ゼア・イズ・ア・ライト #1

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
2
前へ 1 ・・ 3 4
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてニンジャは男の懐をあさり、端末と手帳を奪い取ると、危険なジツの力でそれらを氷漬けにし、懐へしまい込む。彼は満足げに男を見下ろした。豚足をくわえている。豚足による窒息死、あるいは不幸な転倒死……死因はうやむやにごまかされ、秘密は守られる。 51

2013-05-05 17:16:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これはソウカイ・シンジケートの時代から一部の悪のニンジャ達の間で共有される隠匿メソッドであり、このニンジャ……名をアイスジャベリン……もまた、十分にその手管に精通していた。「秘密は守られる」彼は呟いた。男の見開かれたままの目が恨めしげに見上げている。「フン」彼は鼻を鳴らす。 52

2013-05-05 17:19:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが彼に残された時間はもはや無い。ニンジャ聴力を備えた彼が、後ろから近づいてくる足音に気づかいでか!彼はその手に氷の槍を生成しながら振り返った。そして息を呑んだ。「……ニンジャスレイヤー!」彼は素早く状況判断する。そして思い起こす。あのミッションの苦い敗北を。 53

2013-05-05 17:25:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コリ・ニンジャ・クランの当時の構成員総出でニンジャスレイヤーを包囲しておきながら、それを破られ、キョート政府によるケミカル攻撃を演出する狂言計画を阻止され、クランの一番槍であるダイヤモンドダストを失った手痛い敗北……!ホワイトドラゴンが覚醒しておれば、間違いなく全員セプク!54

2013-05-05 17:31:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もはやここに用はない。イクサは無駄だ。「イヤーッ!」アイスジャベリンは冷静さを保ち、壁を蹴って飛んだ。証拠は隠滅済みだ。所詮あの男ができる事は、豚足を前に途方に暮れる事だけだろう。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」壁から壁へ蹴り渡りながら、アイスジャベリンは姿をくらました。 55

2013-05-05 17:36:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……数分後。赤黒のニンジャは仰向けの男の死体の隣で身をかがめ、注意深くその様子を調べていた。ニンジャスレイヤーは死体の懐を探る。端末、手帳の類は持ち去られた後だ。そして男が咥えた豚足。「テダシムヨウ」のメッセージを込めた闇社会圧力の符丁だ。ニンジャスレイヤーは目を細める。56

2013-05-05 17:44:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは男の手を取る。掌の皮膚が剥がれ、極めて痛々しい有様だ。だが彼がニンジャ洞察力を働かせたのはそこではない。男の右手中指だ。ラクダのコブのようになっている。電子テキストが一般化したネオサイタマにおいて、極一部の職種にのみ共通する身体特徴だ……即ち新聞記者! 57

2013-05-05 17:56:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして、その時である!死体と思われた男の目がにわかに焦点を取り戻したのだ!「……!」男はニンジャスレイヤーの手首をマンリキめいた握力で掴んだ。無念!その歪んだ口元には無念の表情!ニンジャスレイヤーは男の後頭部に手を当て、話しやすいようにわずかに起こしてやった。 58

2013-05-05 17:59:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カッ、カッ、カッ、カッ、タ、タ、タイシ、大使」「話せるか」「タイシ、パクパク、パクパク、パクパク」男は白目を剥いた。血の滴る掌をぶらぶらと振った。地面に血飛沫がバタバタと落ちる。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。そして呟いた。「……オトノサマ!」「カッ……」男は事切れた。59

2013-05-05 18:19:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの視線の先には、アスファルト上に滴った血で書かれた文字があった。ミステリアスなカタカナが!……オトノサマ!「御用!御用!」マッポサイレンが近づいてくる。男の死体をその場に降ろし、瞼に指を当ててその目を閉じさせる。「イヤーッ!」彼は決断的に跳躍、姿を消した! 60

2013-05-05 18:22:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」後ろ手にフスマを閉めると、風呂上り、夜着姿のソルスティスは、金糸でススキのウキヨエが描かれたフートンに、倒れ込むようにうずもれた。「奥様ァ」フスマ越し、廊下からはコマツカイのメミコの呼び声だ。「私が叱られてしまいますゥ」「……」 62

2013-05-05 18:32:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ソルスティスは寝返りを打って仰向けになり、天井をじっと見上げた。「……」「奥様ァ」「叱られてみればいいじゃない」彼女は冷淡に答えた。そのままずっと、彼女は天井を見つめていた。 63

2013-05-05 18:37:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「ゼア・イズ・ア・ライト」 #1 終わり。#2 に続く)

2013-05-05 18:37:46
前へ 1 ・・ 3 4