飯島明子先生の特別講義 第3回:「窒素循環と干潟の役割」
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第1回 飯島明子先生の特別講義:「閉鎖性水系の有機汚濁」
第2回 浅い水域が有機汚濁解消のために重要だということ
第3回 飯島明子先生の特別講義:「窒素循環と干潟の役割」
有機汚濁解消のために、浅い水域が果たす役割。浅い水域には生物が多い→鳥やヒトに食われて系外へ窒素やリンが移行。ここまで先日連ツイしました。http://t.co/dKhrE7dVZw
2013-07-20 09:24:53これ以外に、干潟などごく浅い水域では、有機汚濁の主な原因である窒素(アンモニアや硝酸イオンという形で水中に溶け込んでいます)を除去できる微生物がワンサカと棲んでいます。
2013-07-20 09:26:56「除去」というのは、水中のアンモニアNH3や硝酸HNO3、亜硝酸HNO2などを、大気中の窒素ガスと同じN2にする、ということです。
2013-07-20 09:31:56大気のほぼ8割を占める窒素は、このN2という状態でして、これは生物の多くにとって直接取り込むことのできないものです。
2013-07-20 09:35:30すべての生物はタンパク質や核酸などをどんどん新たに作り出しつつ生きていまして、それらの主成分は炭素、水素、酸素、窒素、リンですから、すべての生物は窒素を必要としています。我々動物(従属栄養生物)はその窒素をアミノ酸やタンパク質や核酸などの形で、他の生物を食べて取り込みます。
2013-07-20 09:36:36一方で植物は硝酸や亜硝酸の形で窒素を取り込み、光合成で作り出した有機物と一緒にして、自前でアミノ酸やら核酸を作り出すことができます。植物プランクトンも同様です。
2013-07-20 09:38:37ですから富栄養化した水域の中で多過ぎて困る窒素は、大気中のものと同じN2ではなく、NH3やHNO3など。これを植物プランクトンでも使えないN2の形にできれば、植物プランクトンの爆発的大増殖は抑えられるはずです。
2013-07-20 09:40:36アンモニアNH3や硝酸HNO3などをN2に変えることを、「脱窒(だっちつ)」と言います。脱窒をすることができるのは、脱窒細菌と呼ばれる一群の細菌たちです。この細菌たちは元々土や泥の中にいます。そして酸素の多い場所と酸素のない場所の境界領域で活動しています。
2013-07-20 09:44:11なぜ酸素が多い所と少ない所の境界領域で働くのか、という理由は省きます(このジャンルが得意な方、付け加えていただけると嬉しいです)。 ただ、干潟の泥や砂を掘ってみると一目瞭然で分かるのですが、干潟表面の砂・泥には酸素が行き渡っていますが、少し掘ると酸素が足りない層が出てきます。
2013-07-20 09:49:16一目瞭然というのは、砂や泥に含まれる鉄分が、酸素が多い表面だと酸化されているので赤茶色をしているのに対し、下の方、酸素が行き渡らない所では鉄が酸化されず砂の色が灰色だからです。
2013-07-20 09:51:42有機物が多過ぎる泥干潟では、有機物が細菌に分解された時に生じる硫化物により、酸素の足りない層の色は灰色を通り越して真っ黒です。そして硫化水素臭がします。
2013-07-20 09:52:39酸素のある層と無い(少ない)層は、干潟を掘るとはっきり分かり、酸素のある層の厚みは有機汚濁の程度により、底質が砂か泥かという違いにより、波による撹乱の度合いによっても異なります。しかし肝心なのは、酸素のある層とない層の境界領域がある、ということで、ここで脱窒細菌が働きます。
2013-07-20 09:54:37そして前の連ツイでも言及しましたように、干潟には多くの生物が棲んでいるのですが、その多くが巣孔を掘るのです。ゴカイの仲間も、エビやカニの仲間も。巣孔があるということは、巣孔の中には酸素が行き渡るので、干潟の表面から深い所まで酸化層が伸びることになります。
2013-07-20 09:56:38つまり、干潟に巣孔を掘る生物がいればいるほど、干潟の酸化層(酸素のある所)の面積が拡大し、それに応じて酸化層と還元層(酸素のない所)の境界の面積も拡大しているのです。
2013-07-20 09:57:51たとえば干潟に深さ1m以上もの巣孔を掘る、アナジャコというエビの仲間がいますが、東邦大学で博士号を取った木下さんの研究によれば、市川の行徳の小さい干潟では、そのアナジャコの巣孔内面の総面積は干潟表面積の7倍に達するそうです。
2013-07-20 10:00:12そんなわけで、干潟にはそもそも酸化層と還元層の間に脱窒細菌がいてせっせとアンモニアなどをN2にしてくれていますし、そこに巣孔を掘る生物がどっさりいることによって脱窒細菌の活動する場が何倍にも広がる、というわけです。
2013-07-20 10:01:57干潟が「天然の浄化槽」と呼ばれる所以は、こうした脱窒細菌と干潟ベントス(底生動物)の活動にあるわけです。 脱窒までできる下水の高度処理場もあることはありますが、建設にも稼働にもお金はかなりかかるとのこと。干潟はほっとけば只な上に、潮干狩りだってできちゃうからお得ですよね!
2013-07-20 10:04:42なげなわぐもさんの補講 「なぜ酸素が多い所と少ない所の境界領域で働くのか?」
Q:なぜ酸素が多い所と少ない所の境界領域で働くのか? A:含窒有機物が分解されて生成されたアンモニア態窒素が硝酸態窒素に酸化される反応は硝化といい、これは好気雰囲気下の反応。 硝酸が還元され分子上窒素として大気中に放散されるのが脱窒の反応で嫌気雰囲気下の反応。
2013-07-20 11:57:29