【緩募】福島第一原子力発電所が、再び大地震や大津波に見舞われた際に生じうる「最悪のシナリオ」とは?

・横から茶々を入れている人は省略しましたm(_ _)m
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Flying Zebra @f_zebra

原子力発電プラントの「耐用年数」については何度か書いていますが、安全な運転を維持できる寿命という意味では経済性を無視すれば半永久的です。ほぼ全ての機器は古くなれば取替が可能ですし、取替のできない建屋や格納容器も補強は可能です。

2013-05-09 19:14:10
Flying Zebra @f_zebra

現実的には、要求される安全性を担保するための費用と、発電所を維持、運転することで得られる利益を比較すればある時点で費用が利益を上回り、それ以上維持し続けることは経済的な合理性がなくなります。この経済寿命が、実質的なプラントの寿命と言えます。

2013-05-09 19:14:35
Flying Zebra @f_zebra

設計上は、60年程度の供用期間を想定するのが一般的です。土木・建築設備のコンクリート構造物、取替に多大なコストが掛かる原子炉容器などの大型機器は60年間使う事を前提に設計し、劣化の傾向を監視しながら使うのが一般的な運用です。

2013-05-09 19:15:02
Flying Zebra @f_zebra

例えば原子炉容器であれば、支配的な劣化事象は中性子照射による鋼材の脆化です。炉内に最初から入れてある試験片を定期的に取り出して脆化の進行具合を確認し、あとどれくらい照射を受ければ安全性が担保できなくなるかを計算しています。

2013-05-09 19:15:16
Flying Zebra @f_zebra

中性子照射量は運転のやり方やトラブルなどで停止している期間にも依存するので、設計時の想定とは変わってきます。また、実験などから推定した脆化傾向と実機での傾向が異なる場合もあるため、実際に試験片を調べて確認するのです。

2013-05-09 19:15:29
Flying Zebra @f_zebra

50年程度で予め決めたレベルまで脆化が進んでしまうのであればそれ以上運転するには何らかの対処が必要になりますし、逆に60年を超えてもまだまだ余裕があれば他に悪いところがなければ引き続き安全に運転できることになります。

2013-05-09 19:15:39
Flying Zebra @f_zebra

コンクリート構造物については、中性化や塩分浸透など様々な経年劣化事象がありますが、いずれも最終的には中の鉄筋が錆びることで強度が失われます。劣化は外面から内部に向かって進行するので、一番外側の鉄筋まで到達するまでが寿命ということになります。

2013-05-09 19:16:29
Flying Zebra @f_zebra

適切に設計・施工されたコンクリートは気象条件などが厳しい環境でも100年以上持つので、構造物を部分的にでも破壊する試験は頻繁には行いません。60年使うつもりなら、30年目あたりで一度破壊試験で劣化の進行具合を調べれば60年間の供用に対する性能を評価できます。

2013-05-09 19:16:41
Flying Zebra @f_zebra

具体的には劣化が表面から何cm内側まで進行しているか調べ、表面から一番外側の鉄筋までの距離(被り厚さ)に対してどの程度かを評価します。30年目で1/4しか進んでいなければ、あと30年経っても鉄筋まで到達することはない、と評価できます。

2013-05-09 19:16:55
Flying Zebra @f_zebra

原子力プラントに限らず、長く使う設備の検査というのはこのように検査の時点で合格かどうかだけでなく、あと何年で不合格になるかまで調べるのが一般的です。予定している供用期間までに不合格になると評価されれば、それまでに当該部分の補修なり交換なりを計画します。

2013-05-09 19:17:13
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電所について、従来日本では設置の際に60年の運転を前提に国が審査し、運転開始から30年目以降は10年ごとに経年劣化を評価し、次の10年間の運転に対して認可を出すことになっていました。適切な補修で認可を受ければ制度上は60年を超えた運転も可能でした。

2013-05-09 19:18:00
Flying Zebra @f_zebra

今年7月に施行される新規制では原子炉の運転を原則40年に制限することが明記されますが、この40年という数字には何ら技術的な根拠はありません。劣化の傾向監視と定期的な再評価が前提であれば、規制で運転年数に制限を設けることに安全上何の意味もありません。

