#雨傘の行方

はな @_hana_bee_

雨粒が、点、点、点、と落下する夜。心許ない八本の骨と薄いビニールに守られながら、私は息を止めてゆらり漂う。クラゲはね、死ぬと溶けてしまうんだよ。そう教えてくれた遠い人。曖昧に滲む脆い世界。私は海へ還る為の練習を繰り返す。 #雨傘の行方 http://t.co/aaqlWXdrhi

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蒼 @saran0214KS

好きと一度も言ってくれない憎らしい君に、気安く肩を引き寄せられ、沢山の不安と少しの幸せを抱き、雨の道を歩いていった。そこで引き返すべきだった。道ではなく、君への想いを。情けない自分に嫌気が差して、何もかもが面倒だった。ただでさえ憂鬱なのに。雨なんて、雨なんて大嫌い。 #雨傘の行方

碧 @mimimdr

本物の雨を受け止められるのは本物の傘だけ。どちらかが偽物だと傘は溶けてしまうのだ。999回目の雨雲に、僕は新品の傘を持って飛び出す。開いた瞬間、傘布が、骨が、持ち手が溶けていく。水になり流されていく傘を見送りながら僕はまだ見ぬ本物の雨と傘を思い描く。#twnovel #雨傘の行方

蒼山れい @aoimokuba

使い捨てのビニール傘。電車の中に置き忘れたら、どこかのちゃっかり者の手に渡ってしまったらしい。ああ、あれはあいつが貸してくれたものなのに。きっと憶えてもいないだろうけれど。すっかりくたびれていた傘と一緒にあいつへの気持ちも見失ってしまったようだった。　#雨傘の行方

te @te2090

僕は玄関でお留守番。毎日お出掛けできると喜んでたのに、梅雨まで三日坊主だったとは。今日は花柄の彼女の出番。#twnovel 一度家を出た仁美がまた戻ってきた。僕をベランダに出す。向かいのマンションにも色とりどりの仲間の姿。お日様がぽかぽか暖かくて、なんだか照れくさい。#雨傘の行方

ねむい @goodnigh__t

その足跡を辿って、きみが消えてしまったあの日に逃げよう。すべてを抱え込んで傷付いた心の、鋭い痛みを消してくれるのが今ここに優しく降り注ぐ雨ならば、僕は雨傘をそっと置こう。きみに手が届いた時、きみを闇空の下で見つけた時、きっときっと、空には虹が掛かっているよ。 #雨傘の行方

色彩 @LioN_A_LamB

今日たたまれた傘は、紫陽花の夢を見るの。それとも、海辺にひろげたパラソル。夏の陽射しに、その手を離れて。すやすや眠る、#雨傘の行方

ちとせ @chitoseyuri

朱に近い赤地に鮮やかな花が散る傘だった。一目で好きになった。厳しい家計を知り乍らどうしても欲しかった。母は躊躇った後、複雑な表情で買ってくれた。有頂天で下ろしたその日、手を滑らせて石畳に落した。骨が曲った。「大事にしないね。」母は嘆いて怒り、私の留守に黙って捨てた。　#雨傘の行方

ちとせ @chitoseyuri

算数嫌いが災いして大学を諦めたというのに取柄のない高校生が見つけて来た就職先は街なかの小さな金融機関だった。ひっつめ髪に紺の事務服。窓口業務にはいつまでも馴染めなかった。置傘にしていたのは中学時代から使った褪せた折畳み。結婚が決って退職する日、そっと捨てて来た。　 #雨傘の行方

ちとせ @chitoseyuri

「はい、これ」。散々待たせて現れ、欠伸交じりに傘を突き出す彼女に言葉が出ない。二ヶ月も前に貸したよそゆきのだ。いやに皺だらけで薄汚い。「ちゃんと畳んでくれたら？」やっとの思いで言うと「ふん。そんなの置傘ね。」と横を向いた。律儀に待っていた自分がかなしくなった。　 #雨傘の行方

ちとせ @chitoseyuri

「屑ゥ溜ってませんかァ…」疳高い声を響かせて小母さんが通る。白い手拭を顎で結び、色褪せた花柄の雨傘で日をよけて。「すみません。」母が呼ぶ。裏庭に廻った小母さんは棒秤で巧みに荷を量って前掛から小銭を出す。丁寧にお辞儀をした小母さんの傘は陽炎の立つ道を曲っていった。　 #雨傘の行方

はな @_hana_bee_

新月の夜、足を滑らせた星屑たちが、ぽとぽと、ぽとん、と降り注ぎます。 だから僕は、青い雨傘を逆さに差して、あの子の街まで歩くのです。 傘の内側では、小さな宇宙が、ちゃぽり、ちゃぽりと波打ちます。君に見せたい、小さな宇宙。 #雨傘の行方 http://t.co/f64CXTUzyJ

