鳥山仁さん(@toriyamazine)の商業小説の分類法

参考にさせていただきたく、まとめてみました。ほぼ自分用(苦笑。なんか、カテゴリーが今ひとつぴったり来てないな……。
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鳥山仁 @toriyamazine

(1) 【娯楽小説論・試論】(娯楽小説と商業小説の差異。及びに非娯楽系商業作品の分類)  「娯楽小説」というジャンルは、かなり頻繁に「商業小説」や「大衆小説」(どちらも「芸術」との対義語として用いられている)と同一視されるが、これは完全な誤解である。

2013-06-22 06:36:50
鳥山仁 @toriyamazine

(2)  その理由は、前述したように「予想外」の事態を引き起こす(あるいはものの見方を提示する)のが娯楽の本質だからである。従って、娯楽小説は往々にして常識を否定するし、権威をコケにするし、倫理や道徳はかなぐり捨て、守るべきはずの弱者を滅多打ちにする。

2013-06-22 06:37:10
鳥山仁 @toriyamazine

(3)  どれも正常な社会では「~すべき」という範疇に含まれる=予想の範囲内の価値観であるため、娯楽小説で取り扱われる際に作者が物語上で「予想外の事態」を引き起こした結果として、これらの価値観は否定されてしまうわけだ。

2013-06-22 06:37:25
鳥山仁 @toriyamazine

(4)  これが面白さの本質なのだが、残念ながら世の中の全ての人が、予想外の出来事や価値観に対して「これは面白い!」と思うわけではない。

2013-06-22 06:37:38
鳥山仁 @toriyamazine

(5) むしろ人口の何割かは予想外の出来事に対処できず、パニックを起こして頭の中が真っ白になってしまったり、「こんなモノは必要がない」とか「こんなモノは下さらない!」と感情的に喚き散らす。

2013-06-22 06:37:52
鳥山仁 @toriyamazine

(6)  彼らには共通した特徴がある。それは未来予測をする際に、希望的観測=自分の望んだ都合の良い未来「しか」思い浮かばないというものだ。

2013-06-22 06:38:05
鳥山仁 @toriyamazine

(7)  平均的な予測能力を備えた人間は、未来予測をする際に経験や知識を用いていくつものパターン思いつく。そして、その大半は現実、すなわち「自分の望んだ都合の良い未来を阻害する諸々の要素」についての細かい予想になる。

2013-06-22 06:38:52
鳥山仁 @toriyamazine

(8) といっても、ここでも具体的な例を挙げねば分かりづらいだろうから、作家志望の男性を想定して考えていこう。男性は作家を志望しており、某出版社の賞を狙って小説を執筆しようとしている。当然のことながら、彼の望んでいる未来は「応募した小説が賞を取り、華々しくデビューできる」事だ。

2013-06-22 06:39:14
鳥山仁 @toriyamazine

(9)  そこで、この男性が今後について予測しつつ、小説を執筆するわけだが……平均的な人間であれば、 1.〆切までの日数 2.要求されている文章量 3.要求されているテーマやジャンルや内容  の最低3要素を考慮に入れた〝予想〟をたてて執筆に入る。

2013-06-22 06:39:37
鳥山仁 @toriyamazine

(10) たとえば、自分が1日に執筆可能な文章量から逆算して、1つの作品を仕上げるまでに必要な日数を逆算するのはもちろんのこと、たとえばアルバイトをしているのであれば、その間は執筆ができないのだから、アルバイトで削られる執筆時間を考慮して……

2013-06-22 06:39:57
鳥山仁 @toriyamazine

(11)  ……作品が完成するまでにかかる日数を予め水増ししておくとか、小説のアイデアが決まってから、作品募集をしているレーベルと自分の作品の傾向が一致しているかどうか……など、予測すべき要素は多く、またその為に幾つもパターンの予測をする事になる。

2013-06-22 06:40:09
鳥山仁 @toriyamazine

(12)  そして、その予測が「自分の望んだ都合の良い未来」と異なっていたりかけ離れていたりする場合は、計画を中止するか「都合の良い未来」の内容を変更するかのいずれかを選択する。

2013-06-22 06:40:35
鳥山仁 @toriyamazine

(13)  たとえば、自分が書きたいテーマで小説を書いていると、必要とされる資料が多すぎて、それらを集めるだけでも時間がかかり、とても〆切までには間に合わないという予測が成立したとしよう。

