ゼア・イズ・ア・ライト #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」イチローはソルスティスの手を振り払った。彼の四肢にカラテが満ちる。その決断的な殺意に彼女は驚く。彼はためらいなく彼女の首を刎ねるだろう……否、ソルスティスは彼の瞳に謎めいた苦悩の影を読み取った。彼女は危険を冒した。「どうして、あなたがここに」 25

2013-05-09 22:40:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「セクトの」イチローは呻いた。「アマクダリ・セクトのニンジャか」アマクダリ・セクト。彼女の首筋が冷える。「その名を知るなら尚更わかるはず」ソルスティスは囁いた。彼女はイチローの言葉を思い出していた。人には言えぬ仕事?何らかの潜入捜査……「すぐにここから出て行って。貴方は死ぬ」26

2013-05-09 22:49:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何を企む」イチローはやや右に身体をずらす。ソルスティスの脳内で数百パターンのイマジナリー・カラテが閃く。内心彼女は舌を巻いた。最適だ。ソルスティスの反撃を封じ、そのまま殺す為の、彼にとって最適のワン・インチ間合いなのだ。このニンジャは恐るべき使い手なのだ……彼女以上に? 27

2013-05-09 23:00:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ゼア・イズ・ア・ライト #2 後編)

2013-05-10 13:39:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は」ソルスティスはイチローの目を見た。「私は貴方と戦わない」イチローは眉根を寄せた。「なぜだ」「なぜ……」なぜだ?ソルスティス自身もまた、己に問うていた。だが彼女は言った。「ここにはセクトのニンジャが集まっている!貴方がセクトに敵対する者であるならば……軽率に過ぎる」 28

2013-05-10 13:57:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イチローはカラテを解かない。下がれば……あるいは攻撃を試みれば、その瞬間に致命的打撃がソルスティスめがけ繰り出されるだろう。「ここで何が起こる?」イチローはジゴクめいて言った。「これから何が起こる?」「……!」 29

2013-05-10 14:06:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがその時、二者の注意はソルスティスの背後、中庭と本館を繋ぐ廊下へ向いた。接近する足音あり。ソルスティスはもう一度イチローを見た。「恐ろしい事が」彼女は囁いた。「ここではない。これから起こる」イチローとソルスティスを、陽炎めいた超自然の飛沫が隔てた。彼女は振り返った。 30

2013-05-10 14:10:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奥様。お時間が」現れたクローンヤクザは、無表情にソルスティスへ声をかけた。ソルスティスは笑みを浮かべた。「わざわざクローンを遣るなんて。あの人が直接来ればいいのに」「申し訳ありません奥様。お時間が」「ええ」ソルスティスはクローンヤクザに続いて廊下へ戻って行く。「平気よ」 31

2013-05-10 14:13:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

廊下には更に二人のクローンヤクザが控えている。ソルスティスにオジギをする。後にした中庭、トバリ・ジツによって隔てられたイチローに気づく者はない。迎えに現れたのがニンジャであったとしても、それは変わらないだろう。ではアガメムノンならば?アガメムノンは迎えには現れないだろう。 32

2013-05-10 14:20:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クローンヤクザに導かれ、彼女は上階への階段を上る。折り返す踊り場にはアメジストの盃とスモークシルバーのタヌキが飾られ、「時間は停止する」とショドーされたカケジク。ソルスティスは心拍数を平常に整える。上った先には片膝待機するシャドウドラゴン。「あちらにございます」 33

2013-05-10 14:38:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

本日、ごく限られた者以外は、この階への立ち入りは禁じられている。何かの間違いで酔漢が近づけばクローンヤクザが優しく留める。それを破り踊り場を更に上がるものがあれば、シャドウドラゴンが機械的にそれを殺す。ソルスティスはシャドウドラゴンに冷たい一瞥を向け、奥へ進む。 34

2013-05-10 14:42:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「獲物をとらえるドラゴンの間」……クローンヤクザが闇のカンファレンス会場であるこの広間の黄金フスマを左右に引き開けると、黒檀の円卓を囲む出席者たちが目を上げ、ソルスティスを見た。彼らの中にアガメムノンもいる。そしてラオモト・チバ。少年の背後、壁を背に、ネヴァーモア。 35

