とあるテトさんの物語1(6/15『金曜日の思考』~7/8『不安になる部屋』)

こちらはその1になります。 (その2→http://togetter.com/li/534292) 消えてしまう前に私用としてまとめただけでしたが、teto_botさんより許可をいただくことができました。 botの管理人様≠まとめ作成者です。
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テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「どうした」テトの視線に気づいたのか、フランスパンは訝しんで尋ねた。「ああ、いや。ぼくも、似たようなことを感じていてさ。だからキミが、薄気味悪い――と言ってくれたことが、なんだか良くて。別段、だからといって、状況が変わるわけでもないんだが」テトは、どこか照れたように言った。)

2013-07-05 22:55:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「それは連帯感ってやつだな」テトの照れがうつったのか、フランスパンは、ぐゥおっふぉんとわざとらしく咳払いをした。)(「そうだとも、テト。そうだよ。連帯しているんだ。つまり、おれたちはいま、ホラ。なんだ。だから、そら――」フランスパンは、言葉を探しながら、言った。「つまり――」)

2013-07-05 23:00:43
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――その、不安に思うことはないッてことだ。おまえにはおれがついている。だからこんなブキミな部屋くらいわけねえ。そうだろう? ――そう、仲間、なんだからよ」フランスパンはじれったく、けれど勇ましく、言った。)(「――なかま」テトはおうむがえしにつぶやく。)(「仲間、……」)

2013-07-05 23:05:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「仲間――か」テトは、かみしめるように言った。なかま、ということばを使うのも、実感するのも、テトにははじめてのことであった。「ふしぎだな。確かに、なんだか心強い気がする。なにせキミがついているのだ。月光の加護を受けた、真紅のマントをたなびかせる、素晴らしきフランスパンが!」)

2013-07-06 22:35:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「うむッ、善哉」フランスパンは満足気に頷きつつ、「だが…」と、声を落とした。「…この先、フランスパン、と、呼ばれ続けるのはな。ここはひとつ、おれにも名前が欲しいところだ。」)(「…名前か」テトは言って、考えこむ仕草をした。「ぼくとキミの間だけなら、キミ、と呼べばそれで済むが」)

2013-07-06 22:41:46
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「そうもいくまいよ」フランスパンは、第二のフスマをじっと見据えながら言った。「なんとなく、気配があるぜ。この先に、誰、か、なに、かは分からないが、なにかが――在る。だからこそ、ここで、連帯だ。仲間として、なまえをつけて、パーティを組むんだ。フスマの先の巨悪に立ち向かうのだ!」)

2013-07-06 22:45:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「巨悪があるかは分からないが……」テトはややなおざりに返答をしつつ、名前かあ、と言って腕組みをした。「そうだなあ。キミは、フランスパンだから……よし! フラン、でどうかな!」テトは、どうだっ、という顔をしてフランスパンを見た。フランスパンは「平凡だ…」と、イヤそうな顔をした。

2013-07-06 22:55:13
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「もっとあるだろ。流星として来る希望の光とか。進化せし無限の可能性とか」フランスパンは勢いこんで言った。「マントにひっかけて、赤き草原を走る狼でもいいぞ!」)(「そうだなあ…」テトは鷹揚に相槌を打った。「じゃあ、ランスとか。スパンとか」「聞いてるか、おい、おれのはなしを!」)

2013-07-06 22:55:55
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

--フランが なかまに くわわった--

2013-07-06 22:58:29
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(これまでのあらすじ:新しい本が欲しいと願ったテトは、窓から降ってきたフランスパンと共に、「フスマ」の先に向かった。フスマの先は薄気味の悪い日本家屋であったが、テトはフランスパンと励ましあい、互いを仲間であると認め、勇気を得た。テトはフランスパンに「フラン」と名をつけた。)

2013-07-07 22:35:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(不承不承フランスパンは「フラン」という名を受け入れ、二人は改めて第二のフスマに向かい合った。「この先になにかが在る」というフランの言葉を思い出し、テトは知れず両手を握りしめていた。)(「この先に、あるのは――本、なのかな」テトは、言った。「さあな」と、フランはかぶりを振った。)

2013-07-07 22:40:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「おれが知るものか。まあ、おまえが欲しいと思ったのは、「多くを学ぶ為の新しい本」だからな。そいつが在るのか、あるいは…この薄気味悪い部屋が、既にその「本」の一部であるのか…。」フランは声をひそめて言い、けれど、テトを励ますように、明るく続けた。「ま、開けてみれば分かるだろ!」)

2013-07-07 22:45:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「そうだな」テトはちいさく頷いて、意を決し、引き手に手をかけた。)(そのまま、ゆっくり引き開ける。フスマの先が、姿を現す。)(引き開けたフスマの先は――また、部屋であった。ひとつ前の部屋より、やや薄暗い。中央には同じようにテーブルと座布団がある。テーブルの上には――)

2013-07-07 22:50:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――あ――」テトは思わず声をもらした。テーブルの上に、ひとつ前の部屋にはなかったモノがあった。あまり厚みのない、表紙には人間の子供が描かれている、絵本のような大きさの――本だ。テトは、自分がひどく高揚していることに一瞬遅れて気がついた。ああ、本がとうとう、目の前にあるのだ。)

2013-07-07 22:55:21
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(テトは、みしりみしりと床がいやな鳴り方をするのを気にも留めず、急くように歩いて、テーブルの前に辿り着いた。どくん、どくん、と、からだの中が脈打っている。テトは、脈打つ自分自身を片腕で抱きすくめ、もう片方の手を、本へと伸ばし――) (「―――見たら、もう、戻れませんよ――」)

2013-07-08 22:40:20
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(刹那、声が響き渡り、テトとフランは飛び上がらんばかりに驚いた。)(慌てて、周囲に視線を走らせる。薄暗闇に目を凝らすと、部屋の隅に――女性が座っているのが、見えた。こちらに背を向けていて、人相は分からない。だが、その小さくくたびれた背中が、老齢の域に達していることを感じさせた。

2013-07-08 22:45:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「――戻れませんよ」老いた女性は繰り返した。彼女の声は澄んで、やわらかい音声-おんじょう-だった。一つに束ねられた長い髪はその殆どが真白だったが、どこか、淡桃色に見える気もした。)(「――いま元の部屋に帰れば、あなたは不安を知らぬまま、穏やかに生きることができるでしょう」)

2013-07-08 22:50:19
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(「おい」フランが遮るように言った。「そこの女よ。ご高説たいへん結構だが、他人と会話をするときは、相手の目を見て話すのが礼儀ってもんじゃねえのか」「そのとおりです。ですが私の顔は醜いので、とてもお見せ出来ないのです。このままをお許しください。――不思議な、パンのお姿のかた」)

2013-07-08 22:55:22
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

(フランは、びくり、と身に緊張を走らせた。「――どうして。そっちを向いているのに、おれのことが分かるんだ」「うふふ。私のことなど、いまはどうでも良いのです。あなたがたは、その本を読むか否かを、覚悟して選ばなければいけません。…私の言うことを信じていただけますか。テトさん」)

2013-07-08 23:00:45
テトぺってんとフラン=スパン @teto_bot

--老いた女性のその声は、静かに部屋に染み渡り、彼女の髪はやはり、どこか、薄桃色であるように見えた--

2013-07-08 23:05:20
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