【よいこのツイッター絵本 vol1.マッチ売りの少女とカウボーイ】
◇寝る前の良い子のみんなに、絵本を読み聞かせてあげよう。今回の絵本は貧乏ながらも必死に生きる少女が登場する、大変にハートフルな絵本だ。おそらく人生の指標とかにもなる。◇
2013-06-11 23:01:09あるひどく寒い日のこと。雪がちらつく空を夜の帳が覆い、人々が口を揃えて夜だと言うであろう時間帯。大晦日の街を一人の少女があるいていました。 -1
2013-06-11 23:02:17少女は頭には何もかぶらず、足にも何もはいていません。しかし、最初から何もはいていなかったわけではなく、家を出たときには確かにはいていたのです。 -2
2013-06-11 23:03:06少女がはいていたのは、お母さんがはいていたくつでした。いつも大きくぶかぶかのくつをはいていた少女は運悪く、先ほど馬車にひかれそうになったときになくしてしまったのです。 -3
2013-06-11 23:03:43その乱暴な運転の馬車の行く先々ではたくさんの悲鳴があがりました。その騒ぎのさなか、誰も彼女のことを気にする人などおりません。 -4
2013-06-11 23:04:05少女が落としたくつは、騒ぎを聞きつけてやってきた浮浪児の子供が拾って持ちさってしまいました。彼はこのくつが、いつか自分に子供が生まれたらゆりかごにできると思ったのです。やがて数発の銃声が聞こえ、集まっていた人々も散り散りに逃げ出しました。 -5
2013-06-11 23:04:41くつをなくしてしまった少女は、はだしで雪の降り積もる街を歩いています。彼女の小さな足は寒さで真っ赤になり、あちこちに傷ができていした。 -6
2013-06-11 23:05:08少女は古いぼろぼろのエプロンのポケットにたくさんのマッチを入れて、それを売ろうとしています。マッチは、お父さんが少女に持たせたものでした。 -7
2013-06-11 23:05:42「マッチはいりませんか マッチはいりませんか」少女がか細い声を振り絞っても、大晦日の街は家路を急ぐ人ばかりです。男の人はコートのえりを立てて、女の人はふかふかのかざりのついたコートを着て足早に行き交うばかり。 -9
2013-06-11 23:06:54少女は朝からマッチをずっと売っていましたが、誰ひとりとしてマッチを買う人はいませんでした。それどころか、彼女に僅かな食べ物やお金ですら誰ひとりとして渡そうとしなかったのです。 -10
2013-06-11 23:07:18街をさまよう彼女の長い金色の髪には雪が積もり、肩にも雪が積もっています。しかし、彼女が気にしていたのはそのことよりも、今日が大晦日だということでした。家々の窓には明るい光が灯り、鵞鳥(がちょう)を焼くおいしそうな香りもします。微かに、子供の楽しそうな笑い声も聞こえます。 -11
2013-06-11 23:08:53少女はふたつの家が角をつくっているところを見つけると、そこに小さくなって座りました。風が吹き付ける通りよりは幾分ましでしたが、それでも真冬の夜は寒く、彼女の小さな手足は冷たくなって震えています。 -12
2013-06-11 23:10:08夜が更けるほどにどんどん気温は下がります。けれども、少女は家に帰るわけにはいきませんでした。なぜなら、マッチが一本も売れていない上にくつまでなくして家に帰ればお父さんにぶたれるからです。 -13
2013-06-11 23:10:33少女はなんとか暖を取ろうと、かじかんだ手で束の中から一本のマッチを取り出して擦りました。マッチをシュッとこすると、目も眩むようなまばゆさでマッチは燃えました。その火でせめて指先だけでも温めようと考えたのです。 -14
2013-06-11 23:12:34マッチの火は、小さな体の少女にとってはまるで大きなストーブの前に座っているかのように感じられました。真鍮でできたそのストーブにともる炎は、周りに祝福を与えるかのように燃え盛っています。 -15
2013-06-11 23:13:09少女はもっとよく温まろうと足を伸ばそうとしました。しかし、そのストーブは煙のように消えてしまい、後に残ったのは手の中の燃え尽きたマッチだけでした。 -16
2013-06-11 23:13:38少女はマッチをもう一度こすれば同じように暖まれると思い、束の中から一本のマッチを取り出しました。 「お嬢ちゃん、火を売ってくれ」 -17
2013-06-11 23:17:09少女が我にかえって見上げたのは、帽子をかぶった男でした。男のかぶる見たこともない帽子はつば広で、革のリベット打ちのジャケットを着ています。彼の胸元には薄汚れた星形のバッチが、そして腰には冷たく光る拳銃が二丁、下げられていました。 -18
2013-06-11 23:17:54無精髭を生やしたその男の異様な風体に、少女は少し戸惑いましたが、マッチを売ることにしました。正直なところ、マッチを買ってくれれば誰だって良かったのです。 -19
2013-06-11 23:18:35「マッチ、どれだけ買ってくれますか」少女は一本でも売れれば、と思っていました。少しでも売れれば、お父さんも許してくれるかもしれません。 「全部だ」 -20
2013-06-11 23:19:39少女は言われるままに、戸惑いながらもマッチをすべて差し出します。男は、自分も少女の隣に座ってマッチを受け取るとに金貨を三枚渡し、ブーツでマッチを擦ってタバコに火をつけました。 -21
2013-06-11 23:20:24