FF6・流離う僧と見守る白い竜

セリスと合流前のマッシュの行動をSSにしたもの。ピクシブからこちらにライブツイートしたもの。オリキャラ注意。
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みなみ @minarudhia

「いてててて」 「グルルルル」 ぐりぐりと胸や頬に頭を擦りつけられるマッシュ。 やがて頭を離すと、生き物は洞窟の奥へと姿を消した。

2013-07-25 22:57:57
みなみ @minarudhia

「……」 あまりの人懐っこさにマッシュは閉口した。 敵ではないようだけど、擦りつかれた所がちょっと痛い。 まもなくして生き物は大きな葉っぱを両前足で持ち、後脚で立って歩いてきた。

2013-07-25 23:02:02
みなみ @minarudhia

「お前二本足でも立てるのか、凄いなぁ」 妙なとこで関心しているマッシュの眼前に置かれた葉っぱには、果物や焼かれた肉が乗っていた。 肉はただ焼かれただけでなく、どこのものなのか香草と塩で味付けがされている。 それだけに、気分良く腹を満たすことができた。

2013-07-25 23:04:51
みなみ @minarudhia

しばらく時間が経ち、マッシュは荷物が無事なのを確認してからいつでも出られるよう支度をしていた。 その様子を生き物はじいっと

2013-07-25 23:08:33
みなみ @minarudhia

「俺はそろそろここを出るよ。どうしても、やらなきゃいけないことがあるんだ。兄貴達を探さなきゃいけないし、この世界で何が起こったのか知らなきゃ。ただ…どこに行けばいいのか…」 「グルル」 「ん?どうし―――」 額に鼻先を当てられた瞬間、マッシュの脳裏でフラッシュバックする光景。

2013-07-25 23:12:12
みなみ @minarudhia

引き裂かれ、移動していく大地。 変わっていく世界の中心に積み重なり塔のように大きく変化していく瓦礫。 その頂上から降り注ぐ光。 その光に打ち砕かれる村・街・森… そして、聞き覚えのある狂気に満ちた甲高い哄笑と黄金の翼…。

2013-07-25 23:12:53
みなみ @minarudhia

「…ケフカ!!」 最後に見えたものに、マッシュは激しい憤りを感じた。 すっと彼の額から生き物の鼻先が離れる。 生き物は、悲しげな目で彼を見据え、静かに口を開けた。 「あなたはまだ知らなかったの?この世界で何があったかを」 「! 喋れたのか!?」

2013-07-25 23:19:10
みなみ @minarudhia

口から出される女性の声。 仲間にも喋れるモーグリがいるのにも関わらず驚く彼に、生き物はくすりと微笑んだ。 悲しげな表情は変わらぬまま。

2013-07-25 23:19:39
みなみ @minarudhia

「私はこの森の主。この世界が三闘神によって変わってしまう前から、この森に住んでいた竜よ」 「すると…三闘神は?」 「あの瓦礫で積み重なってできた塔にいるわ。魔導士ケフカと共に。彼はこの世界を支配し、全てを死で埋め尽くそうとしているの」

2013-07-25 23:22:27
みなみ @minarudhia

「くそっ…!そうとなれば、なおさらここでいつまでもいるわけにはいかん!」 「待って!落ち着いて!」

2013-07-25 23:22:32
みなみ @minarudhia

急いで荷物を担ぎあげたマッシュを白い竜は即座に押し倒した。 押し返そうとする彼の肩をしっかりと地面に押さえつけ、焦りを帯びた青い目を見据えて彼女は低く言った。 軽く牙を彼の目の前でむき出しにしながら。

2013-07-25 23:24:44
みなみ @minarudhia

「あなた一人だけでどうとできる相手ではない。今のケフカはすでに人ではなくなってきているの」 「…どういうことだ?」

2013-07-26 22:52:30
みなみ @minarudhia

「あなたは私が見せた記憶の最後の断片で気付かなかったの?彼は三闘神の力を自分のものにしてしまった。それだけで、彼は三闘神になり変わってこの世界を変えようとしているの。あの光は、彼が放ったもの」