2013-05-09 19:18:26
Flying Zebra @f_zebra

世界的にも原子力プラントの運転年数に規制で制限を設ける例はほとんどなく、ロシアとチェコが設計寿命を30年に定めているくらいです。ただし、期間更新は可能です。運転認可を期限付きで与える例が多く、認可更新の際に再評価を行うのが一般的です。

2013-05-09 19:18:47
Flying Zebra @f_zebra

アメリカは最初に40年の運転を認可し、その後20年ずつの認可更新をする方式です。既に多くのプラントが60年までの更新を終えており、次の80年までの認可更新を検討しているプラントもあります。

2013-05-09 19:19:10
Flying Zebra @f_zebra

カナダは1年、フィンランドは10~20年、ハンガリーは12年、スペインは10年など、認可期間は様々です。運転認可に期限を設けていない国でも、10年程度の期間で定期的に安全性の再評価を行っています。いずれにしろ、廃炉の時期は事業者が経済性から判断します。

2013-05-09 19:19:39
Flying Zebra @f_zebra

新規制の40年運転制限の話は当時の官房長官だった枝野氏が何も根拠を示さず発表し、それがそのまま改正電事法、新規制に取り込まれました。国が事後的に民間企業の資産価値を制限することに対し、ほとんど議論されることなくメディアも国民も受け入れたのには驚きました。

2013-05-09 19:20:07
Flying Zebra @f_zebra

あれ?言い出したのは経産相になってからだったかな。

2013-05-09 19:22:35
Flying Zebra @f_zebra

福島第一の事故は原子炉の古さとは何の関係も無かったにも関わらず、たまたま1号機が40年を超えたばかりの古いプラントだったことから、何となく古いものは危ない、というイメージが抵抗なく受け入れられたのでしょう。

2013-05-09 19:23:01
Flying Zebra @f_zebra

多くの人の安全に関わるといえば、飛行機も一般の人のイメージよりはかなり長い間使われます。国内の航空会社は格安航空も含め新品機材を購入またはリースして使い、古くなれば払い下げるのが一般的なので、国内では30年程度までの比較的新しい機材が多いようです。

2013-05-09 19:26:33
Flying Zebra @f_zebra

定期的な点検と古くなった部品の補修、交換を繰り返しているのは発電プラントと同じで、特に耐用年数が決まっておらず、ちゃんと整備すれば50年でも60年でも飛び続けられるというのも似ています。古い飛行機も新型機も、要求される安全性は同じです。

2013-05-09 19:26:52
Flying Zebra @f_zebra

民間機であれば同クラスの新型機が安く出回ることが経済寿命となりますが、軍用機などの特殊用途機では同じ用途の新型機が開発されなかったりして、当初の予定を大きく超えて長期間運用される場合もあります。

2013-05-09 19:27:19
Flying Zebra @f_zebra

ベトナム戦争の頃活躍したB52戦略爆撃機は最終号機の納入が1962年だそうですが、有力な後継機がなく未だに現役です。米軍の予定では、2045年まで運用することになっているそうです。今でも親子2代でB52に乗っている例があるそうですが、そのうち3代目も出るかもしれません。

2013-05-09 19:27:34
Flying Zebra @f_zebra

原子炉の話に戻しますが、日本ではアメリカではできないバックフィット、つまり新しくできた規制要求を既に認可を与えたプラントにも遡って適用することも普通に行われます。つまり古い旧式炉も、真っさらの新型炉も、全く同じ基準で審査されるのです。

2013-05-09 19:28:57
Flying Zebra @f_zebra

新しい設計の方が要求されるレベルの安全性を達成するのが簡単なのは当然で、旧式炉で同じレベルを達成するには何かと費用が掛かります。出力も小さな旧式炉をいつまで使うのかは事業者が考えることで、規制が求めるのは安全性だけでよいはずです。

2013-05-09 19:29:31