第一回大罪大戦《負-2の狭間》【戦闘フェーズ02】

紅(ルージュ)は怠惰、スロウス[ @siroeda_sin ] 黒(ノワール)は憤怒、イラ[ @Fiteenl_sin ] 黒は旧紅強欲、グリード[ @HeNotShe_sin ] 虚(ゼロ)は傲慢、モデスト[ @pannda_sin ]
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スロウス @siroeda_sin

「……それもそうだな」 短く返答し、口を閉じる。分かっていることを、再確認しただけ。それで、帰してやろうと決めた。 飾り立てた百合が、白と紅の中で輝く。……その意図に気付いたのは、女がその言葉を発してから。 見れば、自在に操られていた金は、全て無くなっていた。→

2013-07-04 00:03:49
スロウス @siroeda_sin

もう一度、飾られた百合(Ira)に視線を戻す。一体何があったのか、知る由はないが。 女は、『そう』する相手を求めていたのだろうか。少女は、もしかすると、『それ』足りえたのではないか。 意味のない思考が、ぐるぐると頭を回る――手を伸ばそうとして、手が塞がっていることを、思い出した。

2013-07-04 00:05:00
LiljaのIra @Fiteenl_sin

彼のそれを聞いて、女はどこか安堵したような、それでいてなにか妙な焦りのような色を僅かに浮かべて、しかし閉じた眼にそれを押し殺す。 すぐに眼を上げて立ち上がろうとする、その寸前に彼のその様子に気付いて、両腕を伸ばした。その腕に座らせるように、肩に凭れるように、少女を片腕に預ける。

2013-07-04 00:30:23
スロウス @siroeda_sin

僅かに浮かんだ色に気付いたかどうか、判別はつかない。 「……悪いな」 彼女の手伝いを受けて、少女の身体を持ち直す。座らせるのは、左腕に。無事な右手は空けておかないと、何となく不安だった。 落とすことなく確りとと抱え、立ち上がる。……女の頭に一度ぽん、と手を置いて、そっと離れた。

2013-07-04 00:43:44
LiljaのIra @Fiteenl_sin

礼の声には軽く肩をすくめるだけで応える。そうしてから抱えられたその顔へと視線を向けかけて、その最中に視界が翳って軽い感触。すぐに離れたそれに思わず、撫でられた頭へと手をやった。 なにをと、困惑から問いかけようとして、不意にその姿の向こうの景色に眼を取られた。 ——紅の、扉が。

2013-07-04 01:34:27
スロウス @siroeda_sin

扉の気配が、終わりを告げる。唯一人生き残った『罪』に呼応した、紅の扉。 意志を持って開けば、それで終わる。この狭間は消え去り、全てが無に帰す。崩れた神殿も、散らばった武器も――死者も、生者も。 それを見、一歩踏み出して…… ――何だよ、何だ、甘い人だ……! 後方を、見遣った。

2013-07-04 02:31:22
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

『 満ち足りて、しあわせでありますように 』

2013-07-04 02:45:02
LiljaのIra @Fiteenl_sin

——『終わった』あと、扉は、一つしか開かない。 それが、狭間の理なのだろう。視線を巡らせれば、己の背の先、紅のそれとはまた別のぼんやりとした輪郭が、陽炎のように揺らいではいたけれど。 また、と思う。思った所で、視線を感じて、そして顔を向ける。薄青を見て、女は不思議そうな顔をして。

2013-07-04 08:34:19
LiljaのIra @Fiteenl_sin

そして、右手を挙げる。肩の高さ。思考は勝手に反芻する、最後に飲んだ酒精の苦さ。 ——帰ったら、きっとまた皆、怪我をして来るだろうから、薬を用意しておいて。 ——あの虚からの来客が崩してしまった円卓を、スペルビアに直してもらって。 ——全員で。

2013-07-04 08:34:20
LiljaのIra @Fiteenl_sin

「悪いけど、あたし自身はあげられないわ。先約済みだから」 ——グラはきっとお腹を空かせて戻るだろう。ルクスーリアは澄ました様子で笑うだろうか。スペルビアは王の剣を従え皆を出迎えるはずだ。元通りの円卓を、アーチェディアの声で、全員で囲んで。 「……ついでだから一つ『呪い』をあげる」

2013-07-04 08:34:21
LiljaのIra @Fiteenl_sin

——七つの椅子を五人で埋めて、食事をしながら雑談して。好きなように散らばってまた扉が開く時には集まって。顔を合わせて声を交わしてあの城で、日を数えて。 ——名を呼ばれるのが、好きだった。 やんわりと笑んで、緩やかに手を振って。そして。 「——『さようなら、紅(ルージュ)』」

2013-07-04 08:34:23
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

イラが紅に別れを告げたその時だ。薄ぼんやりとその存在だけを匂わせていたもうひとつの扉が、確かな形を作ったのは。 もはや『罪』でないイラには、開かれるはずのなかった扉。狭間の理に反して姿を見せたそれが、はたして黒への帰路たるか、『罪』でないものを通すかどうか、わからない。けれど。

