2010/09/17 ツイッター小説 お気に入りセレクト
ぐるぐる回っているものを見るのが好き。ホームベーカリーの中で生地が回っているのを見るのが好き。洗濯機が洗濯物を回しているのも好き。すり鉢でくるみが砕けていくのも好き。風力発電が音をたてて回っているのも好き。でも今は、夫が娘を高い高いして回っているのが一番好き。 #twnovel
2010-09-17 18:09:50#twnovel 追い掛けて来る声から逃れる様にその場を去った。君の手を取る勇気は僕には無い。愛を求めるその声に応えてしまわないうちに僕は逃げ出す。けれどもその晩雨が降り出して、段ボールの中で独り震える君を想像したら…傘を握って外に飛び出していたんだ。僕の家に来るかい?にゃあ!
2010-09-17 18:11:29ペンを忘れてペンを買う。 家に持ち帰りペンがたまる。 はずだが、いざ使おうとすると見つからない。 見つけたら今度はなくさないようにとどっかにしまう。 そしてなくなる。 ないのでまたペンを買う。 そうしてペンがどんどん増えていく。 はずだが、ペンは見つからない。 #twnovel
2010-09-17 18:24:20お前わがまますぎ、といいながら弾く彼のピアノが僕は好きだ。こういうのと言うとさらさらと音が流れていった。「今日弾いたのはなんて曲?」「別れの曲」じゃあ、もうこれで最後にする。引っ越すから、と言うと君は少し驚いていた。「やっぱりお前わがまますぎ」 #twnovel
2010-09-17 20:01:59#twnovel 和室にマットレスのテントができている。息子が「ひみつきち」と呼ぶシロモノだ。悪戯したくなって、そっと近づきギュウと押し潰した。「あーっ、ママ壊した!」振り向けばマンガを抱えた息子。マットをめくると、そこには夫の仏頂面が。あわてて唇で口封じする、爽やかな秋の午後。
2010-09-17 20:08:07夜空を見上げているとしゅんしゅんと光をこぼしながら落ちてくるものがあった。てのひらで受ける。星の子だった。元気がないのでハチミツを与えてみた。こくりと飲んだ。星の子はうれしそうに5回点滅してみせた。窓を開けてやると星の子はふわりと浮き上がり、夜空に帰っていった。 #twnovel
2010-09-17 20:09:50#twnovel 「ハッシュ、ついのべる」書き込むハッシュタグ。誰が読んでくれるかな、ドキドキしながら131文字の空白を埋める時間が黙々流れる。慣れない手つきでカタカタ打つキーボードはスタッカートだらけだけれど。今日を読んでくれるあなたの顔を思い浮かべて今日も書くも書いたり。
2010-09-17 20:27:51隣で寝てる田舎の母が語った。「お前が来るのを指折り数えてる時は良いけど。一週間は早いな。明日は何処へ行くんだ。お財布に気を付けてな。体に気を付けるんだよ。あたしは晩年、幸せだよ有り難うね。思い残す事は無いけど又お前が来る時まで頑張るよ。お休み」 #twnovel ☆
2010-09-17 20:42:35#twnovel ある日、雨の中、くまさんに出会った。着ぐるみのくま。突然の雨から避難する途中のようだった。びしょ濡れになって重い身体を揺らしながら。でも、小さな子とすれ違う時には、立ち止っておどけたポーズをして手を振って、また駆け出す。早く晴れるといいですね、くまさん。
2010-09-17 20:59:03実は、秋が実家に帰ってしまったらしい。夏と冬は四季を残業してそのカバーをしている。最初は春もそれなりにやる気だったのだが、ひどい花粉症で寝込んでいる。当然さらに夏と冬は重労働を強いられて。だから夏が暑すぎたり冬が寒すぎたりしても、許してあげようと僕は思う。 #twnovel
2010-09-17 21:38:56#twnovel 君たちがどのように習っているか知らないが、宇宙は肌寒い。そして決して静かな場所ではない。光が何十億光年も宇宙を旅するように、君たちが呟いた振動も聞き手を探して宇宙をさまよっている。宇宙は呟きに満ちている。僕の呟きが君たちの呟きと出会うまで、あと何億、何十億光年。
2010-09-17 22:10:08#twnovel 「あんた毎日なに食べてるの? まーこんな物食べてたら体力持たないでしょ。掃除もろくにしてないんだからまったくもー」「おい、誰だメインAIの設定を『田舎のおかん』モードにした奴は」「ていうか船長、なんでそんなモードがあるんですか」
2010-09-17 22:31:22#twnovel 楽の音がぴたりと止まりました。踊っていた踊り子もぴたりと途中で止まりました。「そこまでだ」と冷ややかな視線を送る月が言いました。舞台に乗せられた踊り子も楽団も散り散りになりました。残ったのは静けさだけでした。月はそれに満足してゆったりと沈んでいきました。
2010-09-17 22:37:18#twnovel 世界中の猫たちがいっせいに目覚め、周りにあるものすべてを食らい始める。植物でも動物でも石でも土でも猫以外のものは何でも。大地も海も空も。何もかもはぐはぐと食らいつくしたあとの虚無の底で、疲れた猫たちは丸く寄り添って眠る。次に生まれるだろう世界を夢に描きながら。
2010-09-17 22:42:41背の高いあなたを私はいつも見上げていたけど、あなたは背が低いと嘆いていた。あなたの顔はいつも遠くて、だから横になって眠るあなたが好きで。 今も私は枕の上であなたの横顔を見つめてる。私のためにずっと眠り続けてくれているのかもしれないけど、ねぇ、そろそろ起きて。 #twnovel
2010-09-17 23:00:12#twnovel 言葉も添えられていない、何も写りこんでいない、ただ空を切り取っただけの画像メールをケータイが受信する。それを見て僕はほっとする。写真を撮ってメールで送ることしか覚えられなかった老いた母からの連絡だから。僕の負担にならないようにと今日も一通だけ、送られてくる。
2010-09-17 23:25:03