コボルドっていつから犬型ヒューマノイドになったの?【別解説】
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mino_ishioka
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コボルドっていつから犬型ヒューマノイドになったの?【未解決】 http://t.co/AV0yF4iNkf 確認できる範囲で少し補足してみたい。ちなみにコボルド=犬がD&Dの影響であろう事には自分の知識の範囲では反証がなく、結論自体に異議はない。
2013-09-08 18:35:43
まずCD&Dにイラストがないというのは日本語版に関しては正しいけど英語版だと正確ではない。詳しく言うと、日本語版の底本になったMentzer版にはイラストはないけれど、その前のMoldvay版(ただし赤本のみ確認。青本は未所持につき確認できず)にはイラストが存在する。
2013-09-08 18:35:56
このイラストでのコボルドは耳の位置が犬と一緒で角は縦に一列に並び、体には鱗があるものでAD&D2版のイラストに近い。説明文は細部に違いはあるがほぼ同一で、dog-like menという記述はある。
2013-09-08 18:36:06
犬顔(dog-like heads)という表現が出てくるのは知る限りではAD&D2ndのTheCompleteBookOfHumnoidsが最初。コアとなる2ndのMonstrousCompendium時点では犬関連の記述は「ずぶ濡れの犬(略)のような臭い」
2013-09-08 18:36:16
「その言語(小さな犬がわめいているかのように聞こえる)」という記述しかない。後に冊子にまとめられたMonstrousManualでも同様である。
2013-09-08 18:36:34
その前のAD&D1stのMonsterManualには皮膚の色、頭髪、角、服についての記述はあるが、犬に関連づけた外見記述はない。ただしイラストは2点存在し、耳の位置や角の形含めて2ndのCompendium(まとめのイラストだと左から2番目)に近い形態である。
2013-09-08 18:36:38
以上からD&Dにおいては「犬のような」が先であり、「犬顔」の方が派生表現であろうと思われる。(ところでまとめサイトのイラスト、一番左のコボルドの出典はどこであろうか。もしかしたら自分の持ってないやつかもしれないのでどなたかご教示いただけると有り難い)
2013-09-08 18:36:48
関連してコボルドを犬型にしたのはD&Dの初版というTweetがあったが、これも日本語版はともかく英語版含めると正確ではないと思われる。所謂白箱におけるコボルトに、犬へ関連づけた外見の記述やイラストは存在しない(はず)。確認できる限りMoldvay版が最初である。
2013-09-08 18:37:03
他の(古めの)TRPGについては確認できる現物が限られているので参考程度になるが一応。まずルーンクエスト(3版)やPowers&Perils、ウォーハンマー(旧版)、ファイティングファンタジー等には確認できる範囲ではコボルドは登場していない。
2013-09-08 18:37:19
RQなんかはあの世界観なので出てきてもおかしくはないと思うが(笑)グローランサについてはあまり詳しくないので識者のご指摘を待ちたい。他のTRPGに関しても。
2013-09-08 18:38:03
登場する方について。SPIのDragonQuestでの記述は「elderly-appearing Dwarvish type」「have highly gnarled faces」というもので、犬を思わせる部分はない。
2013-09-08 18:38:12
T&Tに至ってはアースエレメンタルの代表なっており、ヒューマノイドですらない。ただし日本語版のイラストは犬風に描かれている。英語版は未見。
2013-09-08 18:38:29
Rolemasterのコボルドはゴブリンの下位種族的扱いで「皮膚が赤らんでいて頭部に一対の角を持つ」となっており、やはり(上位種族のゴブリンホブゴブリンを含めて)犬を思わせる記述はない。
2013-09-08 18:38:38
なおネットで調べる限りにおいてはApple、Macintosh、IBM-PC版のWizardlyに登場するKoboldは犬には見えない。マニュアル等になにか補足があるのかもしれないが。(むしろカエルかトカゲに似てるな) http://t.co/piNlrIZyqD
2013-09-08 18:38:49
日本においてはPC-9801版が最初に発売されたはずだと思うが(あんな高い機械買えるかと悔しい思いをしたのでよく憶えている)、このイラストも海外版に準拠している。これがFC版になると突然犬になっているので、末弥さんの描き起こしの時点で変化したのだろうと推測。
2013-09-08 18:39:06
この後発売された攻略本やマニュアル類、特にアスキーだったと思うがあのあたりは末弥さんがイラストを提供していたので、ゲームに準じていたのだろうと推測できる。(処分してしまったので手元になく、確認はできない)
2013-09-08 18:39:14
まとめサイトで犯行を指摘されているRPG幻想事典は「犬のような顔をしており」とあり、イラストも犬っぽくはあるが、D&Dとは違い鱗はない。イラストレイターはNikovさんでT&Tのイラストと同じ人。この本はBEEP誌の連載に加筆したものであり、初出はもっと遡る可能性がある。
2013-09-08 18:39:23
このあたりはもっと詳しい人、資料を所持している人がいるはずなので、どこかから正確な情報が出てくるといいのだけど。ちなみに幻想事典の巻末参考資料にはAD&D(当時は1st)のマニュアル類も挙げられている。
2013-09-08 18:39:34
で、ここで年代の話。上記で一番古いのはAD&D1stのモンスターマニュアルで、1978年(ただし所持しているのは79年版なので、確定できるのはここまで)。CD&Dの赤本は81年。(青本は78年だが内容が確認できないため保留)。T&T英語版は75年だが、イラストがあったかは不明。
2013-09-08 18:39:52
日本語ではCD&Dが85年(5月くらいだったかな)、RPG幻想事典が86年末、T&TとFC版Wizが87年末。ただしD&D及びAD&Dは翻訳以前から一定数のプレイヤーがいたので、まったく知られていなかったわけではない。AD&D2ndは89年。日本語版は91年でだいぶ遅くなる。
2013-09-08 18:40:01
ということでコボルド=犬の日本への紹介は、上記の範囲であれば文字情報はD&D、ビジュアルならRPG幻想事典、ということになるのではないだろうか。むろんそれ以前の英語版D&D及びAD&Dの影響は無視できないが。
2013-09-08 18:40:39
以上踏まえて以下は推論。コボルドがヒューマノイド種族で犬に似ている、というのはがD&Dの影響であろうことは(おそらく)正しいが、D&Dフォロワーの古いTRPGでは必ずしもそれを踏襲しておらず、英語圏においてはD&D特有に近い設定ではなかったかと思われる。
2013-09-08 18:40:47
これが日本に紹介、受容される過程において、当時(特に紹介者たちにとっては)巨大な存在であったD&Dの記述が拡散、再生産されていき、他の同時期のTRPGその他のイメージを駆逐してしまった、というあたりになるのかなあ、と思っている。
2013-09-08 18:40:56