ざあざあざあ。今日もラジオはどの局も繋がらない。世界が終わろうとしている時に真面目に仕事なんてやってられないというのが大半の人々の心情だからだろう。それでもテレビよりはよくもった。ざあざあざあ。今日も雨はやまない。晴れ間が見える日もあるが、あの日から世界の水かさは増し続けている。
2013-07-04 18:28:00後に大災雨と呼ばれるあの月から世界の人口は大きく減少した。この町も低地は水に沈み道路は運河の様相を呈している。それでも残された人々は高地にへばり付くように生きていた。ざあざあざあ。夏の陽は街路樹の影を落とさず虫の声もしない。「沈没世界の最後の夏」ーもうすぐ、世界は終わるらしい。
2013-07-04 18:29:34水に沈んだ廃墟っていいよねっていうあれ。沈んだ廃墟群の間を傘を差して行く。時々晴れの日にはきらきした水面に写る自分の影と底に見える廃墟の影
2013-07-04 18:39:24水没都市はね。こういうのがいい。「晴れた日はサルベージ日和だ。遺跡に潜り、かつてこの都市で暮したぼく達の作った、今のぼく達には作れないものを拾い集める。潜水中、ふと見上げれば。百年の時を越え、かつてのぼく達と今のぼく達は同じ太陽の光を見る。そこに一枚、水面のフィルターを重ねて」
2013-07-04 18:43:38「サルベージに夢中になるうち、気づけば日が暮れかけていた。夜は魚達の時間だ。だからぼくは今日も秘密のポイントへ向かう。太陽の光が届くうちに。そこにいるのは、カプセルの中で眠り続けるアンドロイド。ぼくは彼女を、密かに眠り姫と名づけている。言葉を交わしたこともない、ぼくの初恋のひと」
2013-07-04 18:49:26そうだ #水没都市 でそれっぽい散文とか短文みんな書いてくれたら楽しいんじゃないかな主に私が。読みたいのでぜひどうぞ。世界観は限定しない
2013-07-04 21:29:45#水没都市
母が子供の頃の話を聞くのが好きだった。語られる話はまるでおとぎ話の様で、ほんの少し前まで当たり前のように見られた光景だったとは信じられない。晴れた日に水面を覗きこむ。あのどれかが母のいう家なのだろうかと。いつか自分も見られるのだろうか。花が咲き乱れるという庭を、夢見る #水没都市
2013-07-04 21:45:53「ああ、メーデーメーデー。今日はいいお天気です。雨時々にわか晴れー」壊れた無線機で遊びながら水面から頭を出した廃墟群を飛び歩く。応答はいつも通りなし。数日前に離した鳩は未だ戻らず。黄色のレインコートのフード越しの世界は灰色で、さあさあと落ちる雫が足元の水面に円を描いた #水没都市
2013-07-04 21:57:53ぐらぐら揺れない地面を初めて踏んだ感想は『なんか変』だった。歓声をあげる大人達が子供の頃はこれが普通だったらしい。変なの。地表がどんどん水に侵食されて今ある滅多に揺れない地面は特別な人達が独占してるらしい。今回は特別に開放されたんだと誰かがいってた。 何がいいのかなあ #水没都市
2013-07-04 21:59:53人と人ではない者が争い、滅び、水だけになったこの星の僅かな陸地を守る黒い機械人形。動力が何なのかすら分からないそれが小さな陸地を守って数百年が過ぎた頃、機械眼が捕らえたのは水色の髪の少女。少女は言葉を喋れないが、異形も言葉を知らぬのでそれで困る事はなかった。 #水没都市
2013-07-04 22:09:39私は汲む、その黒い水を。燃える水を揺蕩う水面に浮かべぬように、鈍色のパイプラインを突き立てる。 それはいつか人であったもの、まだ大陸というものが存在していたころの彼らのなれの果て。 私は汲む、未来の私の姿を。 #水没都市
2013-07-04 22:17:06外は今日も雪。ドームの外は真っ暗だけど、照らされてちらちらと光る雪だけはよく見えた。 「俺たちが水の外に出られないのは、水が何某かの力を持っているからだ」 奴がまた講釈を垂れている。鋼を纏ってドームの外に出ると言う弟は、天から滴る”雨”を憎々しげに眺めた。 #水没都市
2013-07-04 22:23:05まだ水深の浅い場所へ向かうと、透き通った水面の下で金色の藻が踊る。素足の裏の柔らかな感触。踏み出す度に藻が生成する炭酸のガスがしゅわしゅわと立ち上る。 #水没都市
2013-07-04 22:25:22たゆたう水底(みなそこ)の面影。響く歓声はかつての思い出の幻聴か。静寂(しじま)の街は醒める事のない眠りの中。想いも願いも祈りすらも抱きしめたまま。差し込む光だけ昔日(せきじつ)のまま。 #水没都市
2013-07-04 22:46:11深いビルの谷間を、降りていく。赤い波長の光は吸い取られ、青が深く、深くなっていく。魚の群れがDNAのように描く螺旋は華やかで、少女は両手を広げて胸にとろりとしたものを吸い込む。ここに、雨は降らない。悲しみに目尻が熱くなっても、涙はこぼれない。 #水没都市
2013-07-04 22:52:44永の眠りから目覚め広がる大地に踏み出せば、日に照らされて揺らめく光。水だ。風に揺らめく水面へと歩み寄って覗き込めば、移ろう魚の影。あぁ。彼女は一筋の涙をこぼす。もう誰も残ってはいない。岸壁をくりぬくようにして作られた美しくも荘厳なかつての都は全て水底へと消えたのだ #水没都市
2013-07-04 23:08:18驚いた。まだこんな土地が現存していたとは。そして―「驚いた!キミは何なんだい?宇宙人?それとも潜水用ロボットかな?あ、まさか伝説の魚人というやつか!」…人が存在していたとは。「残念。アンタと同じ地球人だよ、お姫様」答えながらオレは重たい潜水スーツを脱ぎ捨てた #水没都市
2013-07-04 23:39:01「今日も死体が流れ着いたの」隣で寝ている彼に話しかける。「私たちみたいな恋人同士の水死体。手を結びつけて、まだ綺麗だったからきっと無理心中」と、私は笑う。「……そろそろ貴方の体もぼろぼろだし交換しちゃおうかしら。私だけ生き延びちゃったし」 #水没都市
2013-07-04 23:50:24魚網にひっかかっていたそのガラクタは物知りのタカ爺さんに聞いたところ「おるごーる」というものらしい。当然動きはしないがこういった昔の物を集めるのが僕は好きだった。夜になると、薄暗いランプの火の中で思いを馳せる。このガラクタがまだ音を奏でていた時代のことを #水没都市
2013-07-04 23:57:18