宮月カフェパロ Twitterログ

黒/バス二次創作の呟きまとめです。Twitter上でコラボさせて頂きました。 伊月視点:すだち/宮地視点:たやら ※完結しました
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すだち @mk414pk

「今日はどうしますか?」「あー…」言い淀んだ彼を見て、なんとなく気付いた。あぁこれ、多分、「お口に合いませんでしたか」申し訳なさそうに聞けば、彼は少し言いづらそうに口を開いた。「ちょっと渋かった」「あぁ、なるほど…すみません、オススメしてしまったのに」

2013-04-25 15:22:37
すだち @mk414pk

確かにうちのアイスコーヒーは他よりも渋めだ。彼はミルクとか入れないからなおさらそういう風に感じたのだろう。せっかくお金を出して買ってくれるのに申し訳ないことをしてしまった、と反省した時だった。「…他になんかある?オススメ」その言葉に俺は目を丸くした。

2013-04-25 15:29:07
すだち @mk414pk

「俺のオススメでいいんですか?」「そ、伊月さんのオススメ」そう言われてしまい俺は手を止めて考える。えっと、確かこのお兄さんの好みは………「苦いのがお好きですよね」「まぁな」「季節モノよりは長く飲めるやつですか?」「おう」苦めで、どのシーズンでも飲めるもの…か。

2013-04-25 15:34:36
すだち @mk414pk

カウンター内の道具をぐるっと見回して何がいいか考える。この人に気にいって貰えるようなもの…。そこでふと、一つの商品が頭に浮かぶ。そうだ、これなら自信持って出せる。「じゃあ、エスプレッソ濃いめのラテなんていかがでしょう。うちのスチーム強力だからなめらかでおいしいですよ」

2013-04-25 15:38:26
すだち @mk414pk

そう言ってニコっと笑ってみせる。「んじゃ、それで」「かしこまりました」彼の返事を聞き、ラテを作る為に道具を揃える。普段出してるコーヒーとは違いラテは手間がかかるのだが、それが珍しいのがじっと見つめているお兄さんに自然と笑みが零れる。その姿はまるで子供みたいだ。

2013-04-25 15:45:44
すだち @mk414pk

これは作るのに時間がかかる。だからこそ、聞いてみてもいいだろうか。出来るだけ自然に言えるように気を付けながら言った。「ちょっとご無沙汰でしたね」「あー…」そう言葉を濁す彼に俺は慌てて言った。「あ、いや、体調でも崩されたのかなって心配してたんです」

2013-04-25 15:54:26
すだち @mk414pk

「そんなに来てなかったっけ」「いつも週に2回くらい、いらしてたじゃないですか」少し拗ねたように言えば彼は目を見開いた。「すげー、そこまで覚えてんの、接客業って」「二週間に1回以上くるお客様はだいたい」そう言って誇らしげに笑う。常連さんを覚えるのも仕事の内だ。

2013-04-25 16:00:09
すだち @mk414pk

「それに、お兄さんはすぐ覚えましたし」「…へ」「だって、カッコいいしイケメンだし、他の子にも人気あるんですよ?」いつも怖い顔ばっかしてるから怖がられてるけど、とまではさすがに言えないけど。「お待たせしました、アイス・ラテです」すっと笑いながら商品を差し出す。さて、問題はこの後だ。

2013-04-25 16:02:40
すだち @mk414pk

いつもはここでダジャレを言う。けれどお兄さんが来なくなった原因が俺のダジャレが鬱陶しくなったからかもしれなくて。だからこそもうダジャレは控えなくてはならないんだろう、そう思ってた。のに、彼は一向にお金を出す雰囲気が無くて。もしかしたら待ってくれてるのだろうか、でも、違ったら、

2013-04-25 16:05:48
すだち @mk414pk

言おうか言うまいか悩んでいると不思議そうに彼は言った。「今日はダジャレねぇの?」その言葉に恐る恐る口を開く。「…ダジャレが鬱陶しくなったんじゃないんですか?」「は?」「あ、いえ…」あまりに気まずくなって目を逸らす。でも、聞きたくないんじゃないのかな。それとも、聞いてくれるのかな…

2013-04-25 16:08:58
すだち @mk414pk

未だ言うのを躊躇っていると彼は睨み付けるように言った。「レジで聞いてる時点で公開処刑みたいなもんだろ。今さら何言ってんだ、潰すぞ」それは、聞いてくれる、ってことでいいのかな。「…ダジャレを豪快に公開して後悔、みたいな」「ふーん、3点。刻む」あぁ、やっぱり笑ってもらえない。

2013-04-25 16:13:02
すだち @mk414pk

「えっ、ご、ごめんなさい…」謝りながら自分の不甲斐なさに泣きたくなる。しょうがないことなのかもしれないけど、このダジャレのせいで嫌われたらどうしよう。あぁ、そんなの、「来週くるから、もうちょっとマシなの考えとけよ」へ?今。来週来る、って、「えっ、あ……はい!」

