- sukemori_t
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嘆き悲しむことのない普通の人の袖も寒さで冷えるこのごろ、ましてどんなにか流された涙で枕のしたが凍ることでございましょう。 成親さまとお別れになったあとのあなたさまのお袖は、涙の露の絶えないことでございましょう
2013-06-02 17:33:49[かへし 京極殿] 床のうへも 袖も涙も つららにて あかす思ひの やるかたもなし 日にそへて あれゆく宿を 思ひやれ 人をしのぶの 露にやつれて
2013-06-02 18:33:42[返歌 京極殿] 床の上にも袖の上にも涙のつららができ、悲しい夜を過ごす私はこの思いが慰められることもありません。 恋しい人を偲ぶ涙に身はやつれ、庭に茂る忍草は露にやつれ荒れてゆく私の住まいをご想像ください。
2013-06-02 19:33:46【右京たんの歌集を間にした定家卿とのやりとり】
老いて後民部卿定家の歌を集むることありとて「書き置きたる物や」と尋ねられたるだにも、人かずに思い出でていはれたるなさけありがたくおぼゆるに「『いづれの名を』とか思ふ」ととはれたる、思ひやりのいみじうおぼえてなほただ隔てはてにし昔のことの忘れがたければ「その世のままに」など申すとて
2013-06-01 17:33:47老いて後、定家卿が選集編纂との事で「家集などありませんか」と歌詠みの数に入れて下さったそのお心遣いが有り難く思える上に「どちらの名前で載せたいとお思いですか」とお聞き下さった事も大層有難く、今はもう遠い昔の事になってしまったのに忘れがたい名前ゆえ「昔お仕えしておりました時の」と。
2013-06-01 18:33:41言の葉の もし世に散らば しのばしき 昔の名こそ とめまほしけれ わたくしの歌がもし後の世に伝わるのでしたら、それは今もなお忘れることのできない、昔の召名こそ留めておきたいと思います。思い出と共に。
2013-06-01 19:33:47[返し 民部卿] おなじくは 心とめける いにしへの その名をさらに 世に残さなむ とありしなむ うれしくおぼえし。 [返歌] 民部卿定家 同じ事でしたら、あなたがそれほどまでに心に残しておられる昔のお名前をさらに後世まで残しましょう とあったことは嬉しいことでした
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