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ちとせ @chitoseyuri

泣きじゃくった胸の震えと呑みこんだ洟水の塩辛さと、音程の外れた祖母の歌声と。「雨あめ降れふれ、母さんが…」負われた私は丸く広い背に頬をすりつける。母の匂いとは違う、祖母の匂い。音痴をかなしみ乍ら歌が好きだった祖母は記憶に降る雨の中、傘を傾げてゆっくりと歩み去る。　 #雨傘の行方

あいね @aine_line

突風にさらされた雨傘がどうなったかなんてベタすぎて笑い話にもならない。いや「別れた恋人が追いかけてきたと勘違いした」と白状すればどうだろう。全て私の誤解だったというオチを添えてやる。ああ、傘は綺麗に閉じられるべきだ。そうでなければ凶器になる。 #雨傘の行方

弑那 @Cannibalism010

傘が無い。君の部屋に忘れてきたんだろう。ひどい喧嘩をして、口論の末に逃げ出したのは僕だった。君の目から溢れる水滴を見たくなくて。土砂降りの中、びしょ濡れで帰っていく僕を、君は窓から見送った。きっと今頃、君の部屋にも雨が降っているから、その傘は君にあげるよ。さよなら。 #雨傘の行方

ちとせ @chitoseyuri

帰り道はいつも遊び時間だった。友達と一緒なら鞄もち。道の真ん中で電柱毎にじゃんけんぽん！独りで帰る道は遠かった。溝蓋を踏み鳴らしたり、道沿いの家の塀を指で擦って通ったり。愉しいと思い込もうとした。雨の日には傘を打つ軽い音が嬉しかった。傘を傾けて燕の巣を見上げた。　#雨傘の行方

諦 @RAIN_CAGE

衝動の欠落。弾く雨粒は受容を拒まれた。「融けてしまうからね。」キミは笑う。祈る。「忘れてしまうの？」流れてしまうの、好きだったってことも？ 格子の隙間。外界と隔たれた檻の隅で。あの日の雨傘は死んでしまった。 #雨傘の行方 記憶の中、まだキミは笑っている。

弑那 @Cannibalism010

傘を捨てた。布地は裂け、無残に骨組みのへし折れたそれは、既に傘とさえ呼べない代物だった。忌ま忌ましい思い出の置き土産。八つ当たりと苛立ちと呪いを込めて、私はゴミ捨て場にそれを叩き付けた。明日には回収され、地球の一部になるだろう。さよなら。私は雨も傘も大嫌いになった。 #雨傘の行方

木船田ヒロマル @hiromaru712

#雨傘の行方 去る人の置き忘れたる雨傘は また雨降りを知らん顔する #jtanka

憂理 @yoruno_yuri

雫を体で受け止め、息をする、深く。黒い人間の言葉は落ち、静寂。ぱた、ぱた、柔らかく私を撫でる、洗うように滑っていく。膜を失った私を雨は慈しむ。濡れて惨めになると思った、でもずっと幸福だ。生きていけると思った。生身の肌でも世界を歩ける。膜を引き裂かれても、大丈夫。 #雨傘の行方

夜花 @bocsr69

ぽつりぽつり振りだした雨はぽつりぽつりと僕の心を濡らした。 ｢大丈夫だよ。もうすぐ雨はやむしこんなことには慣れているから。｣ 傘を差すことも滑稽に見えていただけ。ほんとうに滑稽なのはこの場にしかいられない僕の方。魚のように呼吸が出来たら、少しはましかな。 #雨傘の行方

ちとせ @chitoseyuri

「大丈夫、お傘差していくもん」。勢い込んで出たがちっとも遊べない。公園のベンチに置き忘れられた赤ちゃん帽が可哀想だ。いつもの砂場もよそよそしく知らん顔。私達はジャングルジムの下に立ち、透き通った雫を指でつついた。確かに仲良しと二人だったのに記憶の中では私ひとり。　 #雨傘の行方

九夜月 @oto_no_ya

風に飛ばされひらりと舞った赤い雨傘旅に出る #雨傘の行方 #都々逸

瀞石桃子 @momonove

ぽ、ぽ、ぽつ、ぽつぽつ、ポツポツ、ぽたぽた、ぽたたた、ぽたたたたた、ぼだぼだぼだぼだ、ぼだだだだだ、ざあざあ、ざあ──、ぁ──、────、────ぁ、──ざあ、だ、だ、だ、だ、ぽた、ぽた、ぽた、たん、たん、たん、た、た、た、た、──。 「雨、やんだよ」「あ、うん」 #雨傘の行方

九夜月 @oto_no_ya

ボクはずっと君の雨傘でいるのが嬉しかった。君を雨から守るのも、泣き顔を隠すのも、ボクの大事な役目だった。ただね、君と彼の口づけを隠してあげるのは少し辛い。だからボクは突然の風にさらわれたふりをした。これからは、彼と彼の傘が君を守ってくれるよ。 #雨傘の行方