2013-04-25 16:16:18
すだち @mk414pk

いつも通り手をあげて去る彼にありがとうございました、と声をかける。また、来てくれるって言ってた。その言葉が嬉しくて、自分で顔が緩むのがわかった。「空手家がラテを飲む。キタコレ」次はこのダジャレにしようかな、イヤ、もっと良い物を考えよう。来週までまだ時間はあるのだから。

2013-04-25 16:19:24
すだち @mk414pk

「………優しい人だよなぁ」まだ、聞いてくれるなんて。本当に優しい人だと思う。だからこそ、また笑顔にさせたい。俺の言葉で彼を笑顔にさせたい。その為には、とメニューを眺めながら新しいダジャレを考えることにした。

2013-04-25 16:21:29

宮地視点④byたやら

療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

あれから、伊月さんがドリンク作るのを眺めるのが面白くて色々と頼むようになった。それでもそろそろ甘くなさそうなメニューは大体制覇してしまったわけで。抹茶オレとか柄じゃないしな。「どうすっかなぁ」「なんだったらリクエストでアレンジしますよ」「そんなのできんの?」「うちの店、緩いんで」

2013-04-26 22:02:42
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

ちょっと楽しそうに伊月さんが笑う。あ、可愛い。じゃなくて。確かにこの店はチェーンという割に緩いというか、融通が利く。「あー…牛乳入ってないのがいい」「生クリームはどうですか?」生クリーム。ぽんと脳裏に浮かんだのは別のチェーンで呪文みたいなオプションを注文する後輩だった。

2013-04-26 22:03:05
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

思わず顔をしかめる。やかましい後輩が緑の星がトレードマークのアメリカンチェーンで頼んでいたような液体が出てくるとは思わないが、あまりいいイメージはない。「…甘そう」「そうでもないですよ。俺は好きです、ウィンナ・コーヒー」そう語る彼はなんだか得意げだ。耳慣れない名前だ。

2013-04-26 22:03:52
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

帰ったら調べてみるか、と思いつつ今日はそれに決める。「…じゃぁ、それ苦めにできる?」「かしこまりました」そこそこ無茶ぶりだと思うのだが、伊月さんは楽しそうだ。「クリームの量減らして、コーヒー濃い目にしてみますね」ゆったりとした手つきでコーヒーを淹れる姿は堂に入っている。

2013-04-26 22:13:32
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

ギャルソン風の制服もよく似合っているし、ファンが多いのも頷ける。ただ、俺が見る限り伊月さんがそれに気づいている様子はない。意外と鈍感だよな、と思って眺めていると彼が口を開いた。「これ飲んでると同僚に『固めるの面倒になっただけだろ』って言われるんですよね」

2013-04-26 22:14:03
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

涼し気な口元が笑みの形に緩む。しかし残念なことに俺の頭は伊月さんの意図を汲み取れなかった。「あ?」反射的に乱雑な相槌が口をついて出る。瞬時に後悔するものの、幸い彼にそれを気にした様子はなかった。ここ最近で慣れたのだろうか。「俺、コーヒーゼリー好きなんです。すごく好きなんです」

2013-04-26 22:14:26
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

大事なことなので二回言いました。黒蜜色の瞳がきらりと輝いて、どれほど好きかが伺える。俺は心のメモ帳にしっかりと書き留めた。「…で、それが?」「この店でバイト始めたきっかけも、コーヒーゼリーがおいしかったから、なんですけど」彼はちょっと恥ずかしそうに頬を染めた。

2013-04-26 22:23:02
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

「この店、コーヒーゼリーいちから作ってるんですけど、原料が一緒なんです。濃い目にコーヒーを淹れて、粗熱取ってガムシロップ入れてゼラチンで固めて、賽の目に切って最後に生クリームをのっけてできあがり。だから冷やして固めなければウィンナ・コーヒーだって言われて」

2013-04-26 22:23:27
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

口先の細い、けれど巨大なポッドで危なげもなくペーパードリップの過程がこなしながら、彼は一瞬ぷくっと頬をふくらませた。「冷えて固まってることが大事なのに何言ってるんでしょうね。余計なモノが入ってない上に毎日ちゃんと作るからこの店のホントおいしくて…」

2013-04-26 22:23:49
療養から逃げられないらくだ @tayara_ra

一瞬浮かんだ不機嫌も、好きな味を思い出したのか笑顔の中に解けた。饒舌に語る彼の表情がくるくると変わるのに、俺は目を奪われる。耳の奥に心臓でもあるんじゃないかってくれらいどくどくと鼓動がうるさい。「あ、すみません。すっかり語っちゃって」彼がはたと気づいたようにこちらを見た。

2013-04-26 22:24:09
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