- isoflatone_orz_
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やばい、気持ちいい。大人になれば頭を撫でられる機会なんてほぼなくなる。撫でる事はあっても撫でられるなんていうのは…。『虎徹さん、可愛い、ねえ、愛してるんです。やらされてるんじゃない、これは僕の意思だ。あなたを大事にしたいのに、ごめんなさい』「うわあああああああああああああっ!?」
2013-10-12 12:43:01「こ、虎徹さんっ、どうしたんですか!?」体内に熱を感じたまま、抱きしめられて、甘いけれどどこか申し訳なさそうな、悔やむような、でもやっぱり蕩けるような複雑な色の声。ずっと撫でられているのは頭だけじゃなく、頬だったり顎の下だったり、背中だったり、そのままその手が──。
2013-10-12 12:45:08「あああああああああああああああああああ」「こてつさん、ねえ、虎徹さんってば!」身体全部を動かして布団に潜り込むにはしんどすぎて、必死で持ち上げた両手で真っ赤な顔を覆うにとどめた。なんだあれなんだあれなんだあれどういうことだ!? おじさん相手に何言っちゃってんの!?!?
2013-10-12 12:46:49言いたい事は山ほどあるが、薬のせいとはいえ仕掛けたのは虎徹で、いやいやだからこそ身体だけでよかったのになんであんな甘ったるい台詞と優しい腕が、と考えれば考えるほど口からでるのは「あ」だの「う」だのの連続したうめき声だけだ。 どうしろというのだ。やばい。申し訳ない。なんてことを。
2013-10-12 12:48:31バーナビーを困らせたり、これ以上苦しませたりしたい訳じゃなかったのに。 だけど、優しい行為が嬉しかった、なんて。 「もおおおおおおおおおおおお!!」 思わずアントニオになってしまうのは、虎徹が悪いのか。いや違う、あの性悪男が悪い。そういうことにしておかなければ耐えられない。
2013-10-12 12:50:22動けないながらも、もだもだじだじだと顔を覆って悶えている虎徹の背中を支えていた温度が広がった。手で支えられていたはずが、まるで座椅子に座るように背凭れが出来て、鼻をくすぐるいつの間にか慣れた兎の匂い。そして耳元に温度。「虎徹さんお願い、僕の声を聞いて?」
2013-10-12 12:52:36「もし、あなたが昨夜の事は忘れたいというなら、忘れます」「え?」思わず顔を上げた。目の前のバーナビーは嘘を言っているようには見えない。気遣う眼差しの中に、申し訳なさがずっと居座っている。「あなたがどこまで覚えているか判らないけれど、その、最初にキスをしたのは覚えていますか?」
2013-10-13 16:39:31キス。間違いなく魚の種類じゃない。「…覚えて、る、ような、覚えてないような」最初のキスと言っても、まさか帰宅した時のお帰りのちゅーじゃないだろう。「あなたが風呂場で水を浴びだした後の話です。僕が外から戻ってきて、それから」「…した、かも?」それ以上のこともしちゃったけどな!
2013-10-13 16:42:37なんて笑い飛ばせたらいいのに、現実はそんな簡単じゃない。「そのキスが、誘因になったみたいで」「にゅ?」「昨日の原因になった薬、僕らの体液が混じることで効果が発揮された可能性が高いんですよね。あなたが先に影響が出たけれど、直接あなたとキスをしたことで、僕もまあ、その…」
2013-10-13 16:44:54「…えーと、」勿論意図したわけではないが、それによってバーナビーにも催淫作用が働いた、というのなら。「それってつまり、結局の所俺のせいってことじゃ」「そうじゃなくて」すぐさま否定が入った。「悪いのはあの男であって僕らのどちらでもない。昨夜に関しては、お互い薬に流されたからだと
2013-10-13 16:48:46いうことにしてしまえば、なかったこと、にはならないかもしれませんが、ノーカウント、忘れた事には出来るでしょう。僕も、薬に負けてあなたを好きにしてしまった。だからあなただけが罪悪感を感じる必要はない。忘れろと言うなら忘れます。そう言いたかったんです」「バニー」困ったように笑って。
