さすがに土曜とはいえ、三軒は飲み過ぎた。ふらつく後輩の手を引きながらタクシーに。「先輩、きいてますぅ? ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんですよぉ……」聞き飽きた。あの人なんて、呼ぶな。あいつはもう人妻だ。降りろ。「先輩?」私にしとけ。忘れさせてやる。 #twnovel
2013-07-07 00:58:04「結婚しないの?」三十の声を聞いてからというもの、折につけこんなことを言われる機会が格段に増えた。その度に曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。「誰か紹介しようか」「合コンしよう合コン!」そんな声もにこやかにスルーする。ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。 #twnovel
2013-07-07 01:01:40どうせあたしなんてただのお姫様だしただのご褒美だもの。ツンと横向く可愛い君は、ドラゴン討伐の褒美にされたのがよほど悔しいらしい。どうして危険承知でぼくが討伐に行ったか解ってる?いいさ。ここで大きな声で言ってやる。ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。#twnovel
2013-07-07 01:10:46#twnovel 「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」こんな台詞はどうですか。「中々良いな。しっかりと原稿を書いてくれ」わかりました。「家の守りも必要だ。私が勧めた縁談はどうだ」今は仕事に専念したいのです。「そうか」そしてぼくは「あの人」を「あなた」に書き換える。
2013-07-07 03:55:36#twnovel 「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」そんなちいちゃい声で届くかボケっ! 「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです!」もう一回! 「おれは嫁さんが欲しいのんとちゃうねん、おまえが欲しいんや!」なんで関西弁なっとんねん、い、いえすやけどな。
2013-07-07 07:25:37「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。」 #twnovel …しまった、地雷踏んだ、と思うより早く、奴の目から大粒の涙がこぼれ始めた。「お前、飲み過ぎだよ、結婚式の二次会だで泣く奴があるか」 …聞こえてないな。仕方ないか。ずっと新婦に片思いしてたんだからな。
2013-07-07 07:30:53高嶺の花だってことは分かってるし、結婚していることだって知っている。だからって、止められる想いではないし、そのつもりもない。うっかり飲み会で話してしまうと友人から、そのまま独身を貫くつもりか、と気持ちを疑われた。ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。 #twnovel
2013-07-07 08:38:02初恋は、山奥の社でよく遊んだ女の子。大きくなったらお嫁にきてくれるって約束したから、ぼくはずっと待っている、のに。「龍神様、花嫁の娘です。どうか怒りをお鎮め下さい」数十年に一度、やってくるのは違う娘ばかり。ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。 #twnovel
2013-07-07 12:55:08ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。そんな風に言う人だから私は惹かれた。酔った拍子に出た本音。私じゃない遠くを見ている眼差し。都合のいい女でいいから、束の間でも温もりを与えたかった。 #twnovel 私の前で酔わなくなった優しい彼の責任感が今日も私を不安にさせる。
2013-07-08 03:43:34「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」「その割にはしょっちゅうアニメ見てるよね」「…ア、アニメは二次元だもの」「じゃあDVD売っぱらっちゃっていいの?」「もちろん」「おーそこまで決心させたひとってだれ?幼なじみとして気になる」「それは…」言えるかよ。#twnovel
2013-07-08 12:48:51「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」の難しさは、あの人にあるよね。君でもなく貴方でもなくあの人なの。難しいのです。
2013-07-08 13:05:15「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」酔い潰れた後輩の可哀想な嫁を俺は知っている。彼女への初恋を拗らせ未だ俺は独りだ。あの人のこともよく知っている。俺と彼女の友人であるあの人がコイツを好きな事も。さあ、カードは揃った。始めようか。彼女の涙は俺が拭う。#twnovel
2013-07-08 16:25:39#twnovel 「天国のお姉ちゃんのことは忘れて、私をお嫁さんにして」「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」。遺影を前に繰り返された義兄とのやりとり。諦めきれずに追いかけ、私は二十歳。「もう大人よ。妹はいや」彼はふっと微笑んで「君こそ義兄さんと呼ぶのをやめなさい」
2013-07-08 16:45:34#twnovel 「ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです」まただ。酔った勢いの独白を尻目にナマチュウ追加。「なのに…」の先を聞き流し、さっさと告って玉砕しろと嗤い飛ばす。「だって…」ゴチャゴチャ言うなら諦めろ。「お前のことは俺が保証してやる」なんて、誰が言ってやるか。
2013-07-08 23:57:27ぼくは嫁が欲しいんじゃなくてあの人がほしいんです。 王子さまの願いはいつも複雑です。新しい城も速い馬も強い軍隊もいりません。嫁も欲しくはありません。あの人がほしいんです。皆困ってしまいました。 王子さまは城壁の向うにあの人を見ています。初恋の人に似た少女の像を。 #twnovel
2013-07-09 18:34:59