2013-05-10 14:50:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネコソギファンド社主にしてアマクダリ・セクトの頭領であるチバのカタナじみた眼差しが、己の座席へ向かうソルスティスを追う。猜疑心と侮蔑と攻撃性に満ちた目。誰に対してもそうなのだ。彼女はアガメムノンの隣に掛けた。「ごめんなさい」夫に囁く。「特に遅れてはいない」とアガメムノン。36

2013-05-10 15:04:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フー」チバは紫煙を吐き出し、マホガニーのシガーレストに葉巻を置いた。「ほう?キューバものですかな」隣に座る眼帯の男がガラガラ声で尋ねる。白髪交じりの長髪で、ミリタリーニンジャコート。 37

2013-05-10 15:19:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チバは鼻を鳴らす。「ネヴァーモア」「ハイ」ネヴァーモアは懐からケースを取り出し、眼帯の男に葉巻を一つ差し出す。「これはドーモ」猛禽じみたアトモスフィアを放ちながら、眼帯の男はにっこり笑う。葉巻を噛んで静止する。「ネヴァーモア」「ハイ」男の葉巻に火を付ける。 38

2013-05-10 15:25:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この眼帯の男は電子戦争を生き残った退役軍人であり、湾岸警備隊を経て、現在は国防軍の顧問にある。同時に、彼はアマクダリ・セクトのアクシスを束ねる「12人」の一人でもある。ハーヴェスターだ。 39

2013-05-10 15:37:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その隣には、筋肉の塊のような身体をストライプのスーツで包み、鋼の生命維持装置マスクを着けたスキンヘッドの男が座る。彼もまた「12人」の一人。思慮深き男、スターゲイザー。その隣には、鼻持ちならない笑みを張り付かせた、ヤッピーじみた青年。彼もまた「12人」の一人だ。マジェスティ。40

2013-05-10 15:46:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここで気づく方もおられよう。出席者達の中には、このマジェスティのように、目鼻を覆うクロームの仮面を着用したスーツ姿の者が多い。彼らは皆、アマクダリ・セクトのニンジャだ。本性を現せば、そのスーツは脱ぎ捨てられてニンジャ装束へ。仮面を捨ててメンポ(面頬)を装着する事になろう。 41

2013-05-10 15:51:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この場には、非ニンジャ、非アマクダリ・セクト構成員の姿もある。政財界の大物、湾岸防衛隊関係者、暗黒メガコーポ役員……闇のコネクションだ!だが思いがけず、あの席に座るでっぷり肥ったタダオ大僧正はそうではない!彼はニンジャであり、セクトの「12人」の一人なのだ!ブラックロータス!42

2013-05-10 15:58:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方、金の爪楊枝で歯をせせっている男はスパルタカス!ネオサイタマに存在する警備保障会社上位三社の筆頭株主、ネオサイタマ格闘技振興連盟会長、古代ローマカラテの筆頭伝承者にして「12人」の一人!更に、おお、あれは!乳めいて白い髪を伸ばし喪服を着た女性!「12人」の一人、キュアだ!43

2013-05-10 16:16:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アガメムノンを含め、実にこの場に「12人」のうち7人もの重大ニンジャが一同に介した!「12人」が互いに顔を合わせる事は滅多に無い。ハーヴェスターなどはチバとも初対面!実際これは大変な出来事だ。非ニンジャ、そして「12人」に含まれぬアクシスのニンジャをも数人混じえ、彼らは何を?44

2013-05-10 16:41:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((何を……セクトは何を企んでいる……!)))その暗黒会合を今、天井裏から密かに窺うもの有り!ニンジャスレイヤーである!既に彼は先程のサムエスーツではなく、赤黒のニンジャ装束姿となり、顔には「忍」「殺」のメンポを装着している。指先の力で穿った微細な穴を通し、彼は注視する! 45

2013-05-10 16:51:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は自らを天井裏の石めいて、完全にその気配を殺していた。非常に注意深きニンジャ野伏力の活用、「ヘイキンテキ」のメソッドのひとつだ。だが、これほど多数のニンジャ存在あらば、いつ気づかれぬとも限らない。彼がこのような命がけの潜伏を行う理由とは!? 46

2013-05-10 16:58:10