2013-07-26 22:53:09
みなみ @minarudhia

「え?」 「私もあなたに協力して共に戦いたいけれど、この森にわずかに残った動物達を守らなければいけないの。だから…」 ぽたぽたと銀の瞳からこぼれ落ちる涙に、マッシュは意識を引き戻された。

2013-07-26 22:53:41
みなみ @minarudhia

「ここの動物達の多くは、世界が引き裂かれた時に出てきた魔物達に貪り食われてしまったの。私は魔物を喰らう竜だから、獲物には困らなくても他の動物達が滅びてしまえば私一人だけ。…だから…」 「……まさか、

2013-07-26 22:56:54
みなみ @minarudhia

「……まさか、さっき、俺が食べたあれは?」 「…あれは少し遠出して仕留めてきた鹿よ。魔物の肉じゃないけど…客人をもてなすためとはいえ、心は痛むの」 白い竜は言いながら頃合いを見てマッシュから離れた。 そして、背を向けて話を続ける。

2013-07-26 22:57:53
みなみ @minarudhia

「ここにもかつては人が住んでいたの。私は彼らと距離を置きながら、暮らしてきた。あなたに最初から人の言葉で話さなかったのは、あなたが信頼できる人間かどうかを確かめるため。でも、あなた…いい匂いがするし、それに他の人間と比べても悪意を感じない」

2013-07-26 23:00:26
みなみ @minarudhia

「お褒めの言葉、いたみいるよ」 「もう人間と会ってなくて一年…、私もいつまでここを守りきれるかわからないけれど、これから先生きた人間と会えないのなら…そう思ってあなたに話しかけているのよ」

2013-07-26 23:02:02
みなみ @minarudhia

ふぅと深い息を吐く竜の傍へ、マッシュは来ながら時間をかけて背中を撫でた。 鱗は一目の印象では硬質な質感に見えるが、先程感じた厚く柔らかい布地のような触感は幻覚ではないようだ。 城の中に敷かれた絨毯の感触を思い出す。

2013-07-26 23:05:40
みなみ @minarudhia

「それなら…もし、兄貴達と再会して、ケフカを倒したらさ、あんたの所にもう一度来てもいいかい?」 「…ええ。本当に?」 「ああ。必ず生きて戻るさ。俺は、兄貴を支えるために生きてるようなものだから」「…お兄様って一体」「フィガロの国王様って言えばいいかな」 竜の目が驚きに見開かれた。

2013-07-26 23:08:39
みなみ @minarudhia

「するとあなたは…」 「おっと。今はもう城を出てるから。…さて、街を探したいんだが、どうすればいいか」 「それなら、アルブルグの街がいい。あそこならここから飛んですぐだし、まだ街自体が壊れていないから人もそれなりにたくさんいるわ。だから、私の背中に乗って、マシアス」

2013-07-26 23:11:15
みなみ @minarudhia

「マッシュでいいよ。じゃあ、遠慮なく」 洞窟の入り口まで来た所で、竜はマッシュが乗りやすいよう体勢を低くしてくれた。 その上に跨るが、チョコボと違い乗る時のバランスが違うせいか、不安定だ。

2013-07-26 23:11:36
みなみ @minarudhia

「翼の付け根に手をかけて。でも軽くね。それから足で私の胴を挟み込むようにすること!」 「わかったから、そんな体を大きく動かさないでくれ!」 飛び立とうとする竜にマッシュはまだ慣れないでいた。 しかし、問答無用とばかりに飛び立たれ、慌てて足に力を込めた。

2013-07-26 23:15:06
みなみ @minarudhia

「いいわよ、そんな感じ」 「なんか情けないな…」 しかし、一旦飛び立ってしまうと、当たる風が心地よかった。 安定した体勢になった所で、マッシュは後ろ向きに振り返る。 そこには、星のような形で並んだ岩山があった。

2013-07-26 23:17:49
みなみ @minarudhia

「あの山、面白い形してるな。星型みたいだ」 「あれは幻獣フェニックスの伝説が残る山よ。あそこにも洞窟があるけれど、滅多に入らないわ」 「ロック、あそこにいるだろうか…」 コーリンゲンの村を訪れた時悲痛の表情を浮かべたトレジャーハンターの顔を思い出す。

2013-07-26 23:23:13