2010/09/27 ツイッター小説 お気に入りセレクト

Gabb-- @itisnot

星の数ほどいたそのトカゲは、世界に人が生まれるやいなやすっかり滅びてしまった。あるものは森の中で、あるものは泉の奥底で、あるものは火星で、彼らは怪我なく病なく死んでいった。神は言う。「主役変えるから」だから死んだ。殺されたわけじゃなくて死を与えられた。大昔の話。 #twnovel

たまぞ〜 @tamazoo

「おととい来やがれ！」と門前払いを食らったので、タイムマシンに乗って二日前に向かってみると、「待っていたぞ」と歓迎された。 #twnovel

お惣菜 @n7k7

#twnovel [ゆり] 庭にいつの間にか百合の花が咲いていた．確か去年は生えていなかったはずだし，種を蒔いたり球根を植えたりした覚えもない．不思議なことと思う．百合は二本並んで生えていた．茎が二本，それぞれ数輪の花．うち一組が向き合っていて，まるでキスをしているように見えた．

(ゆないキズト) @Kyzt__

深夜２時。ネタに詰まったのでフラフラと散歩をしていた。不意に、踏切の警報音が鳴りだす。「…こんな時間に？」回送列車だろうか。ゆっくりと電車が走ってくる。…電車の中には、元気のない男たちが大勢乗っているのが見えた。…………あの列車は、どこへ向かうのだろう？ #twnovel

ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 風の強い深夜にドアのチャイムが鳴る。「誰だろう？」私はドアスコープを覗くが人らしき姿は見えない。悩んだ私は友人に相談すると数秒で解決した。強い風がドアのチャイムを押すんだよ。実際に友人は私の家の玄関で思いっきり息を吹きかけてチャイムを鳴らして見せてくれた。

クロ @ti_clocks

空は昨夜から泣き出し、立冬の頃に似た強い寒気を感じて眼が醒めた。酷く喉が荒れていて、大きく息を吸い込んだところで咳き込む。熱湯に近い温度で煎れたアールグレイを飲み乾して、４年目の秋を通り過ぎる。楔が抜けるように、紐がほどけるように、だんだんあなたを忘れていく。 #twnovel

rime @prhymethyme

レミングが増え過ぎると集団自殺するって違うらしいよ。餌のある場所への移動に海を渡るさい溺れる個体も中には居るってだけみたい…ラッシュ時こうして群衆がホームから溢れそうに歩いてるの見ると確かに毎朝何人かこぼれ落ちたり踏み潰されても不思議ないよね…あれ、どこ行った？ #twnovel

TAG @bttftag

#twnovel 月を訪れたら、まず熱いコーヒーを飲む。初めて飲んだ時の衝撃が忘れられないからだ。豆は地球産のものだが、重力が1/6しかない月面では、コーヒーはまるでタールのように粘度の高い、しかし格別の味わいと香りを放つ。この一杯だけでも人が月を目指した価値はあると、僕は思う。

ミネコ @meymao

「だって寒いんだもの」と、急に冷え込んだ天気のせいにして君は毛布にくるまったまま出てこようとしない。僕は呆れながら洗い物を終わらせ、冷えた手をこすりながら狭いベッドに滑り込んで君を後ろから抱きしめる。華奢すぎる体は全然柔らかくなんてないんだけど、驚くほど温かい。 #twnovel

みずしま @aya_mizushima

急に襲ってきた寒さで、一気に意識が覚醒する。「いつまで惰眠貪ってんの」降ってきた声はさらに冷たい。愛し合って結婚しても、二年も経てばこんなものだろうか。そんなことを思いつつ身を起こすと、クロゼットの前に吊り下げられた、長袖のシャツが目に入った。おお、愛されてる。 #twnovel

山田一人 @hitori_kazuhito

#twnovel 長い戦いの末に誰かが月曜日を倒すことに成功した。街では歓喜した人々がお祭騒ぎ。深夜だというのに街は明るく人々の笑い声がこだまする。不景気だ何だと暗い話ばかりの日本だが、今は誰もが幸せに満ちあふれていた。そんな中、火曜日は膝を抱えてガタガタと震えていた。

ひのもと　和義 @khinoxyz

猫の記憶は３日間しか持たない　ミィー太郎は雌猫と出逢った。「初めまして！」雌猫と恋に落ちる！ある日、飼い主が引越、ミィー太郎も一緒に行く。戻らなければ！必死に走るミィー太郎！１週間後、ミィー太郎は戻ってきた！その理由は忘れていた。雌猫と出逢った！「初めまして！」 #twnovel

