山本七平botまとめ/イスラエルに三十余年の平和をもたらしたヘロデ王とは②/「国家理性・権力理性」の体現者、ヘロデ王

山本七平著『存亡の条件――日本文化の伝統と変容――』/第二章 民族と滅亡/古代のスターリン、ヘロデ王/75頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①確かにスターリンもそれに似た事をなし得たわけだが、実にヘロデは、権力とは何か、秩序維持とは何か、政治とは何かを、あらゆる虚飾をはぎとり、目を背けたくなるほど赤裸々に示してくれる史上稀有の存在である。 とはいえ、その生き方は原則を口にすれば簡単であった。<『存亡の条件』

2013-06-01 18:27:50
山本七平bot @yamamoto7hei

②まるで闘技場の格闘士のように「勝ち残ること」であった。 すなわち内外のあらゆる反対勢力を打倒することである。 そしてそれに敗れ、権力を失った瞬間に、自分が死体になることをはっきり自覚していることであった。

2013-06-01 18:57:50
山本七平bot @yamamoto7hei

③従って彼は、単に政治家・外交家・大建設家あるいは陰謀家であっただけでなく、生涯ただの一度も敗れたことのない指揮官であった。 野戦で敗北したことはない。 ただ一度、部下の命令違反のため部分的敗戦があっただけである。

2013-06-01 19:27:44
山本七平bot @yamamoto7hei

④また個人としては稀有の武人であり、その弓術は当時世界一といわれ、攀闘ではただ一撃で相手を倒した。 また恐るべき強靭な意志をもち、どんなときにも恐怖に捉われることなく、的確に対処した。 紀元前31年に大地震があった。 その大被害の真最中にアラビア人が侵入してきた。

2013-06-01 19:58:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤被害と地震への迷信的恐怖と大軍の侵入にすっかり士気阻喪した部下への激励演説は、今読んでも立派である。 同時に彼は財政家であり、恐るべき強欲な蓄財家であった。

2013-06-01 20:27:48
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥彼については到底わずかな紙数では書き尽くせないが、私はかつて雑誌『諸君!』に発表された野田宣雄氏の「国家の利益と指導者の利益」を読んだとき、これはまさに「ヘロデヘの定義」だと思った。 要約すれば彼は「国家理性」あるいは「権力理性」の権化なのである。

2013-06-01 20:57:49
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦ヘロデがクリーンだとかスマイルだとかいう言葉を聞いたら「…羊の群を統治するのじゃあるまいし」と一笑に付したであろう。 …マイネッケの「近代史における国家理性の理念」の言葉は、まさにヘロデの言葉といえる 「国家の利益も常に同時に何らかの仕方で支配者の利益と溶け合っている」

2013-06-01 21:27:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧「国家にとって権力が必要であることを本能的に感じざるを得ない政治家は、また同時に、同じく権力への全く個人的な衝動が働いている、また働いていなければならない生身の人間である。」

2013-06-01 21:57:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨「なぜなら、たくましい意志的人間の個人的権勢欲がそのように付け加わらなくては、国家に不可欠な権力は決して獲得されないからである。」 「感情的動機を排除することは、決して完全には成功しえないし、また成功してはならないのである。」

2013-06-01 22:27:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩「そのわけはまさに、われわれが述べたように、原初的な権力衝動が政治家の血の中に必ずあるに相違ないからであり、また、権力衝動がなければ、政治家はその責務を尽くせないであろうから。」

2013-06-01 22:57:54