日本語を「正しさ」でなく、「ふさわしさ」で考えてほしい

「美しい」「正しい」という二つの形容詞が、昨今、売れる日本語本のキーワードになっています。しかし、言葉を客観的に捉える言語学者は、この二つの形容詞を危険視しています。なぜか。それは、いずれも主観の問題に過ぎないからです。
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日本語を「正しさ」の次元からではなく、「ふさわしさ」の次元から考えてほしいという思いを込めて、本書を書きました。 http://t.co/HP0OHSEa9f 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 12:58:27

『日本語は「空気」が決める 社会言語学入門』 (石黒圭、光文社新書)

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「美しい」「正しい」という二つの形容詞が、昨今、売れる日本語本のキーワードになっています。しかし言葉を科学的に、つまり客観的に捉える言語学者は、この二つの形容詞を危険視しています。なぜか。それは、いずれも主観の問題に過ぎないからです。 http://t.co/nJMRGlFJUH

2013-06-28 12:59:48
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たとえば、「おやじ」という言葉は醜く、「お父様」という言葉は美しいのでしょうか。そんな単純化はできないでしょう。「おやじ」に美と愛着を感じる人もいますし、「お父様」に美を見出さず、嫌味だけを見出す人もいますhttp://t.co/iBmUE9Uqvk 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 13:00:50
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また、「あいつ」と言われれば、見下されているようで普通は腹が立ちます。ところが、名探偵コナンで毛利蘭が幼なじみの恋人である工藤新一を思い出して「あいつ」と口にするときは、万感の思いがこもり、そこには美が存在するように思えます。 http://t.co/EtLMHKyLGi

2013-06-28 13:01:40
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「正しい」という言葉にも問題があります。言語学では、「規範」と「記述」という考え方があります。「規範」というのは意識のうえでの正しさであるのに対し、「記述」というのは現実にこう使われているという意味での正しさです。 http://t.co/RqgvnQKJHD 石黒圭氏

2013-06-28 13:03:47
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たとえば、「見れる」のような「ら抜き言葉」、「飲まさせる」のような「さ入れ言葉」、「行けれる」のような「れ足す言葉」は、眉をひそめる人もいるでしょう。少なくとも書き言葉では通用しません。これらは「規範」という意味では正しくありません。 http://t.co/uaFvvppiwr

2013-06-28 13:05:16
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ところが、ググってみればすぐにわかるように、「ら抜き言葉」や「さ入れ言葉」や「れ足す言葉」、これらはすべて普通に使われています。つまり、「記述」という面ではすべて正しいわけです。 http://t.co/8m7JeKE7LF 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 13:08:29
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言語学者の言う正しさは「記述」の正しさです。言葉は変化していくし、それにつれて正しさも変化していくものです。言語学者が考える正しさは、今どれくらいの人が使っているかで決まります。 http://t.co/cTwOATUBVn 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 13:09:41
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相手が不快に感じなければ、規範的な正しさなど無視してよいのです。しかし、一人ひとりは弱いもので、自分の表現力にさほど自信が持てません。そこに、現実離れしたある種の「正しさ」を売りにする識者の「商売の余地」が生まれるわけです。 http://t.co/i5Xn9RuzOD 石黒圭氏

2013-06-28 13:13:39
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「美しい」「正しい」に代わる言葉を探した結果、私は「ふさわしい」という言葉にたどり着きました。「ふさわしい」というのは、聞き手や話題、目的や場面に合った適切な言葉を使うこと。この適切さのしくみを研究するのが、社会言語学です。 http://t.co/QNrtPZA3tm 石黒圭氏

2013-06-28 13:16:40
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私たちは、上司に対する言葉、友人に対する言葉、家族に対する言葉などを巧みに使い分けています。その場その場に「ふさわしい」日本語を使い分けられるというのは、外国語を話せるのに匹敵する、途方もない優れた能力なのです。 http://t.co/PG2A5OAxYU 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 13:21:40
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本来言語は一次元的な構造です。言葉は一瞬で全体像を見ることはできず、1行1行を追っていき、徐々に頭の中で意味や全体像が形成されるリニアな構造体なのです。 http://t.co/qXKwZgBjEq 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 13:24:12
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文章理解では、書かれていないものまで推論で読む(=行間を読む)というおもしろい性格があります。そういった芸当がなぜできるかを考えると、書かれていることの大半はすでに聞いている人の頭の中にあると考えて、初めて辻褄が合います。 http://t.co/t9TsYrK0TH 石黒圭氏

2013-06-28 13:28:52
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本書を読んで「おもしろい」と思っていただけるかもしれませんが、書いてあることの8~9割はすでに読者の頭の中に存在していることかもしれません。では、なにが新しいのかというと、言葉のつむぎ方です。 http://t.co/kGiM9v1wQT 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏

2013-06-28 13:32:00
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言葉のつむぎ方によって、知っている断片から新たな知識が生成されるのです。すでに存在する断片的な知識を、一定時間強制して文字列を追わせ整理させることで読書は成り立っている。脳の情報が更新されることが、読書の快感かもしれません。 http://t.co/I2R98ocB62 石黒圭氏

2013-06-28 13:34:46
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もし一定時間強制して文字列を追わせ、頭の中を整理させることで読書は成り立っているとすれば、それは読者の頭の中の記憶を変えていることになります。言葉を与え続けることで少しずつその形を変えることができるのです。 http://t.co/0CLOXM0Xax 石黒圭氏

2013-06-28 13:36:39
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今後は、文字を読んだり音声を聞いたりすることで頭の中の整理を強制する装置である言葉の不思議さと怖さの二面性を、同時に伝えられるような研究を発信していけたらと思っています。 http://t.co/sCbRDbUYCQ 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏インタビュー

2013-06-28 13:37:24

元記事はこちら

リンク WEDGE Infinity(ウェッジ) 場面に「ふさわしい」日本語 身近に感じる言語学 私たちが普段当たり前のように使っている言葉。「美しさ」や「正しさ」に代わる、日本語の新たな捉え方について考える。

石黒 圭(いしぐろ・けい)
1969年大阪府生まれ。神奈川県出身。一橋大学国際教育センター・言語社会研究科准教授。一橋大学社会学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文章論。主な著書に『文章は接続詞で決まる』(光文社新書)、『正確に伝わる! わかりやすい文書の書き方』(日本経済新聞出版)、『この1冊できちんと書ける! 論文・レポートの基本』(日本実業出版社)などがある。

本多カツヒロ(ライター) 1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

寄せられたコメント

langstat @langstat

場面に「ふさわしい」日本語 身近に感じる言語学 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏インタビュー WEDGE Infinity http://t.co/NgHL48UBl2 なに、「『美しい』『正しい』という二つの形容詞が、昨今、売れる日本語本のキーワードになっています」だと…

2013-06-28 12:51:34
林けいこ @keikomaa

場面に「ふさわしい」日本語 身近に感じる言語学 『日本語は「空気」が決める』 石黒圭氏インタビュー WEDGE Infinity(ウェッジ) http://t.co/eK8ziLtQA3 言葉のつむぎ方によって知っている断片から新たな知識が生成されるのです。確かにそうです。

2013-06-28 13:44:55