稲川淳二 つぶやき怪談 2013年2月26日

「ピンクのスラックスの女」 稲さんの肉声版はこちら↓ http://www.youtube.com/watch?v=4RE3yhMboKY
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稲川淳二 @Junji_Inagawa

こんばんは、稲川淳二です。夜分すいません。

2013-02-25 23:59:48
稲川淳二 @Junji_Inagawa

稲川淳二の「つぶやき怪談」、怖・楽しい時間を、共有しましょう。

2013-02-26 00:00:59
稲川淳二 @Junji_Inagawa

何が起こっても、責任はとれませんけど。

2013-02-26 00:01:18
稲川淳二 @Junji_Inagawa

代理店に勤める若手社員の秋田さんが上司から、

2013-02-26 00:01:36
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「どうだァ、よかったら土・日にかけて、私の別荘へ皆で遊びに来ないか、ここと違って岐阜の山間にあるから、さすがに涼しいぞ」と誘われた。

2013-02-26 00:01:59
稲川淳二 @Junji_Inagawa

連日記録的な猛暑の続く名古屋を後に、同僚達と行ってみると、正に別世界。

2013-02-26 00:02:25
稲川淳二 @Junji_Inagawa

周囲を木々に囲まれて、網戸を通して時折吹き込んでくる心地よい風に、冷えたビールで、すっかり気分も盛り上がって、熱帯夜なんか嘘のよう・・・・・のハズなんですが、

2013-02-26 00:03:06
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ただ秋田さんだけは、仕事の都合で後からひとり遅れて最終電車で到着する同僚の佐野さんという人を、自分の車で駅まで迎えに行かなきゃならないんで、アルコールは口にできない。

2013-02-26 00:03:47
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ゴクゴクと、喉を鳴らしてうまそうにビールを飲んでいる仲間を横目で見ながら、(損なくじ引いちゃったなァ・・・・・)と、我が身を悔やんだ。

2013-02-26 00:04:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

時間も過ぎて、宴もたけなわになった頃、皆、酔っ払って聞いてやしないけど、一応、「じゃ、佐野迎えに駅まで行ってきます」と、一言ことわって外に出ると、

2013-02-26 00:04:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

辺りは黒一色の闇に包まれていて、別荘からもれる明かりと、同僚達の声だけが聞こえてくる。

2013-02-26 00:05:31
稲川淳二 @Junji_Inagawa

秋田さん、ひとり車に乗り込むと、窓を開けて風を通して、エンジンをスタートさせた。所々にポツンポツンと外灯があるだけの、河に沿って続く道路を飛ばしてゆくと、うっすらと靄が出てきた。

2013-02-26 00:06:15
稲川淳二 @Junji_Inagawa

人の姿も無ければ、すれ違う車も無いんで、ひとりで運転していると、心細くなってきて、ついついスピードを出してしまう。

2013-02-26 00:06:48
稲川淳二 @Junji_Inagawa

やがて水色の鉄橋が見えてきた。距離が近づいてくると、それが、かなり古くて、意外に大きな鉄橋だとわかった。

2013-02-26 00:07:29
稲川淳二 @Junji_Inagawa

車が橋に差し掛ると、靄を通して前方を照らすヘッドライトの先に、“ん?!”闇の中に、ピンク色のスラックスが目に入った。

2013-02-26 00:07:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

こんな寂しい橋の上に、珍しく人がいる。それも若い女のようなので、カップルでもいるのかなと思ったんですが、辺りには車も無いし、男の姿も見当らない。

2013-02-26 00:08:24
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(こんな時刻に、こんな場所にひとりで、何してるんだろう?)

2013-02-26 00:08:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ちょっと気になって、スピードを落して様子を見ながらゆくと、むこうは対向車線側で闇をバックにしているので、はっきりとはしないんですが、

2013-02-26 00:09:15
稲川淳二 @Junji_Inagawa

こっちに背を向けた恰好で、欄干から身を乗り出して、下の暗い水面を眺めているらしい。

2013-02-26 00:09:44
稲川淳二 @Junji_Inagawa

こちらからは、ピンク色のスラックスをはいた、腰から下が見える程度。

2013-02-26 00:10:09
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(それにしても、あんなに身を乗り出して、あの女、一体何を見てるんだろう?)と、少しばかり好奇心をそそられた。

2013-02-26 00:10:36
稲川淳二 @Junji_Inagawa

さて、駅に着くとしばらくして、最終電車で佐野さんが到着したんで、バッグを後部座席に置くと、彼を助手席に座らせて、おしゃべりしながら、来た道を戻って行った。

2013-02-26 00:11:24
稲川淳二 @Junji_Inagawa

しばらく走ると、やがて前方に水色の鉄橋が見えてきた、

2013-02-26 00:11:40
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「往きになァ、あの橋を渡って来たら、橋の途中で、ピンク色のスラックスをはいた、若い女だと思うんだけど、欄干に張り付くようにして、身を乗り出して橋の下を見つめてるんだよ。

2013-02-26 00:12:11
稲川淳二 @Junji_Inagawa

闇の中だし、むこう向きで下を見てるんで、腰から下しか見えないんだけど、こんな時刻に、明かりの無い橋の上で、それもたったひとりでさ、何をしてるのか気になってなァ」と話すと、佐野さんが、

2013-02-26 00:12:35