2013-10-13 16:50:51「あなたを歪ませようとするものから、僕は、あなたを守りたいと思った。それなのに、僕があなたを苦しませたり傷つけたりしては意味がない。忘れたいならそれで──」何もかももう決まってしまったように。虎徹の答えが分かったように言うから。「お前が、忘れたいの?」「え?」
2013-10-13 16:52:51「俺みたいなおっさんに迫られて、そういうその、あれになって、お前だって忘れたいよな。うん、ごめん。悪い。忘れてくれ。もうこれで、二度とこんなことねえだろうし、お前を煩わせずに済むと思うから、だから」「虎徹さん」「ほんと悪かった。すぐうちに帰るから、もうちょっとだけ」「虎徹さん!」
2013-10-13 16:55:21@810tora 言葉を遮るように、背後からぎゅうっと抱きしめられて、でも飲み物を零さないようにちゃんと避けてるところが流石バニーだな、なんて思ったのは逃避なのか。「ねえ、僕、期待しちゃいますよ」「何が」「あなたも僕をこういうこと込みで好いてくれてるって。嫌じゃないって」
2013-10-13 16:58:41「なんで」そんなこと一言も言ってない。こんな時までおじさんをからかうなと笑おうとして、上手く笑えない虎徹の頬をバーナビーの指がなぞった。「気付いてないの? あなた、泣いてる」泣かないで。あなたを傷つけるものは、あなた自身だってだめ。許さない。ねえ言って。
2013-10-13 17:02:59僕はきっとあなたが本当に望む言葉を返せるから。 耳元でこれまでも散々虎徹を甘やかしてきた声が、更に甘やかすようなことを囁く。何度も何度も頬を指がなぞって、いつしかぼやけていた視界が瞬きでクリアになる。「おれは」「うん」「おまえに」「うん」「しあわせになって、ほしいよ」
2013-10-13 17:05:20「しあわせに」「…うん」「してくれないんですか?」「おれが?」「あなたを幸せに出来るのは僕しかいないって、うぬぼれてるんですけど。あなたは僕を幸せにしてくれないの?」あなたにしかできないのに。なんていうのは、おじさんに囁く台詞じゃない。
2013-10-13 17:09:18そう思うのに虎徹の口はむぐむぐと言葉を出すのを嫌がっている。背後の体温は気付けば馴染みすぎていて、一人寝の寒さを思い出すだけで心が冷える。相応しくない。そんなの虎徹が一番分かっていることなのに、バーナビーは虎徹がいいと言う。こんなにも情けない所ばかり、汚い所ばかり見せたのに。
2013-10-13 17:11:51「虎徹さん」「…んだよ」「前言撤回します」「ん?」ずず、と鼻を啜って、頑なに後ろを振り返らないでいる虎徹に、バーナビーが吐息で笑った。「やっぱり忘れません。昨夜の事。なかったことにもしません」「なんで、だよ」「だから、あなたも忘れないで考えて。僕を幸せにできるのが誰なのかって事」
2013-10-13 17:14:44そんなのは、だから俺以外の。口にできない言葉を分かっているみたいにバーナビーが濡れた頬に唇を寄せた。「あなたの覚悟がつくまで、僕、アプローチしますから。隠さずに堂々と」「はあっ!?」「だって、そうしたら二度と不埒なことを考える輩も寄ってこないでしょう?」いい案だと思うんですよ。
2013-10-13 17:17:57ぬけぬけと言い放つ青年は、成長の仕方を間違えたのではないだろうかと思う。思うけれど、嬉しい。なんてみっともなく、愚かな人間なのか。「お前、そんな馬鹿なやつだったっけ」「恋は盲目? 僕にとってはそのおかげで目が開けた気分ですよ。あなたがくれた沢山のものに、僕も返せるだけの人間に
2013-10-13 17:21:48なりたい。虎徹馬鹿になるの、本望ですよ」「…ばかやろうだ」お前も、俺も。「お似合いでしょう?」清々しく笑うから、虎徹はとうとう諦めて背後の体温に凭れかかった。びくともしない体が憎たらしい。「とりあえず」「はい」「服、着たい」「喜んでお手伝いしますよ、虎徹さん」
2013-10-13 17:27:04「…それで、どうなったの?」「どうなったっていうのはどういうことでしょう」「そのまんまの意味だけど」「え、何の話ですか?」翌日、ヒーロー事業部、部長室にて。二人揃ってロイズにかいつまんだ説明を終えたところで、一人だけ会話についていけない虎徹が首を傾げた。
2013-10-14 18:49:31