メイキング・アゴニィ・フェイタル・ガール #2

アゴニィちゃんのお話・後編。これは忍殺なのか、それとも別の何かか。 前編:https://togetter.com/li/516253
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劉度 @arther456

メイキング・アゴニィ・フェイタル・ガール #2

2013-06-10 18:07:54
劉度 @arther456

(これまでのあらすじ:魔法使いでヤクザな危険人物、田神の始末を依頼され事務所に乗り込んだ魔法使いのサムライ、光彦。しかし魔法使いのドM、仁夏を盾にして田神は逃げようとする。魔法使いという言葉がゲシュタルト崩壊する中、光彦は田神の車を破壊するが……)

2013-06-10 18:09:03
劉度 @arther456

(番組の途中ですがCMです。#ryudo_ss を実況ハッシュタグとして用意いたしました。もしも感想とか実況とかコッチに書き込んでくれると、作者がとてもとても喜びます)

2013-06-10 18:18:27
劉度 @arther456

ビルに車が突撃するような事故があれば、普通、中から人が飛び出してくる。だが幸いにしてこのビルは無人だった。田神の事務所の前にあった製薬会社は、彼の気まぐれで嫌がらせを受けて移転してしまった。ここに人が残っていれば、すぐに警察が呼ばれただろう。1

2013-06-10 18:10:54
劉度 @arther456

光彦が田神の乗った車に歩み寄る。車はほとんどスクラップで、後部座席には座席に足を挟まれて動けない田神がいた。「き、貴様……」頭を打ったのか、焦点の定まらない瞳で光彦を睨む。それに構わず光彦は、車に刺さっていた刀を引き抜くと、田神の頭に突き刺した。2

2013-06-10 18:14:01
劉度 @arther456

「あ」死霊術師の最期の断末魔にしては、余りにも間の抜けた声だった。刀を引き抜くと、ズルリと田神の死体が崩れ落ちる。再び動き出さないことを確認すると、懐からタバコとマッチを取り出して、車に背を向けた。3

2013-06-10 18:16:47
劉度 @arther456

「ぁぁぁあああっ!」目の前に突然人が落ちてきて、潰れ、すぐに修復されて立ち上がる。ラバースーツに黒い眼帯、そして全身に刺さった針。机の下からどうにか這い出してきた仁夏だった。4

2013-06-10 18:19:10
劉度 @arther456

「……もう田神は殺したぞ。いまさら戦う理由は」「ありマス!」 叫んで、仁夏が拳を振り下ろす。すでに光彦は見切っている。「もっともっと、アナタからイタミが欲しいんデス! あなたの剣の軌跡が、迷いなく私の体を真っ二つにしようとする感触を、一杯いっぱい味わいたいんデス!」5

2013-06-10 18:22:13
劉度 @arther456

叫びながら少女が回し蹴りを放つ。遅い。下がって避ける。爪先が光彦の腹の前でピタリと止まる。直感的に光彦は横に飛ぶ。爪先から発射されたタタミ針が脇腹を掠めた。「だったら……」光彦が剣を抜いた。歓喜の悲鳴を上げて、仁夏が突っ込んでくる。6

2013-06-10 18:25:27
劉度 @arther456

「あっちに相手してもらえ!」その胸に向けて光彦が剣を突き出した。研ぎ澄まされた刃先はやすやすと彼女の体を貫く。そして柄まで貫く前に、彼は刀を握る手を放した。「アーイ……え?」胸に刀が刺さったまま、仁夏の体が吹き飛ばされる。7

2013-06-10 18:29:25
劉度 @arther456

ゴォン、と鈍い音とともに、仁夏の体が車のドアに貼り付けられた。「な、なんですか、これ」そこにゆっくりと光彦が近づいてくる。刺さったまま動けない仁夏はタタミ針を撃つが、当たらない。ある程度近づいたところで、光彦は咥えていたタバコを彼女に向かって放り投げた。8

2013-06-10 18:32:11
劉度 @arther456

「ちょっと……!」足元には、車から漏れ出るガソリンの水溜まり。9

2013-06-10 18:35:03
劉度 @arther456

「あっ、アアアアアアアア!?」仁夏の体が燃え上がる。燃えて、治って、また燃える。全身を覆う苦痛の輪廻に、彼女は抵抗することもできず悶えるしかない。燃え尽きるまで続くようにも見えたが、その終わりは唐突にやってきた。10

2013-06-10 18:37:09
劉度 @arther456

一際大きな音を立てて、車が爆ぜた。ガソリンタンクに引火したのだ。光彦はとっくに車から離れて、新しいタバコに火をつけている。爆風がタバコの煙を乱すが、そんなことは気にしない。これだけの爆発だ、すぐに警察がやってくるだろう。その前に逃げなければ。そう思った矢先だった。11

2013-06-10 18:39:31
劉度 @arther456

ベコン、と何かがへこむ音がした。燃え上がる車からだ。ベコン、ベコンと更に二回、三回。おかしいと思った光彦が振り返る。燃えている車がもう一度爆発した。ボンネットやフロントガラスの破片、それらに混じって。12

2013-06-10 18:41:58
劉度 @arther456

「ミツ、ヒコ、サァァァン!」全身に火を纏い、胸に刀が突き刺さったままの仁夏が、光彦に向かって一直線に駆け出してきた。13

2013-06-10 18:44:17
劉度 @arther456

反応する間もなく、光彦はアスファルトに押し倒される。燃える肌を押し付けられ、じゅうっと嫌な音がした。馬乗りになった仁夏が光彦の顔に拳を振り下ろす。その体に針は刺さっていない。さっきの車の残骸を吹き飛ばすのに使い切った。それでも痛いものは痛い。14

2013-06-10 18:46:48
劉度 @arther456

「アハハッ、燃やされる、のは久しぶりですけど、刺されたまま爆発、するのは、初めてでした! 光彦、サン、やっぱりアナタ、天才デス! イタミを、与える、天才デス!」文字通り身を焦がす快感に体を震わせながら、仁夏は何度も光彦の顔を殴りつける。15

2013-06-10 18:49:40
劉度 @arther456

イタミで幸せにしてくれたのだから、イタミをお返ししてあげる。極上の痛みを与えてくれた彼に対する、彼女なりの真剣な礼だった。もっとも、光彦にとってはただの暴力でしかないが。16

2013-06-10 18:53:25
劉度 @arther456

「もっともっと、イタミを、下さいっ!光彦、サンの技を、見せて下さいっ!もっと私を、シアワセに……」「悪いが」殴られるままだった光彦の腕が、仁夏の首を捉えた。「ひぐっ!?」「俺の剣は、見世物じゃない」17

2013-06-10 18:58:13
劉度 @arther456

人の域を超え、『魔法』と呼ばれる剣術に必要なものはいくつかある。鋼鉄を切り裂く腕力。数メートルの距離を一歩で踏み込む脚力。銃弾すら見切る動体視力。そして、振るう刀を支えるための握力。18

2013-06-10 19:01:18
劉度 @arther456

無造作に握り締めた光彦の手は、仁夏の首を絞めるどころが血管と気道を握りつぶし、脊髄を破壊した。体に繋がる神経を絶たれ、仁夏の体がだらんと弛緩する。それでも彼女の体は自動で再生しようとするが、光彦に握り潰されている間は治りようがない。19

2013-06-10 19:04:22