2013-06-22 06:40:48
鳥山仁 @toriyamazine

(14)  そうなったら、書きたいテーマを変えるか、あるいは応募を諦めて別の出版社の賞を狙うか……いずれにせよ「想定していた都合の良い未来」を一度リセットするか変更する必要に迫られる。

2013-06-22 06:41:25
鳥山仁 @toriyamazine

(15)  ところが、希望的観測=自分の望んだ都合の良い未来「しか」思い浮かばないタイプの人間には、こうした予測ができない。漠然と「この状況はまずいんじゃないか?」ぐらいは思いつくらしいのだが、最初に立てた希望的観測を変更する事が難しいらしいのだ。

2013-06-22 06:41:45
鳥山仁 @toriyamazine

(16)  その結果として、彼らの予測は外れやすいか、あるいは外れた時に次善の対処法がないという、極めてリスクの高い代物になってしまう。当然のことながら、予想が外れれば精神的なダメージを受けるし、次善の対処法を考えておかなければ、失敗が挫折と同義なので無力感を味わう事になる。

2013-06-22 06:42:31
鳥山仁 @toriyamazine

(17)  このような経験を繰り返していると、 A.現実とは醜いものだと感じるようになる(あるいはそのバリエーションで、人間性悪説を提示する)。

2013-06-22 06:42:50
鳥山仁 @toriyamazine

(18) B.予想外の出来事に対して極端に怯えたり逆に憎悪したりするようになる。これがひっくり返ると、何事にも根拠や必然性を要求したり、自分の価値観から逸脱した事象に関しては価値観を認めず「下らない」とか「必然性がない」などと必要以上に貶めようとする。  という価値観を身につける

2013-06-22 06:43:05
鳥山仁 @toriyamazine

(19)  そして、繰り返しになるが、これらの価値観と面白さを尊ぶ価値観は根本的に相容れない。ところが、商業創作の場では上記2つの価値観及びに、それらの価値観の持ち主は混ざり合い、互いに互いをこき下ろすのに余念がない。

2013-06-22 06:43:27
鳥山仁 @toriyamazine

(20)  娯楽系の作家や編集にとって非娯楽系の商業作品は「詰まらない何か」だ。その大半は物語に起伏=予想外の状況が生じることがなく、あっても非現実的か、あるいは主人公が致命的なダメージを負うことがないように〝安全装置〟が念入りに準備されており……

2013-06-22 06:43:42
鳥山仁 @toriyamazine

(21)  ……更にストーリーの展開は固定化されている場合が多く、とどめにそれらには「必然性」か「伏線」が提示されているという……私が典型的な娯楽系の作家なので仕方が無いのだが、こうやって書いているだけで「一体何が面白いのかがさっぱり理解できない代物」である。

2013-06-22 06:43:56
鳥山仁 @toriyamazine

(22)  しかし、そもそもこうした作品を要求する編集や読者、及びにこのパターンの作品を書きたい作家にとって、「面白さ」=予想外の出来事はむしろ嫌悪の対象だったり、恐怖の象徴だったりするのだから当然の結果なのだ。

2013-06-22 06:44:15
鳥山仁 @toriyamazine

(23)  さて、既に前振りをしてあるように、非娯楽系の商業作品には、以下のパターンが存在する。 ① 話に起伏がない=予想外の出来事が起こらない ② 予想外の出来事が起こっても非現実性が高い(幻想文学・ファンタジー小説・児童文学系)

2013-06-22 06:44:50
鳥山仁 @toriyamazine

(24) ③ 予想外の出来事が起こっても、主人公が傷つかないように〝安全装置〟が設けられている設定。(無敵主人公or高度の予想能力を備えた〝やれやれ系主人公〟。異様に物わかりの良い=常に主人公を全肯定してくれるヒロインorヒーロー)

2013-06-22 06:45:07
鳥山仁 @toriyamazine

(25) ④ ストーリー展開をする際に、執拗なまでに要求される「必然性」や「伏線」(ミステリを代表とするパズル系作品群。ただし、短編の場合は娯楽作品と区別がつかない。また、ミステリ系の構造を利用した娯楽作品も存在する)

2013-06-22 06:45:31