ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #7　「ラフ・アット・ユア・ライヴス」

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―2013年4月20(土)23:08。茨城県日館市新渡町、ホテル東新渡付近。裏路地。

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魔術師・エレクトロキューターは眼前の光景に絶句していた。目の前に転がる二人の徒弟。彼自身も同様に倒れている。首に刃。致命傷でこそ無いが、その効果で魔術が封印され、完全に無力化されてしまっていた……一瞬の出来事だった。

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…彼等、魔術師組織ＵＡＲはある儀式の為にこの町を訪れていた。彼等の悲願の為に数百年来行われてきた大儀式、その最終段階。半年間、十二回に分けて行われる予定である。 先日その第一回目が実行され……その後、儀式の実行者６人が突如として姿を消した。

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裏切りや敵対組織の襲撃まで様々な可能性が考えられたが、原因も彼等の行方も杳として知れなかった。何にせよ二週間後には次の儀式を行わなくてはならない。すぐに準備と調査の為に更に人員が派遣されて消えた。

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最早、敵対組織の仕業でまず間違いない。しかし一番疑わしい地元の組織は沈黙を守っている。目的を偽って現地入りの許可を取っているので、本来なら魔術師の国連『セフィロト』を通して抗議されてもおかしくない筈である。それを今のところしていないのだ。

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彼等に事を大きくする気が無いのだとすればＵＡＲには幸いである。しかしながら長きに渡る悲願を放棄する訳には行かない。儀式の場所と時間も動かせない。となればいずれ対立は必死である。

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エレクを含む１５人は、その為に送り込まれていた。彼と二人の徒弟を含む６人は新渡町内に許可を得て入り、残り９名は日館市内の、新渡町外の場所に無許可で潜伏していた。当然「敵」に襲われる可能性は前者の方が高い。覚悟も警戒も充分にしていた筈だった。 それが、このザマだった。

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１５人全員を集めての会議後、彼等３人は明日実行するローラー作戦について思いを馳せながら歩いていた。 警戒を怠ったつもりは無かった。町外にいる仲間との合流と解散、その途中を敵に見られては分散の意味が無い。 町内での潜伏中以上に警戒していた。 筈だった。

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あと一息でホテルに着くというところだったが、油断はしていなかった。筈だった。 そもそも、この「敵」にはその程度の警戒など問題では無かったのかも知れない。 「ホワ…イト…？」 敵の名を呼ぶ。

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それは魔術師で有りながら『科学と称して』人前で魔術を堂々と使う異端者。だが彼は『人類の敵』たる『フォームド』と戦う存在の筈だ。魔術師を襲ったという噂など聞いたことが無かった。 「何故…こんな真似を…！？」 『汚物が口を利くな…！』

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「かっ……！！」 鳩尾に鋭い蹴り。ホワイトの合成音声は信じ難いほどの殺意と憎悪に満ちていた。 （我々が…何をしたというんだ…！） 怒りや絶望よりも、ひたすらに疑念が沸いてくる。だが考える間もなく意識が薄れていく……。

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――魔術師達が沈黙する。 ホワイトはそれを念入りに指差し確認してから、徒弟二名の頭蓋を叩き合わせて髪を結んで持ちやすくし左手に持ち右手でその師の髪を掴むと俯せ状態にして地面を引き摺った。 その手付きは、素手で衛生害虫の巣に触れるかの様な嫌々、といった様子。

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引き摺りながらも、三つの顔を地面に付けない様にしていた。 地面が汚れたら大変だからだ。 用意しておいたトラックの中に放り込む。全身の関節を外し、主な骨を折り、筋肉を裂いたが、命に別状はない。 面倒だがまだ殺すには早いからだ。

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…数時間後、彼等は死んだ。 究極の苦痛の中。 何も生まず、 何も残せず、 無となった。

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――――――　私欲に塗れた愚者に苦痛の報いを　――――― ――――――　邪心に汚れた賢者に愚者の怒りを　―――――

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（西暦２０１３年冬、至近未来の地球は、破滅の闇に包まれていた）

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（その未来を変えるための鍵、預言書『Ｍ文書』が同年の春に現れ、少年に託された。文書が告げる破滅の原因は魔術師組織『ＵＡＲ』。）

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（「ドーモ、浅空勇矢です」ロボット競技大会『アクトボット』で優勝を狙う少年、浅空勇矢は彼等と戦う決意をする）

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（勇矢の如き行動をとる謎の戦士、ホワイトナイトは現れたＵＡＲの魔術師達を惨殺した。だが、彼等の本国から更に１５人の魔術師達がやって来た。勇矢はどう立ち向かうのか！？…そして謎のホワイトナイト…一体何者なのか！）

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（…それはさておき、アクトボット部内練習試合の第三回目に向けての準備が過熱し、勇矢の幼馴染、七橋裕岐は出来たばかりの恋人とデートに出かけた！……アクトボットに賭ける少年少女達の戦いと、デートに臨む少女の戦い…ついでに世界の命運をかけた戦いの幕が上がった！）

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ミストルティン編第四話「護るべき笑顔は～ノー・ティアー！ノー・アゲイン！」 #7　「ラフ・アット・ユア・ライヴス」

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―4月20(土)23:32。浅空家。 「もぉ…まだそんなこと言ってぇ…」 ベッドの上。染川絢女はタブレット越しに梢と話していた。 『でも、本当に…良いん…でしょうか…？』 「いーの。暗い顔してたら裕岐ちゃんを幸せになんて出来ないわよ？」 『私に…そんな資格なんて…』

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「困った子ねぇ…こんな可愛い娘に慕われたらそれだけで裕岐ちゃんも幸せだって言ってるのに…」 『……』 「と・に・か・く！明日はちゃんとあなたも楽しむの！だから早く寝なさい？」 『…』 「んー。遅刻したら裕岐ちゃんに迷惑でしょ？」 『…はい』

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「私も話し相手がいなくて寂しいけど我慢するから、ね？」 『…はい。あ…あの？…浅空さんは…？』 「ゆーや？…今はね」 「……お掃除中よ」