明宏訊 @aliceizer

#twnovel 古時計、まさにそう表現するしか他に方法がない。時を切り裂くハンマーのような振り子は止まりそうで止まらない。「私はあなたに会いたかったの、一緒に行こう」彼女は自分の背丈ほどもある時計に語りかけた。時計は最後の鐘を鳴らした。事務員によると壊れていたはずだった。

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel さすがに50億年近く生きると記憶も身体もなくなってしまう。彼は自分がどうして不死なのか、ここがどこなのか、わからなくなっていた。ときおり思い出す。はるか昔、自分に似せて創った何か細かいモノたち。たくさんいたのに、あれらはどこにいったのだろう、と。

激走くじゃわさん🍀 @Qjawa_san

社内コミュニケーション円滑化機器『空気を読むアンドロイド』の試験運用が当部署で行われる事になった。部長「アンドロイドとはいえ君も当社の立派な社員だ。私の頭のように励（ハゲ）んでくれたまえ」各社員「・・・」アンドロイド「現在の空気は最悪です」 #twnovel

Dr.midi @Dr_midi

【 #twnovel 079】：かつて漫画の世界にしか存在していなかった『どこでもドア』が今では、普通に売られている。だが、その使用方法は制限されていた。事前申請して許可を得た場所しか移動できない。申請先は日本に一箇所しかないが、許可がなくてもそこだけは『どこでもドア』で行ける。

くすき　るか @yellow2_happy

「落ち着けって」「もういい、離して！」そんな押し問答も虚しく彼女は部屋を出て行った。が、ドアを開けるとバケツをひっくり返したような土砂降り。しばらく空を見上げ、バツの悪い顔のまま戻ってくると「…もうちょっといてやる」そう呟いてビーズクッションにどっかりと座った。 #twnovel

水木ナオ @nayotaf

「お父さん、シャンプー切れて…」風呂場を覗くと、父と幼い息子達、揃って髪が角の様。「爺ちゃん角たてた〜」喜ぶ息子に、そうだ、父は幼い私や弟の髪を石鹸で洗ってくれたっけ。大きな手でごしごし痛いくらい、笑い声が浴室に響き、懐かしい親子の時間を湯気の向こうに追憶する。 #twnovel

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 彼女のあだ名はピンクちゃん。身につけるものは何でもピンク。「だって『絶対ハッピーカラー』だもん！」と笑う。明るい人気者が、本当はハッピーじゃないと僕は知ってた。似合わないと承知でピンクのタイを締める。回診のとき彼女は泣いた。「センセイ、ありがと」。手術は明日だ。

しぃとろん @seatoron

自転車を漕いでいると、少年が一緒になって走ってきた。彼の競争意識に火をつけたようだ。大人げないかもしれないが、ここで勝負の厳しさを教えることも大切。俺は一段とスピードをあげた。子どもの姿は見えなくなった。5分程走り続け、ふと振り向くと、彼は後部席に座っていた。 #twnovel

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」より発売中 @Takuya11

#twnovel 僕は酷い近眼だ。眼鏡をかけても遠くの文字が見えない。「目がよければ私の顔がもっとよく見えるのにね」彼女が笑う。一緒にいる時、彼女の携帯にメール。少し僕から離れて彼女は返信した。『まだ彼がいるから後でね』彼女の顔をよく見るためにレーシック手術した事を僕は後悔した。

瀬井隆@SEI's factory（官能アカ） @seiryu_09

#twnovel 腕を伸ばして欲する。どうかこの手に掴ませてくれと。遥か彼方に見えていたそれは、ある日突然目の前に降りてくる。本当に覚悟はあるかと問い質され、僕は頷く。そのために全てを犠牲にしてきたのだから。ネオンの街に人々が行き交う。この現実を一度や二度破壊したって構わない。

layback @laybacks

怪獣は破壊の限りを尽くし今まさに私の顔面を踏み潰さんとしている。「アンパンマーン助けてー」怪獣の動きがぴたりと止まる。私はその隙にリモコンを操作する。怪獣はテレビ画面に浮かび上がるヒーローの姿に釘付けだ。主題歌が始まると我が家の怪獣はおしりをふりふり踊り始めた。 #twnovel

roardel @roardel

英語の授業中ノートの片隅に絵を描いていたら先生に見つかった。「こら。何をやってる。こんなアイドルだかなんだかわからん男の絵を描きおって。没収だ」耳まで真っ赤になる、私。ばか。あれは先生を描いたんだよ。 #twnovel

@sobatoyou

誰かに下唇を甘噛みされる。そんな甘い夢からの目覚めと共に、下唇からパリパリと剥がれる私の前歯。長く噛んでいたから歯型の跡が少し沁みる。一人きりで目覚めた朝、寂しいと感じるのは肌寒くなってきたせいに違いない。もう買い換えなきゃ。このベッドは一人では大き過ぎるから #twnovel