会計を済まし、また車に戻った。 彼女の話が永遠に続く。 学校の事、友達の事、家族の事。運転して彼女の顔は見ていないが 楽しく高揚している顔を容易に想像できたし、感じることが出来た。 今思うと、彼女自身のことは余り話していなかったことに僕は気づいていなかった。 彼女は3人姉妹。
2013-08-24 22:57:52朝、家で生存確認出来たのが、母親、姉、父親らしき男性・・・。 妹もいたのか。まぁ話によると一回り下の妹で学校に行った後だったらしい。 その妹が、未来僕の3回目の結婚、離婚する相手になることは、 この時流石に知る由もない。 道中、彼女の話は絶えず、目的地にはほどなく着いた。
2013-08-24 23:02:46去年開館した海遊館に二人は入っていった。 すごい人ゴミで、酔いそうになる。 彼女は人ゴミを掻き分け、お目当てを目指してるみたいだった。 ジンベイ君 当時、まだジンベイザメはこの名前が決まってなく、一般に公募していたのを 覚えています。 彼女は、既にジンベイ君の前を分捕りました。
2013-08-24 23:35:58僕にとっても初めての海遊館で、 目の前には映像でしか見たことのない生物が、 思いもよらぬ迫力の大きさで我が物顔で回游している。 大人気もなく、 「なんじゃこりゃぁ~でっかぁ~やばいな~・・・」 などと大はしゃぎしていた。 世界でも有数の大ガラスのパノラマ水族館は圧巻そのものだった
2013-08-25 09:33:46などと小学生並みの僕の横で智さんは声も出さずに じっとジンベイ君を眺めていました。 ここに到着するまでの、あの勢いはもはや無く、 凛とした表情でジンベイ君を見ているのか、 もっと奥の何かを見ているのか、 視線は動かず・・・・あれっ? ・・・・・・・涙・・・・。 彼女は泣いていた。
2013-08-25 09:38:52急に小学生を止める訳にもいかない僕は、 彼女の涙に気づかないふりをして 「めっちゃごっついやん。初めて見て感動したわ。 智さんも初めて見たの?」と軽くジャブ。 智さん「前の彼と最後のデートでここに来た・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・。」 自爆。 会話は途切れた。
2013-08-25 09:45:15重い空気の中、家族連れと恋人達の 会話がBGMで流れて映像には超巨大生物。 生まれて初めてのシュチエーション。 「こいつさぁ、何か小さいサメ一杯引き連れてんな(ボソ)」 智さん「ジンベイ君が私で、コバンザメが君ね(笑)」 「なっ・・いいよ。コバンザメって言うんだあいつら(笑)」
2013-08-25 09:58:49「他も見に行こうぜ。」 智さん「ここでいい。コバンザメはジンベイ君から離れちゃダメなんだよ」 「わかった。」 少し機嫌、というか吹っ切れた感じの彼女が笑ってこっちを見た。 智さん「嘘、気を使わせてごめんね(笑)・・・智でいいよ。私はなんて呼べばいい?」 「ヤー君て呼ばれてるけど
2013-08-25 10:04:07智さん「彼女、麻里子ちゃんだっけ?そう呼んでるの?」 「そうだよ。」 智さん「じゃあ私は、やしゅゆき・・・あれ?やしゅ・・やしゅしゅき・・・やしゅゆき・・・・」 「なんだそれ?やすゆきですけど(笑)」 智さん「やしゅゆきって呼ぶわ」 「言えてませんよ(大笑)」 智さん「やしゅ・・
2013-08-25 10:08:07彼女は舌っ足らずで「すゆ」がしゅゆになる女の子でした。 「じゃあ俺、智って呼ぶよ(笑)」 智「やしゅ・・・やしゅ・・・ゆ・・・き・・・やしゅ・・・・・。」 ヤー君でいいのに(笑)。僕はそう思いながら黙って彼女の反復練習を眺めていました。 海遊館にはその後一度も行く事はなかった
2013-08-25 10:14:25帰り道に僕はあのことを聞こうと思いましたが止めました。 僕が京都で倒れたクリスマス・イブの夜、智は独りで四条大橋にいたかです。 でも、帰り道の彼女は向かっている時と同じように、高揚し話続けていたので 僕にはそんな事どうでもいいやって思い、彼女の話を聞いていました。 智「また遊ぼう
2013-08-25 10:19:53家の近くになると智が急にそう言いました。 「そうだね、また遊ぼうね。今度は海でも行こう。」 智「白浜行きたい。」 白浜とは和歌山県にある海水浴場で関西では有名なデートスポットです。 「いいねぇ。麻里子も連れてってやんないと」 智「3人で行こうぜ」 「また連絡するね」
