この君府学院において上位3クラスプラチナクラス、ゴールドクラス、シルバークラスと最下位のブロンズクラスの間には、目に見えない壁があるどころか、そもそも校舎が違っている。ブロンズクラスは明治に建てられたままのおんぼろの旧校舎だが上位3クラスは平成の新築のコンピュータービルだ。1
2013-05-28 03:03:39曾祖父天馬真人が創立した君府学院は、少人数教育、徳育重視で大アジア主義に基づき外国語として中国語、トルコ語、ペルシャ語が学べるという風変りな学校だった。時代に合わない学風で経営破綻した学院をグローバル・エリートを養成する名門校に生まれ変わらせたのが新理事長石造高遠、無碍の父だ。2
2013-05-28 03:17:23上位3クラスは石造高遠が建てた新校舎に入っている。中でもプラチナクラスの教室は高遠の徹底したエリート主義、能力主義、信賞必罰の教育方針に基づいて、生徒一人一人の椅子も飛行機のファーストクラス並みの快適さだ。3
2013-05-28 03:48:50オレたちブロンズクラスの生徒は新校舎に入る機会はほとんどない。ましてやプラチナクラスの教室は、在学中に一度ものぞくこともなく卒業するのが普通だ。 勿論オレもプラチナクラスの教室に行ったことなど一度もない。いや、プラチナクラスに行く羽目になろうなんて思ったこともなかった。4
2013-05-28 03:49:15「天馬垂葉はいるか?」 石造の腰巾着の藤田波瑠哉だ。 「えぇ!なんで藤田様がこのブロンズクラスに!」 事情を知らないクラスの女子どもが歓声をあげる。 藤田は演劇部の副部長、天才子役としてテレビでも有名で、理事長のお声掛かりで芸術部門特待生としてプラチナクラスに入っている。5
2013-05-28 04:28:07「まさか天馬の友だち?!」 「有り得ない!」 いや、確かに友だちじゃないし、今まで口もきいたこともないけれど、余計なお世話だ! 教室の騒ぎを背にオレは黙って藤田について行く。 「あの天馬愛紗の双子の兄だというのでどんな奴かと思っていたが、中身だけじゃなく外見も大違いだなぁ」6
2013-05-28 04:37:31「ああ、そうだよ。いきなりカリフになるような妹とは違って、オレは中身も外見も平凡なただの一高校生だよ」 「こんなブロンズクラスをプラチナクラスに呼びつけるとは無碍様も物好きなことだ。こんな奴の力など借りずとも、私に一言言って下さればあんな女、私が葬り去ってさしあげるのに…」7
2013-05-28 04:53:56「無碍様こそ、天が人類に遣わされた生まれながらの支配者、世界皇帝になるべき御方。その行く手を阻む者はたとえカリフであろうともこの私が許しはしない」 え~っ?!いつの間に生徒会長選挙の話が世界皇帝とカリフの戦いになってるの?8
2013-05-28 06:16:10「貴様もブロンズクラスでも一応は実の兄なら、世界の支配者に相応しいのは頭脳明晰、眉目秀麗、文武両道に優れた石造財閥の御曹司無碍様以外にいないことを、あの女に分からせろ。いいな」 テレビではイケメン爽やかキャラだったこいつがこんな危ない奴だったとは… 完全に論点がずれている。9
2013-05-28 06:38:55なんでオレが無碍を褒め称えることになってるんだ?! しかしここでこいつ相手に世界皇帝とカリフの戦いの議論をしても仕方がない。オレは妹にカリフを辞めさせて普通の女子高生… カリフでない程度に普通の女子高生に戻ってもらえればそれでいいのだ。10 (#14 終わり #15に続く)
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