オレの妹がカリフなわけがない！#4-5

カリフラノベ『オレカリ（略称）』 @caliphnovel

「オレの妹がカリフなはずがない！」 #４

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「９オレの妹がカリフなはずがない！」 #４

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「カリフになれ」 そう小さく呟いた。それが死に臨む祖父の最後の言葉だった。 愛紗は垂葉に尋ねた。 「お兄さま、《かりふ》とは何のことでしょう？」 「…　幼稚園で一番エラい人さ」 「…」 ４歳の二卵生双生児の垂葉と愛紗を遺して君府学院理事長真筆は逝った。 父夢眠は無言であった。　１

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君府学院が天馬家の手を離れるのはそれからしばらく後のことであった。　２（#4終わり　#５に続く

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「オレの妹がカリフなはずがない！」 #５　

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オレの妹がカリフなはずがない。あいつさえいなかったならば。 ３５年前に中東に渡り、その後消息を絶っていたおじの慈覇土が致命傷を負ってイラクから帰ってさえこなければ。　１

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父夢眠の兄慈覇土は、生徒会長として全校生を率いて「革命」を宣言し、君府学院を占拠した。１か月に及ぶ機動隊との攻防の末に君父学院革命政府は崩壊したが、慈覇土は包囲を突破し、海外に脱出した。その後、エジプトからアフガニスタンに渡ったとの噂が流れたが、真相は誰にも分らなかった。　２

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慈覇土おじと「革命」は、天馬家にとっても、君府学院にとっても、触れてはならない暗部、タブーだった。だからオレも愛紗も、父に兄が居たことはその時まで知らされていなかった。初めて会った時、おじは病院のベッドに横たわっていた。おれたちは皆、おじがもう長くないことを一目で悟った。　３

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「兄さん…」 父の声に弱々しく目を開けたおじの目がオレたち兄妹がとまった。初対面のオレたちを目にしておじの顔に生気が戻った。 「こどもか！こどもがいたんだ。天馬家の使命を受け継ぐ者が。」 「兄さん。昔話の迷信で二人をしばるのはやめてください」　４

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おじは、父には目もくれず、オレたちに言った。「天馬家は、ムスリムの国々が分裂し、カリフがいなくなった時に、東洋でカリフを擁立する使命を帯びて、はるばる中国を越えて日本に渡り、千年を超える長い年月、日本人に紛れて隠れ住んできた。」　５

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「時が満ちたのだ。東方にカリフが現れる時が。オレは焦りすぎた。まだその時ではない、とじいさんが止めるのを聞かずこの学校で暴れて失敗し、中東に渡ってずっと戦ってきた。そして分ったんだ。聖預言者は真実を語られた。中東に希望はない。カリフは東方から現れる。」　６

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「カリフになれ。天馬家、１４００年の使命、今こそ果たすときだ。主よ、ご照覧あれ。私はここに伝えました。アッラーの他に神はいません。」 勝手に一人で言いたいことだけを喋って、おじは満足そうに目を閉じた。そしてその目は二度と開かれることはなかった。　７

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おじの葬儀を済ませた後、父はぽつりぽつりと話し始めた。 「これからお前たちに言うことは、私がまだ小さかった頃に、お父さん、つまりおまえたちのおじいさんが慈覇土兄さんと私に話してくれたことだ。そして兄さんはあんな話を信じたばっかりに、一生を棒に振ってしまったんだ。」　８

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「あんな話はみんな昔の人の作り話なのに…」 （#５終り。　#６に続く）

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題名が途中から 「オレの妹がカリフなはずがない」に変わっていました。深くお詫びいたします。なお、担当者は衣織によってケジメされました。