2013-08-25 10:23:39彼女を家まで送り、ご両親に挨拶をと車を止めると、 小学生の女の子が走り寄ってきて 女の子「お帰りぃ~。彼氏?彼氏?」 智「この子が妹の美咲。彼氏じゃないよ。」 美咲ちゃん「こんばんわ(笑)」 「こんばんわ。彼氏じゃなくてごめんね(笑)」 美咲ちゃん「今日はお寿司だよ。」
2013-08-25 10:28:33智の家の玄関で 母親「お腹すいてる?もしよかったら一緒に食べてかない?」 「いやお構いなく。」 母親「お父さんもそうしろって言ってるんだけど」 智「食べて行きなよ。やしゅゆき~♥」 美咲ちゃん(ジロジロ) 「キャラ変わってね?」 「じゃあ少しお言葉に甘えて」 美咲ちゃん「わぁい」
2013-08-25 10:33:42僕たちが外で外食してこないのを見越してか お寿司がテーブル一杯に並んでいました。 父親は広島カープの応援にビール片手に熱い視線をTVに向けながら 「お帰り。野球はどこのファンだい?」 僕は、阪神ファンでしたが流石に空気を読んで近鉄ファンだと伝えました。 「近鉄か、いいチームだな。
2013-08-25 10:39:36父親「昔は赤ヘル軍団といってだな・・(大略)」 「はい(大略)」 話は長くなって野球中継が終わるまで父親の解説を聞いていました。 横を見ると智までがビール片手に広島を真剣に応援している有様で少し笑いました。 お酒を進められて、運転が有るのでと断りその日は帰途に着きました。
2013-08-25 10:44:01京都の自分のマンションに戻った僕は、 長い入院生活から今までの生活に戻りました。 変わった事といえば、麻里子が店で働いていたことです。 オーナーに取り付けたのは僕なので、さほど驚きもしませんでしたが どちらかというと、彼女がかなりの客受けがよかったってことに驚きを感じました。天性
2013-08-25 10:49:14麻里子はお嬢様で天然な世間知らずだった事がお客の心を掴み 連日麻里子の指名は絶えなかった事を覚えています。 客「マスターあの新人の麻里子ちゃんは可愛いね。綺麗だし。おっちょこちょいだけど 妙に振る舞いがお淑やかというか絵になってるね、あの子はいいよ。」 スケベ親父が絡んできます。
2013-08-25 10:53:51現に今でも麻里子は京都の祇園で働いていて、 立場は代わり親の財力を活かしてクラブ経営を営んでいます。 私は年に数回ですが今でもその店には顔を出しているわけで、 麻里子と同窓会のような時間をお酒を飲みながら過ごしています。 京都では結構有名店になっていることも彼女の天性からでしょう
2013-08-25 10:58:32それから、また平凡な日常がはじまりました。昼大学、夜祇園、明方市場。 僕がなぜ2件も掛け持ちで働いているかというと、一つは父親に対する反発。学費生活費を自分で稼ぐということ。2つ目は、将来飲食店を開く為の資金と知識収集のためでした。
2013-08-31 14:49:17市場を2年で辞めた後、千本丸太町のイタリアレストランにバイトに行くようになりました。大学が終わってから6時30分まで。雑用と仕込み補助って仕事でしたが、その店が僕の人生を大きく変えました。 その店のオーナーはとても厳しく、平気で平手が飛んできました。
2013-08-31 14:52:39僕には目標があったので、厳しくされたことを苦だとは思ったことがなく。むしろ真剣に教えてくれる?(今となれば、お客から代償を頂くのでプロとしては当たり前なのだが)はとてもありがたかった。そのお店のおかげで僕は24歳で調理師免許が取れた。 そんな感じで何時ものように時間は過ぎていった
2013-08-31 14:57:159月の中頃、麻里子が突然 「一緒に住もうか?」 と、切り出してきた。 僕は、断る理由もなく了承した。 同時に部屋の面積も考えて引っ越しすることにした。 引っ越し先は伏見区観月橋のマンションだった。 2LDKで新築の8階建て最上階1ROOMって物件。 当時の家賃で12万だった。
2013-08-31 15:03:3010月には部屋の契約を済まし、引っ越しの準備。 といっても、一人暮らしの僕の引っ越しなんてさほど荷物もなく、 家具等は買い変えればいいやって洋服と学生である証ぐらいの物しかもっていかなかった。 さて、麻里子のほうは、、、、、、 「なんだこの荷物??」2tトラック2台?? ・・・
2013-08-31 15:09:40「どこの新婚さんだろう?」 って思うぐらいの量。 いつもは、上品でお淑やかな麻里子が仁王立ちで 業者に指示をいれている。 「いくら、部屋が大きくなったからってこんなに入るもんか・・・」 と僕は思い、手伝いもそこそこにイタリアンのバイトに行った。 祇園の店で麻里子に結果を聞くと。
2013-08-31 15:14:59