2013-07-04 10:32:26
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

あなたのしあわせが、そこにしかないのなら。

2013-07-04 10:32:32
スロウス @siroeda_sin

視線を向けた先で一瞬、呆けたような表情が浮かぶ。虚を突かれたような、意味が分からないというような。 ゆるりと手が上がり、反応は、拒否。先約済みの言葉に、過る姿――ああ、『アイツ』か。 「なら仕方がないな。持っていくと面倒そうだ」 女の口許が弧を描く。その先で『扉』が、形を成した。

2013-07-04 14:28:20
スロウス @siroeda_sin

驚いたように、目を見開く。こいつは、本当に。 ――呆けたその間に、『呪い』が、耳を打つ。紅の扉を掴む。緩く笑って、口を開いた。 「……この先、『怠惰』に身を任せないことだ」 初めて、座に反する言葉を贈る。名も知らぬ、黒の魔女へと――俺は、『そこ』にいるのだから。

2013-07-04 14:29:09
LiljaのIra @Fiteenl_sin

小さく笑い返す。言ってしまって良いのだろうか、彼が、それを。それが『座』だろうに。 「――心配いらないわよ、あたしは『イラ』だから」 『怠惰』の場所に行くことは、ない。そう言い切ってみせて、そして女は今度こそ口を噤んだ。 背後の扉には、気づいている。――もう、届かないという事も。

2013-07-04 18:16:44
LiljaのIra @Fiteenl_sin

――無我の世界を、百合に。込めて、贈ろう、幼い強欲に、弱い虚に、白い『百合』へ。 ――世界という名の枷を失った、無我の暴走に、『人間』の身体が耐えられるはずも、ない。遠からず、呑まれて、消える。 ――嗚呼、どうして。 ――何故ここまで、生への執着を、忘れる事が出来たのだろう。

2013-07-04 18:17:05
紅の強欲にしてIraのLilja @HeNotShe_sin

少女はあの時、イラの在る世界を願った。その願いは、叶ったとも、叶わなかったとも言えるのだろう。少女は『世界』を手に入れる前に力尽き、いま、『世界』を与えられたのだから。それが、本当に望んだ形ではなくとも。

2013-07-04 18:38:54
スロウス @siroeda_sin

「なら、いい」 それならきっと、悪魔の囁きなんぞに、負けたりしない。 背を向けた。もう、出来ることは何もない。……負けはしなかった。それだけだ。 扉を開く。やって来る、都合四度目の感覚。 振り向かず、手を振って―― ――――静寂が、訪れた。

2013-07-04 18:49:09
LiljaのIra @Fiteenl_sin

最後、手を振るのが見えて。 二人が扉を抜けていくのを、見送る。扉が閉じる音が、『狭間』の中に落ちて、消えて。 ——生きたかったから、こうして、やって来たはずではなかったのか。 自問が落ちる。どこからか何かが割れる音がして、ぼんやりと視線を落とした。掌を掲げて、そして。

2013-07-04 20:54:33
LiljaのIra @Fiteenl_sin

笑ってしまった。顔が歪んでいるのが自分でも分かった。 ——罅割れた肌色の向こう側に、崩れ去った石柱の瓦礫。慣れた感触、いつも指先から、足元から浸食する『それ』が、思考とも感情とも関係無しに這い上がって来る。 当然だ。器を失えば溢れる。だからこそ地に縛り付けて、何ともない振りをして

2013-07-04 20:54:34
LiljaのIra @Fiteenl_sin

——抑え込む事で、抑え込む事が出来るという事実で、それで漸く安堵していたのだと。それを隠し続けて封じ続けて。なのに無の奥にあるものにしか、己を見出す事すらできなくて。 「……矛盾、ばっかり」 罅割れていく。崩れる瞬間、透明から茶へと変じた手が、塵に。 「……帰、らなきゃ」 呟く。

2013-07-04 20:54:36
LiljaのIra @Fiteenl_sin

掠れた声で、呟いて。溢れた何かが崩れた掌を突き抜けて落ちていくのも見ずに、女は背の扉へと振り向いて。 ——足が重い。いや、軽いのか。重さが消えてしまっているのか。引き摺るように、緩慢に進む。黒の、漆黒の扉、せめて、 ——横倒しになった視界を、いつの間にかぼんやりと眺めていた。

2013-07-04 20:54:37
LiljaのIra @Fiteenl_sin

――帰らなきゃ。王は、スペルビアは、戻って来いと、円卓に必要だと、言ってくれていた。 ――嗚呼、先に訊いていれば、良かった。名前があると、聞いていたのに、結局、一度も、 ――名前。 思考が、鈍い。四肢はもう塵になったか。ああそんな事よりも。 ――名前を、あの子は。

2013-07-04 21:13:13
LiljaのIra @Fiteenl_sin

――インヴィディア、あの子は、あの時の事を。 ――あの子の事だから、きっと、あの事も、名前の事も、覚えて。 ――嗚呼、やっておけば良かった事ばかり、浮かんで、 「――ア、ヴァリ、ティア」 声は、まだ、出ているのか。わからない、でも。

2013-07-04 21:57:29
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