro

政府の役割③所得再分配。政府は公平を確保するために人々の所得の一部を税として取り上げ、それを所得が低い人へ再分配します

2013-05-04 09:30:46
すらたろう @sura_taro

こちら、だいたい学部1年生の後半か2年生で学べるレベルの公共経済学入門でした。ここで教科書的な話はいったん区切りまして、私のコメントを続けます

2013-05-04 09:33:23
すらたろう @sura_taro

リーマンショックに象徴される金融危機は、よく「市場の暴走」であるとされます。しかし、よく考えるとサブプライムローンやそれを合成・切り分けした複雑怪奇な金融商品の問題は「情報の非対称性」という典型的な市場の失敗ですし

2013-05-04 09:36:34
すらたろう @sura_taro

米国の「強欲」な投資銀行家たちの暴走は、市場における取引ルールが未整備・不完全であったことに付け込まれた結果とも考えられます。いずれも、市場経済そのものが悪いのではなく、市場が(もともと)不完全であり、それに対する政府のルール作りや介入がうまくいっていなかったためとも。

2013-05-04 09:39:08
すらたろう @sura_taro

公平性について。市場経済では、もともと人々の所得を稼ぐ能力は等しくないし運不運による結果の不平等もありますので富の分配は公平ではありません。政府は所得再分配を行いますが、どの程度の再分配が必要と考えるかは人それぞれの価値観

2013-05-04 09:47:18
すらたろう @sura_taro

ネットで悪罵を投げつけ合っている方々の論争の大部分はこの「再分配の程度」について争っているんじゃないかと。これは最終的に投票によって選ばれる議員たちの立法・政策で決まっていく

2013-05-04 09:50:55
すらたろう @sura_taro

参考文献を挙げておきます。

2013-05-04 09:52:29
すらたろう @sura_taro

にちぎん副総裁となりました岩田先生のテキスト。200頁弱で易しいですがこれは素晴らしい入門書 岩田 規久男 経済学への招待 (ライブラリ経済学への招待) http://t.co/xtC6Nyns10

2013-05-04 09:54:14
すらたろう @sura_taro

一橋大の佐藤主光先生の放送大学テキスト。民主党政権の前に書かれたものなのでやや古くなっていますが、岩田先生のを読みこなせたら次はこれを 財政学 (放送大学教材) http://t.co/AHY237d4vQ

2013-05-04 09:57:28
すらたろう @sura_taro

公共経済学については一橋大の他、関西学院大学でもさかんです。上村敏之教授の 公共経済学入門 (経済学叢書Introductory) http://t.co/Vj5t1agCWI

2013-05-04 09:59:57